新型コロナ対策  フェイスシールド・マウスシールドってどうなの?

(写真:アフロ)

人と人との距離を少なくとも1メートル空けることが難しい場合にマスクを着用するユニバーサル・マスキング。その目的は、感染性のある無症状の感染者の鼻や口から、ウイルスを含む飛沫が飛び出し、近くにいる人の目や鼻、口に入るのを防ぐことにあります。この効果をここでは「飛沫拡散防止効果」と呼ぶこととします。

以前からユニバーサル・マスキングは(特に免疫不全の方に対し)インフルエンザなどのウイルスによる呼吸器感染症の予防に有効だと言われていましたが、最近は、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の予防にも有効であることを示すデータが増えています

ところで、マスクの代わりにフェイスシールドやマウスシールドを使用する場面をテレビや町中でよく見かけます。今回は、フェイスシールドとマウスシールドの飛沫拡散防止効果について2020年10月12日現在分かっていることをご紹介します。そして、飛沫拡散防止が期待できるマスクの素材についても最後に触れたいと思います。

フェイスシールド

マスクに比べると、フェイスシールドの飛沫拡散防止効果は低そうだということが、いくつかの実験から分かってきました。

例えば、こちらの実験では、咳をしたときと同程度の量の飛沫を人為的に生じさせ、飛沫が空洞のマネキンの口から出てくる様子を、水平方向と垂直方向のレーザーシートを用いて可視化しています。飛沫の大部分はフェイスシールドに当たりますが、やがてシールドの下方と側面から飛沫が漏れることが分かります。漏れた飛沫はシールドの外で拡散するため、濃度は下がります。

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(a)咳の前, (b)咳から0.57秒後, (c)同3.83秒後, (d)同16.57秒後

Published in: Siddhartha Verma; Manhar Dhanak; John Frankenfield; Physics of Fluids 32, 091701 (2020)

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もう一つは査読前の論文ですが、米国の労働安全衛生研究所(NIOSH)が実施した実験結果が報告されています。

この実験では、咳をしたときと同等量の飛沫を人為的に産生させ、粒径の違いによって捕集される飛沫の割合を異なる種類の防護具ごとに計算しています。その結果、医療用マスク、3層の布製マスク、2層ネックゲイターに比べ、フェイスシールドの捕集効率が極めて低いことが分かりました。

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National Institute for Occupational Safety and Health (NIOSH)

これらの実験結果を読むときに注意すべき点があります。いずれの実験でも人形を使い、一定量の液体を、一定の圧をかけて、一定の速度で飛ばして、咳をしたときに飛沫が拡散する状態を人為的に作り出して評価しています。評価の回数も限られています。実際に人が咳、呼吸、会話をしたときに生じる飛沫については検証をしていません。人の体格や声の大きさといった個人差も勘案していません。そのため、現実のあらゆる場面において実験結果と同じような状況が生じるとは限りません。しかし、同様の手法で評価されたマスクの結果と比べると、フェイスシールドの飛沫拡散防止効果は弱いと言ってよいと思います。

もちろん、マスクを着けることができない方(手話通訳の方やその他の事情がある方)が、次善の策としてフェイスシールドを着けるのは仕方のないことです。ただ、マスクと同等の効果は期待できないものと考えて、人との距離を空けるなどの配慮をできる範囲で行うことは必要かと思います。人と人との距離を空けられるなら、そもそもマスクもフェイスシールドも不要です。

マウスシールド

口元だけを覆う透明のプラスチックもマスクの代わりに活用されているようです。このような製品(ここではマウスシールドと呼びます)の飛沫拡散防止効果はどうでしょうか。

マウスシールドを評価した実験は調べる限り見当たりません。しかし、上記のフェイスシールドに関する実験結果を見る限り、心もとないと考えたほうがよいでしょう。マスクの効果をみた実験では、顔とマスクの間の隙間が少ない製品のほうが飛沫の拡散を防ぐ効果が高い言われています。これらのことを考えると、顔に密着しておらず、口元しか覆わないマウスシールドは、マスクの代わりにはならないと考えてよさそうです。

どのようなマスクがよいのか

マスクの飛沫拡散防止効果は、マスクの材質と顔との密着度に左右されます。世界保健機関(WHO)米国疾病対策センター(CDC)は、日常生活においては布製マスクを使用することを推奨しています。ただし、WHOは流行期において、60歳以上および基礎疾患のある方が人との距離を空けられない場合は医療用マスクを着けることを推奨しています。

医療用マスクとは

医療用マスクはサージカルマスクと呼ばれることもあります。通常は3層の不織布でできています。米国とヨーロッパには医療用マスクの国家規格がありますが、日本にはありません。日本で製造・販売されている製品のなかには、海外の規格に適合したものもあります。通常、米国の規格でレベル1以上、欧州の規格でタイプ2以上を医療用マスクと呼びます。海外の国家規格について興味のある方はこちらに詳しく解説されていますので参考になさってください。

ただ、これらの規格で評価されるのはマスクのフィルター性能であって、実際に顔に装着したときの性能ではありません。期待される効果を得るには、可能な限り顔にフィットしやすいマスクを選び、正しく装着することが大切です。

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筆者作成

布製マスク

WHOは次の3層からできたマスクを推奨しています。

  • 1 内側(顔に触れる側)に吸水性のある綿や綿混紡
  • 2 外側に鼻や口から放出される飛沫でマスク外表面が汚染されるのを防ぐために、撥水性のあるポリプロピレンやポリエステルなどの化学繊維
  • 1と2との間に撥水性のあるポリプロピレンや綿の不織布

CDCは(素材に関わらず)少なくとも2枚の布を重ねることを推奨しています。

口や鼻から飛び出る飛沫の速度が1枚目を通過するときに抑えられ、2枚目でトラップされやすくなるためです。できれば、綿と化繊のように、異なる素材を組み合わせた方が静電気や機械的な作用でフィルター性能が向上すると言われています。綿を用いる場合は、密度の高い素材の方が捕集効率は上がります。

ネックゲイター

さまざまな素材から作られている布製マスクを使った実験において、ネックゲイター(ポリエステル/ポリウレタン弾性繊維でできた1層の布製品)は、通過する飛沫が微細な粒子となって拡散する可能性が指摘されたことから、WHOは再検証されるまで、ネックゲイターは慎重に用いるよう注意を促しています。

しかし上で紹介したNIOSHの実験では、2層のネックゲイターは医療用マスクや3層の布製マスクと同等の効果を示していますので、ネックゲイターを使用する場合は2枚重ねるとよさそうではあります。ただ、対面での会話が生じない屋外のランニングやサイクリングにおいて、感染対策として口や鼻を覆う必要性は薄いと考えます。

N95マスクとは何か

N95マスクは粒径が0.3マイクロメートルの微粒子を95%以上捕集する効果のあるマスクで、医療現場において結核菌や麻疹ウイルスなどによる空気感染が懸念されるときに用いられます。新型コロナの診療の際には、気管挿管など、微粒子が大量に生じる懸念がある場合に限り使用されます。N95マスクを正しく着用すると息苦しさを感じますので、医療現場でも長時間の着用は通常は行いません。N95マスクの代わりに、同等の性能を持つ電動ファン付呼吸用保護具(powered air-purifying respirator, PAPR)を用いることもあります。いずれも日常生活における使用は現在推奨されていません。

繰り返しになりますが、マスクが必要となるのは、人との距離(目安としては1メートル以上、理想的には2メートル以上)を空けることが難しい場合です。十分な距離が取れている場面では、マスクはもちろんのこと、フェイスシールドやマウスシールドを着ける必要はありません。また、フェイスシールドやマウスシールドの飛沫拡散防止効果は低いと考えられることから、人との距離が近い場合は(マスクを着けられない事情がある場合は別として)マスクを着けたほうがよいでしょう。なお、2歳未満の小児に関するマスクの着用は推奨されていません。詳しくはこちらをご覧ください。

食事中に一時的にハンカチや扇子で口元を覆って会話する方法については検証されていませんが、顔に近づけて、なるべく広い範囲を覆うことで、サイズの比較的大きな飛沫が対面にいる相手の顔に飛んでいくのを防ぐ効果はあると考えられます。少なくとも覆われる範囲が狭く、顔との隙間も大きいマウスシールドよりは効果はありそうです。

会話が主体となるような場面(会議等)において、人との距離が近い場合はマスクを着用することが勧められます。そして、マスクを着けていたとしても、換気の悪い部屋で複数人が集まり、長時間にわたる発声がある場合は、定期的に換気を行うことが勧められます。換気については、こちらこちらこちらが参考になります。

この記事は2020年10月12日現在の知見をもとに執筆しています。新型コロナに関する推奨事項は今後新たに得られる知見等によって変わることがあります。