Yahoo!ニュース

Twitterから聞こえる「 #持続化給付金の対応に抗議します 」の悲痛な声

境治コピーライター/メディアコンサルタント
TBS「報道特集」トップページより

TBS「報道特集」で報じられた持続化給付金の遅れ

持続化給付金とは、コロナ対策として中小企業・小規模事業者向けに会社には200万円、個人事業主には100万円を給付するものだ。融資ではなく給付なので返済の必要はない。今年のいずれかの月の売上が昨年の半分に減っていることが給付の条件だ。本当に困っている経営者や個人にはありがたい制度だと思う。5月から申請受付が始まったので、2月3月で前年の半分に減っていた人はさっそく申請している。

政府は申請すれば「スピード感を持って」入金するとしており、申請から2週間で振込むとアナウンスしていた。

ところが5月23日に放送されたTBS「報道特集」では政府のアナウンスから程遠い現実がレポートされた。

5月1日に申請した人たちへの取材から、2週間経っても入金がなく追い込まれて焦る様子が伝わってきた。それより後に申請した人の中にはすでに入金された人もいるという。申請の順番どおりではないようなのだ。

しかも1日に申請した人の中には、添付書類がオンラインで見られなくなった人がいることがわかってきた。1日に申請が殺到した際、お昼ごろにサーバーがダウンしており、その際にファイルが消失した可能性があるのではないか。入金の遅れは、これと関係するかもしれない。

これについて都内のシステムエンジニアの男性が中小企業庁に問い合わせたところ「サーバー負荷が高かったため、データロストは十分考えられるし、こちらの不備である」と認めたという。ただ、「報道特集」としてあらためて中小企業庁に取材すると「データロストは確認できていない。データが届いていない可能性がある。不備のメールが届いた方は修正をお願いしたい」との回答だったそうだ。

TBS「報道特集」の放送画面を報道目的で使用
TBS「報道特集」の放送画面を報道目的で使用

システムエンジニアの男性は「取引先から支払いを催促され”2週間で入ると政府が言っているじゃないか”と詰められる。状況を経産省として発表してほしい」と番組の中で言っていた。

安倍首相は5月21日に「最大200万円の持続化給付金も何よりもスピード感を重視し、入金開始から10日あまりで40万件を超える中小企業小規模事業者の皆様に対して5000億円お届けをしております」と述べている。取材した日下部正樹キャスターは「申請は90万件あったので40万件なら、まだ半分も入金されていない。語るべきは入金した件数ではなく入金が遅れている理由、そして入金の目処を責任を持って示すことだと思います」とレポートを締めた。まったくその通りだと思う。

ツイッター上であふれる持続化給付金遅れへの悲痛な叫び

この報道に衝撃を受けた私はツイッターで「持続化給付金」について検索してみた。タイムラインには、その入金が遅れていることへの焦りと怒りがあふれていた。報道の通り、とくに「1日申請組」の苛立ちが数多くツイートされていた。

「報道特集」のレポートにもあったデータ消失について、中小企業庁のコールセンターに何度もコンタクトし、明確な回答を得た方もいた。

このたんぽぽさんの過去ツイートを追っていくと状況と大変さが克明にわかる。中には、苦しい最中を狙って怪しいLINEアカウントが話しかけてきたことも報告されている。みなさんも注意してほしい。

ハッシュタグもいくつかできていて、たとえば「 #持続化給付金の対応に抗議します 」で検索すると悲痛な訴えがずらりと並ぶ。

そこで私もツイートで呼びかけた。

これに対しても非常に多くの反応をもらった。みなさん藁にもすがる気持ちなのだろうと感じられた。

ここに書いた通り、私にとっても人ごとではない。セミナーや講師の依頼が軒並みキャンセルになり、この給付金の申請が必要になる時が来そうだ。その際、今回の1日申請の人びとのように情報が曖昧にしか伝わってこないと不安で仕方がなくなるだろう。

そうした不安を解消することは、給付金と同じくらい大切だ。中小企業庁を非難するつもりはないし、きっと中の人たちは頑張ってくれているとは思う。ただ情報がなく不安な人びとに丁寧に情報を伝えてあげてほしい。入金が遅れているならその理由を明確にすること。遅れるにしてもいつ頃入金が果たせるか。ぜひきちんと答えられる体制を整えてもらいたい。

1日申請の人びとにとっては今週が山場のはずだ。月末は支払いのタイミングだからだ。中小企業庁はいよいよ作業に巻きを入れてもらいたい。申請者の皆さんが今週こそ、ホッとできることを祈っている。

余談:「報道特集」は貴重なレポートだからこそ配信を

ここからは余分な話だ。TBS「報道特集」は他の番組が取り上げない、独自の視点の貴重なレポートが多い。私はこのところ、今までにも増して注目している。だがその内容をSNSで共有しようにも、見逃し配信をやっていない。そのため、いまひとつ多くの皆さんに広げられない。貴重なレポートだからこそ、いまはSNSでの共有は欠かせない。配信すれば、社会的価値の高さを多くの人に広めることができる。ぜひ実現してもらいたいものだ。

ついでに、番組サイトのトップに金平・日下部両氏のブログの入り口があるのに、何年も更新されていなかった。これもいただけない。この苦難の時期にネットにも力を入れれば新たなファンが獲得できる。お忙しいことと思うが、せっかくのブログにも力を入れてもらえればと思う。

コピーライター/メディアコンサルタント

1962年福岡市生まれ。東京大学卒業後、広告会社I&Sに入社しコピーライターになり、93年からフリーランスとして活動。その後、映像制作会社ロボット、ビデオプロモーションに勤務したのち、2013年から再びフリーランスとなり、メディアコンサルタントとして活動中。有料マガジン「テレビとネットの横断業界誌 MediaBorder」発行。著書「拡張するテレビ-広告と動画とコンテンツビジネスの未来」宣伝会議社刊 「爆発的ヒットは”想い”から生まれる」大和書房刊 新著「嫌われモノの広告は再生するか」イーストプレス刊 TVメタデータを作成する株式会社エム・データ顧問研究員

境治の最近の記事