視聴率、平均視聴人数、到達人数、テレビは複合評価へ

画像:TBS「王様のブランチ」画面(筆者撮影)

ビデオリサーチが始めた新たな指標「人数」

最近、テレビ番組について見慣れない指標が発表されていることに気づいただろうか。例えば日本テレビの2つの新番組の「到達人数」が記事になっていた。

日テレ新番組到達人数 『有吉の壁』2800万 『美食探偵』1400万(マイナビニュース:4月13日)

記事にはさらに「平均視聴人数」、そして視聴率も「世帯」と「個人」それぞれの数値が書かれている。

視聴率はわかるとして、「到達人数」や「平均視聴人数」とは目新しい言葉だ。いずれにせよ、これまでの「率」とともに「人数」が算出されるようになったのだ。

ビデオリサーチのWEBサイトではこれまでも視聴率ランキング、タイムシフト視聴率ランキングが発表されていたが、それに「人数」のランキングも加わっていた。

参考:ビデオリサーチ社の「平均視聴人数」ページ

この「人数」はどういう数値なのか、「到達人数」と「平均視聴人数」は何が違うのかを解説しよう。

何人が「見た」と言えるか、2つの考え方

平均視聴人数の方がわかりやすいので先に説明しよう。

図は筆者が作成
図は筆者が作成

個人視聴率は分単位で調査している。普段「視聴率」として発表されるのはそれを放送時間で平均した値で、正確には「平均視聴率」だ。テレビ番組は全て見る人もいれば部分的にしか見ない人もいる。平均をとることで「見た人を最初から最後まで見たとして均して」算出したのが平均視聴率だ。

平均視聴人数は、この「率」に視聴率の対象となる人口(4才以上)を掛けて割り出す。最初から最後まで見たとして均した人数、ということになる。これまでの「視聴率」の出し方に近いのは、それに人口をかけた「平均視聴人数」の方だと思う。

図は筆者が作成
図は筆者が作成

一方「到達人数」は累計値だ。1分でも視聴した「率」を、重複のないように足し合わせていく。1分でも見た「率」の累計を出してそれに人口を掛けることで「1分でも見た人の人数」がわかる。

「1分でも見た」人の累計なので、3分しか見てない人も最初から最後まで見た人も同じ「1人」とカウントされる。例えば昨年のラグビーワールドカップでは終了後にビデオリサーチが「視聴人数」を算出して8700万人を超えたと発表した。これもやはり1分以上放送を見た人の累計値だ。いかに国民的イベントとなったかがわかる数値だと言えるだろう。

「平均視聴人数」と「到達人数」、どちらが「番組を見た人の数」と言えるかは考え方次第だろう。その番組がしっかり見られた指標としては「平均視聴人数」の方と言えそうだし、その番組の瞬発力、話題性などは「到達人数」の方だと言えるのではないか。ドラマやバラエティの評価には「平均視聴人数」がふさわしそうだが、スポーツイベントや特番には「到達人数」が向いている気がする。

冒頭の画像は、本日のTBS「王様のブランチ」のものだ。これまでは「瞬間最高視聴率ランキング」を発表していたのが、「視聴人数ランキング」に変わっていた。瞬間最高視聴率では「サンデーモーニング」で「張本勲氏がガツンと言った瞬間」がトップのことが多かったが、「視聴人数」では4月11日の特番「ザ・ドリームマッチ2020」が第1位で3528.8万人が見たと発表された。ただし、この番組で言う「視聴人数ランキング」とは「ビデオリサーチによる到達人数」をもとに算出したと説明が文字で出てきた。ビデオリサーチは「平均視聴人数」も発表しているので、混乱を招く気がするのだがどうだろう。「到達人数」だとわかりにくいとの判断だろうが、再考すべきだと思う。「視聴人数=到達人数」で世間に認知されてしまうと、テレビ業界全体にとってもTBSにとってもあとあとおかしなことになる可能性がある。

人数が出せるのは個人視聴率調査が全国で始まったから

なぜこの春から「人数」が加わったのか。ビデオリサーチが個人視聴率調査を全地区で始めたからだ。

世帯視聴率と個人視聴率の違いは、去年の春に私は何度かYahoo!ニュース個人で書いている。

参考:世帯視聴率は平成とともに終わる~「3年A組」が示したこれからのヒット番組~

図は筆者が作成
図は筆者が作成

あらためて図を示すと、10軒の家の中である番組が5軒で見られていれば「世帯視聴率50%」この10軒にいる25人の中で7人見ていたら「個人視聴率28%」になる。

この個人視聴率調査には調査サンプルを依頼した家庭にピープルメーターという調査用の機械を設置してもらう必要がある。そして機械式の調査はこれまで大都市圏だけで行われていた。3月30日から、日本全国で機械式調査をするようになったのだ。個人視聴率を日本全体で算出できる。

日本全体で個人視聴率を出せるので、それに日本の人口を掛ければ「人数」も算出できる。それをビデオリサーチとしてテレビ局に伝えたりランキングを発表したりするようになったのだ。

視聴率がなくなったわけではなく、「人数」が加わった形。つまり今後、テレビ番組の指標は「世帯視聴率」「個人視聴率」そして「平均視聴人数」「到達人数」の4種類をビデオリサーチが発表していく。

これまでのように「世帯視聴率」一辺倒で、それが上がった下がったと一喜一憂する時代ではなくなる。私たち視聴者も、そんな数値に左右されずにシンプルに好きな番組を応援する姿勢でいいのだと思う。指標の多様化は、そのまま社会の多様化の現れだと言えそうだ。