VOD市場でAmazonの圧勝はプライムデーが決め手!日本勢はどう対抗するか?

「VODアプリ市場調査レポート2017年~2018年最新版」より

伸びしろも十分!急成長中のVOD市場

電通デジタルとフラーによる共同調査が発表され、スマートフォンにおけるVODアプリのこの一年の使用実態が明らかになった。これはフラーのスマホアプリ分析プラットフォームAppApeのデータを分析したものだ。androidユーザーに限ったデータだが「ユーザーが実際に使った数」などがわかる。(詳しくは彼らのリリースを確認してほしい→フラー社リリースページ)

決してこれだけでスマホユーザー全体、ましてやVOD市場全体が把握できるわけではない。VODはPCでもテレビ受像機でも利用する人が多いからだ。だが大まかな傾向はわかるので市場全体を類推できるデータと見ていいだろう。彼らの発表資料から見えてきたのは、Amazonの圧勝ぶりだった。

まず上のグラフを見てもらおう。VODアプリの利用は着実に伸びている。いくつかの段階があり、昨年の7月にまずぐんと利用率が上昇している。さらに12月と今年の1月にぐいっぐいっと伸びたのがわかる。毎月少しずつではなく、あるタイミングで水準が上がるようだ。

デジタルコンテンツ協会発行「動画配信市場調査レポート2018」より
デジタルコンテンツ協会発行「動画配信市場調査レポート2018」より

デジタルコンテンツ協会によれば、動画配信サービス市場(=VOD市場)は2016年の1630億円から2017年に1850億円に伸びている。(「動画配信サービス市場調査レポート2018」より)

今回の電通デジタルとフラーによる調査は、この成長ぶりの詳細が見てとれるものとなっている。デジタルコンテンツ協会の予想では今後も市場は伸び続ける。アプリ調査からも、まだまだ伸びしろがあることが見えた。まさにレッドオーシャンだと言えるだろう。

Amazonの圧勝を決めた昨年のプライムデー

レッドオーシャンというと、各事業者が熾烈な争いを繰り広げているイメージを持つ。だがサービス別に見るとAmazonだけが抜きんでている状況が如実に見えてくる。

国内VODアプリ市場の構造
国内VODアプリ市場の構造

このグラフは利用者数の状況。トップのAmazonを100%とした時に各サービスが何%に当たるかを示している。

Amazonに対し60%強でTVerとGYAOが続いている。

AmazonプライムビデオはAmazonプライム会員なら無料で使えるVODサービスで、年間3900円。月々300円と少しで映像サービスが使えるしAmazonの様々なサービスも享受できるのだから安い。もともとプライム会員だった人なら無料感覚だろう。映画やドラマがかなりの数揃っているしハリウッド作品も日本の作品も充実。オリジナルコンテンツもダウンタウンがそれぞれ出る「ドキュメンタル」「戦闘車」、恋愛リアリティ「バチェラー・ジャパン」など豊富だ。早期に会員を投網にかけて集めようと意欲満々。投資もかなりの額になるだろう。

それを追う形のTVerはご存知の通り、テレビ局共同で運営する「見逃し配信サービス」だ。民放ドラマが放送後に無料で見られる。一週間という期限はあるが、録画しなくてもあとで視聴できるのはベンリ。ドラマ好きにはすっかり浸透したようだ。

GYAOも無料で多様なコンテンツが視聴できる。Yahoo!のサービスなので、そこからの流入で自然と見る人が多いだろう。TVer同様、民放ドラマの見逃し配信もやっている。

TVerとGYAOに続くdTVはNTTドコモが運営するVODサービスだ。ドコモショップでのセールスが効いて会員数も多いが実際の利用者数も多い。

続いて日テレのサービスHulu、auユーザー向けのビデオパス、フジテレビのFOD、ドコモのdアニメストア、世界市場を制しつつあるNetflixが第3グループを形成している。

それぞれ健闘しているし市場全体がまだまだ伸びることからすると決して淘汰の段階ではない。VODについて時々「淘汰の段階に入った」という記事があるが、それは状況を理解していない誤った記事だ。たまたま2つほどクローズしたサービスがあっただけで、上に見たようにこれからまだ伸びる市場なのだ。

だがAmazonの一人勝ちが決定してしまった感はある。なぜそこまで差がついたのだろう?その解は、このグラフにある。

国内トップランナー・Amazonプライムビデオ
国内トップランナー・Amazonプライムビデオ

Amazonプライムビデオに絞った利用者数の推移で、2017年7月に急増したことがわかる。この時に何があったかというと、「プライムデー」だ。プライム会員向けの一大セールで多様な商品がかなり安くなる。この機にプライム会員になった人びとがプライムビデオが会員なら利用できると知り、こぞって使うようになったのだ。

それまではぼつぼつ伸びていたのが一気に上昇気流に乗った。オリジナルコンテンツの大々的な宣伝との相乗効果で、一気に他を突き放したのだ。

Amazonは今週末にも今年のプライムデーを準備して、すでにテレビCMなどでガンガン告知している。今年も大量のプライム会員を獲得し、プライムビデオもさらに利用者を増やすことが想像できる。一人勝ちを万全のものにしそうだ。

趨勢が決まったわけではなく戦略次第

こうして見ていくと、Amazonの一人勝ちの牙城はもうおいそれとは崩せない気がしてくる。だが筆者は、そう決めつけるのは早計だと考えている。これからはいよいよ、テレビ受像機を主戦場に本格的な戦いが始まるのだと思う。勝負が決まるのはそこではないか。

先のデジタルコンテンツ協会の予測では、昨年の1850億円が2022年には2600億円に膨らむ。約1.5倍だ。それを後押しするのは、2011年の地デジ化の時に買ったテレビが寿命を迎え、2020年の東京オリンピックに合わせてものすごい数の人びとがテレビを買い替えることだ。いまのテレビはデフォルトでネットにつながるし、VODアプリもほとんど内蔵しているだろう。

そこに向けて他の事業者がどんな戦略を取るのかがポイントになるだろう。Amazonがセール一回で土台を築いたように何らかのやり方でまたどこかが巻き返す可能性は十分ある。

筆者の願いとしては、国内事業者である程度まとまってほしい。仕事上、ほとんどのサービスに加入しているが、さすがにムダに思えてきた。普通の人はもっと、3つも4つもVODに加入するのは馬鹿馬鹿しいと感じるだろう。何しろ、音楽でも漫画でもあるいはクルマや家具に至るまで定額サービスだらけだ。月1000円を動画配信だけ何種類も入るわけにはいかない。いまやVODの競合はSpotifyでありカーシェアサービスなのだ。

少なくとも、テレビ局が運営するhuluとFOD、この春登場したParaviはまとまったほうがいいし、TVerとも連携したほうがいい。テレビがテレビである優位性を発揮できる有効期限は迫っている。このあたりで手を結ぶのが、ユーザー利便性にもかなっているはず・・・まあ、テレビ局は相変わらずライバルは他局としか考えてないからこれは無理だとわかっているが。