テレビ局が急に第七世代を求め始めたのは?

「第七世代」という言葉がテレビを語る上ですっかり定着した。現在20代〜30代前半の人気芸人を指す言葉で、霜降り明星やEXIT、ハナコ、3時のヒロインなどを括ってこう呼ばれる。霜降り明星のせいやが自分たちを示す言葉として言い出したと言われるが、本人もここまで浸透するとは思わなかったのではないか。

ここ数年で彼らのテレビ出演がかなり増えたように思う。大袈裟に言えば、朝から晩までどこかのチャンネルに誰かが出ている印象だ。

一方、最近のテレビを語る上でのもうひとつのキーワードが「コア視聴率」だ。テレビの指標が世帯視聴率から個人視聴率に変わり、もともと多くのスポンサー企業が求めていた若い世代の視聴をテレビ局が気にするようになった。そこで各局がそれぞれの重点目標として年齢の照準を絞るようになったのだ。局によって対象とする年齢も呼び方も少しずつ違うのだが、上限を「49才以下」に設定する例が多い。

指標が世帯から個人に変わったのは在京キー局では2018年からで、第七世代の出演が増えたのはここに一因があるのかもしれない。これまでより若い世代の視聴を獲得するには、若いタレントが必要だと多くの局が考えたせいと推察できる。

第七世代の出演増、3つの類型

では実際にどれくらい第七世代の出演は増えたのか。テレビ放送をすべてテキスト化し様々なデータを提供するエム・データ社に調べてもらった。2019年から今年までの3年の6月初めの1週間のゴールデンタイムから深夜帯(19時〜27時)の民放キー局の番組に第七世代の芸人が何回出たかをカウントした結果が冒頭の表だ。第七世代の定義はザテレビジョンの「第七世代一覧」に載っているタレントとした。

2019年は34回だったのが2020年には72回に倍増、2021年には71回と1回だけ減っていた。第七世代の出演急増はこの3年間に渡って起きたと見てよさそうだ。

ちなみにNHKは3年間それぞれで4回→5回→5回とほとんど増えていない。

個別の芸人の出演回数を見ると3つほどの累計に分かれていた。まず一つ目は、先行型。

グラフ:エム・データの提供データをもとに筆者作成
グラフ:エム・データの提供データをもとに筆者作成

2019年の時点で出演回数があるレベルに達しており、19年と21年でさほど差がない芸人たちだ。霜降り明星を筆頭に、2年前には人気者入りを果たしていた。例外的にEXITが2020年に出演回数を増やして2021年には元の水準に戻っている。この時期はコロナ禍で特番が増えて急きょの起用が多かったと推察している。

次に急増型。

2019年にはせいぜい1回だったのが2020年に急激に出演回数を増やした芸人たちだ。典型がぺこぱで、3年間でぐんぐん回数が増えた。またEXIT同様、3時のヒロインは2020年に急増し、2021年に落ち着いているが、2019年はゼロだったところからの急増だったのは驚きだ。いまや当たり前のように様々な番組で見るが、実は去年火がついたのだ。2021年に下がったのは、EXIT同様、2020年の特番効果が作用したからだと推察している。

3つ目が2021型。

まったく同じ回数だったのでグラフが重なって1つに見えるが、実際には2組だ。この2組もとっくに人気者だったようで実際には2021年に急激に出演が増えている。めきめき実力がつき人気も高まっている結果だろう。

このように細かく見ていくとやはりこの3年間で第七世代の出演が急激に増えたと言ってよさそうだ。とくに2020年に急増したのだが、EXITや3時のヒロインが2020年の数字を特例的に押し上げたことを踏まえると、3年間で段階的に増えたと見ていいと思う。

第七世代の起用と若者のテレビ視聴の関係は?

さて第七世代を起用するテレビ局の思惑が若者世代の視聴を獲得することだとして、ここで見てきたような出演回数の急増がどんな変化をもたらしたかを見る必要がある。

そこで今度はインテージ社のデータを見ることにした。同社は全国約12,000人のテレビ視聴データを収集している。そこから先述のエム・データ社のデータと同じ期間の若者世代(男女・20-34才、いわゆるF1M1)の番組接触率を出してもらった。ビデオリサーチが出す視聴率とは調査対象が別なので「接触率」と呼び分けている。(そのため視聴率と数値は一致しない点に注意)

その結果がこれだ。

第七世代の出演回数が34回→72回→71回と変化したのに対し、微妙な結果となった。2019年から2020年に出演回数が倍増したことと0.7%弱接触率が上がったのは関係あるのだろうか?2021年に出演回数が1回下がったことで接触率も0.5%以上下がったのだろうか?

まず2020年に接触率が微増したのは、この時期にコロナ禍で初の緊急事態宣言が出て巣ごもり生活となり、テレビ視聴時間が全体的に増えたことが大きいと筆者は考えている。5月25日までに解除されたものの、ステイホーム生活を続ける人も多く「余波」が続いていたと言える。

2019年と2021年で見ると0.1%強上がったと言えば上がったが、微差すぎて変化があったとは言い難い。普通に見ればこれは、この3年間で若者世代のテレビ接触率はほとんど変化がなかったと捉えるのが自然だろう。

もっと詳細にデータが見られるように、インテージ社はグラフも提供してくれた。

インテージi-SSPによる民放キー局の2019年〜2021年6月第一週のF1M1接触率グラフ
インテージi-SSPによる民放キー局の2019年〜2021年6月第一週のF1M1接触率グラフ

1週間各曜日の若者のテレビ接触率を各年ごとに色分けした折れ線グラフだ。上のグラフは民放5局すべてを一緒にしたものだが、局別で見ることも可能だ。

そこでグレーの2021年の線が前年と比べて特に上がっている番組をピックアップしてみた。

  • 6月1日(火)18:25〜20:54テレビ東京「ありえへん∞世界」
  • 6月3日(木)19:00〜21:30TBS「サッカー日本代表×U-24」
  • 6月4日(金)19:00〜21:00フジテレビ「ウワサのお客様」
  • 6月4日(金)22:00-22:54TBSドラマ「リコカツ」
  • 6月5日(土)19:00〜21:24フジテレビ「U-24日本×ガーナ」

あくまで変化が目に見えてあった番組を挙げている点に注意されたい。そしてここで見たいのは第七世代中心の番組かどうかで、いずれもそうではないことがわかる。

細かく見れば見るほど、第七世代の出演急増は若者たちのテレビ接触に大きな変化を及ぼしてはいないようだ。あくまで若者世代であって、より上の世代への影響はここでは対象にしていないので注意してほしい。

では第七世代は若者に人気がないのか?まったくそうではない。彼らの名をYouTubeで検索すると無数の動画が出てくるし、莫大な再生数のものも多い。そして自らチャンネルを運営する第七世代の芸人も大勢いる。なぜならば、彼らのファンである若者にとっては「お笑いはYouTubeで見る」のが当たり前なのだ。「テレビでお笑い番組を見る」行為は若者の文化ではもはや薄い。テレビが長年、若者に向き合ってこなかったからだ。

第七世代で若者のテレビ離れを食い止めようという考え方は、若者のメディア接触の実態とズレがあったと言っていい。テレビ局側もそれに気づいたのか、この秋の改編では「第6世代」がフィーチャーされると報じられた。コア層のテレビ視聴には実は40代の芸人が有効とのデータが出たのかもしれない。だがおそらくそれは、コア層の中で40代の人数が多く、テレビもよく見ているせいではないか。

だとしたら、それでいいのだろうか?解決の先送りになっている気がする。長い目で見ると第七世代の定着がテレビにとって重要ではないかと筆者は捉えている。いずれにせよ、若い才能がテレビで活躍するのはいいことだ。目先の視聴率に躍らされずに、若いタレントと腰を据えて新しい番組づくりをすべき時ではないか。メディアの鮮度は結局、「人」が左右するのだから。