CM新規急上昇ランキングに見える新しい産業構造の萌芽

データ提供:エム・データ社

急上昇10位中9つの会社が「ITサービス」

テレビを見ていてふと、見慣れない会社のCMが増えたなと感じた。今年はコロナで大手企業のCM出稿が減ったと聞く。その分、テレビCMに新たに参入する企業が増えたのではないだろうか。だとしたら、どんな会社だろう。

テレビ放送の内容をテキストデータ化するエム・データ社は、そこから様々な動向の分析も行っている。そこで、今年新たにCM出稿を始めたのがどんな会社かを調べてもらった。

調査対象は、関東地区の地上波キー局(日本テレビ、テレビ朝日、TBS、テレビ東京、フジテレビ)で今年1月から11月までに放送されたCMの中で、去年の同期間に放送がなかった会社の放送回数。それをランキングしてもらった。(去年CM放送がなかった会社なので、もっと前には放送していた可能性がある点は留意されたい)

調べてみると、上位に入った会社には一定の傾向があった。「ITサービス」と定義していいと思う。個人向けもしくは企業向けサービスで、PCやスマホがベースとなる事業をやっている会社だ。10位までのうち上の表でオレンジ色にした9つの会社が該当した。ちなみに表内の黒字は個人向けサービス、白字は企業向けサービス、赤字はゲーム。

1位の出前館は放送回数3,000回弱でダントツだ。ダウンタウンの浜ちゃんがスーダラ節を歌うCMは誰しも目にしただろう。

4位のTIS、10位のサイボウズは企業向けサービスだ。

TISは決済システムを提供する会社のようだ。サイボウズは企業内の情報共有システムの会社として知られるが「がんばるな、ニッポン」のテレビCMが話題になった。テレワークの潮流にうまく乗った形だ。これまでもWEB動画がネットで議論になったこともあるが、ある意味メジャーデビューと言えそうだ。(去年よりさらに前にテレビCMを流した可能性はある)

赤字で表記した2位のLilith Games、3位のCTW、5位のYostar、7位のアクティビジョンはいずれもスマホゲームの会社だ。ゲームがテレビCMを賑わせるのはここ数年の傾向で目新しくはないように思える。だがアクティビジョン以外は中国製ゲームだ。スマホゲーム市場に中国製のものが続々進出してきたのは今年の新傾向と言えそうだ。

10位以下でも目立つITサービス企業

データ提供:エム・データ社 オレンジ=ITサービス 黒字=個人向け 白字=企業向け 赤字=ゲーム
データ提供:エム・データ社 オレンジ=ITサービス 黒字=個人向け 白字=企業向け 赤字=ゲーム

11-20位も見てもらおう。12位のYOOZOOも中国製スマホゲームの会社だ。15位のユーグレナはミドリムシを活用したバイオベンチャーでカズレーザーを起用したCMが目立っていた。ITサービスではないが注目企業として挙げておく。

18位のSATORIはMA(マーケティングオートメーション)ツールを企業に提供する会社らしい。いきなり上戸彩を起用したCMで打って出ている。

続いて21-30位も見ておきたい。

データ提供:エム・データ社 オレンジ=ITサービス 黒字=個人向け 白字=企業向け 赤字=ゲーム
データ提供:エム・データ社 オレンジ=ITサービス 黒字=個人向け 白字=企業向け 赤字=ゲーム

23位から25位に企業向けITサービスが並んだ。筆者が注目したいのが23位のアンドパッドだ。

これは工務店が住宅を建築する際に、現場と施主の間でスマホで円滑に情報共有できる、というサービスらしい。かなりニッチなサービスに思えるが、長期間放送され続けているので、CMが成功したのだろう。こういうスキマニーズに対応して生まれたITサービスがテレビCM展開をするのは面白い。

ITサービスがCMに新規参入したのはコロナのせい?

こうして見ていくと、新たにCM出稿を多くするようになった会社はITサービスが多いことがわかる。30位中19社が該当するので、3分の2近い。こうしたサービスは手元のスマホですぐにダウンロードや問い合わせができるのでCMの即効性が高そうだ。そしてサイボウズの「がんばるな、ニッポン」が典型だが、コロナ禍の影響も見てとれる。出前館の出稿量がここまで増えたのも、ステイホームによるものだろう。

一方で、DX(デジタルトランスフォーメーション)が時代のキーワードになっているように、新しいITサービスの成長はここ数年の潮流でもあった。2019年の同じCM新規急上昇ランキングと比べると、いきなり今年増えたのではなく去年すでに多かったことがわかる。

エム・データ社提供のデータから筆者がカウント
エム・データ社提供のデータから筆者がカウント

2019年にもPayPayやKINTOのような大手企業が新事業として始めたサービスやココナラ、Uber Eatsのようなベンチャーも含めて新しいITサービスの新規CM出稿があった。つまり2020年はもともとあった潮流がさらに勢いを増すとともに、コロナ禍でCM枠が空き新規参入に拍車がかかったと見てよさそうだ。

いずれにせよ、CMの新規急上昇ランキングからスマホやPCで利用する新しいITサービスが新たな経済構造を構築し始めていることが感じられた。コロナ禍は世界中に災厄をもたらしているが、次世代ビジネスの芽を伸ばす副作用もあるようだ。巣ごもり生活を耐え忍びながら、希望ある未来も思い描きたい。