「倫理憲章を守らない」企業が公開した新卒採用活動データとは?

(写真:アフロ)

経団連から正式に「(経団連による)就活ルール」の廃止が発表され、倫理憲章が無くなった後の就職活動がどうなっていくか注目が集まっている。

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そんな中、経団連に加盟せず「倫理憲章を守ってこなかった」という企業が自社の新卒採用データを公表し、注目を集めている。

採用データを公開したのは、ITベンチャーのガイアックス。

名証セントレックスに上場している企業であるが、経団連の加盟企業ではない。

同社は大学3年生の秋から面接を実施しており、早い学生は3年生の冬には内定出しも行ってる。

(参考:ガイアックスからのプレスリリース文)

ガイアックスはプレスリリースにて、「実は、倫理憲章を守らないほうが大学生・企業・大学にとってメリット大きい」と語る。

この話を聞いた方の中には、「倫理憲章がなければ就活は長期化し、学生の負担は大きいのではないか?」と考える方もいるだろう。同社の公開したデータは、そういった考えに対する新しい見方を提示している。

【学生の負担を減らすために必要なことは?】

同社は学生の現状について「決められた就職活動期間に入ると、学業に打ち込みたいとしても、就職活動に取り組まなければならない」と分析。

2020卒までの就活ルールでは、卒業研究や教育実習に影響する時期に就活をせざるを得なかった。

就活ルールがなくなれば、それらの期間を避けて就活を行う事もやりやすくなる。

しかし、問題は「いつ就活を行えば、自分の行きたい企業に行けるのか」という事だ。

これについての対策として、ガイアックスでは「企業がどのような人と会いたくて、いつ、誰にどういう形で選考しているのか」という情報をオープンにすることで、「本当に受けたい企業なのか、そしていつ就職活動をしたいかを決められる状況が理想」と提案している。

もちろん選考情報がオープンになっていたとしても、学生に選ぶための判断基準がなければどの時期に受ければ良いかわからない。

就職先となる企業を就活スタート時点では知らなかったという学生が大半なのだから、まず業界研究や企業研究が出来ていなければ動くべき時期は決められない。

また季節ごとに複数回の選考が行われていたとしても、参加する時期によって難易度や倍率が変動することも考えられる。

(既存の就活において、複数回の選考が実施される場合は基本的に早い時期の選考に申し込むのが就活生にとって得策とされてきた。)

そういった意味で、選考情報の公開がされても課題は残る。しかし、企業がいつ選考を行っているのか正しい情報を発信することには意味があるはずだ。

事実上の選考を行っておきながら「これは選考とは無関係です」と誤魔化していた現状よりよっぽど良いだろう。

【人事から見た、倫理憲章を守らないメリット】

一方の企業側から見た時はどうだろうか?

「通年で採用するなんて、休む間もなく人事の負担も大きいのでは?」という意見もあるだろう。

この点、ガイアックスの意見として「一度に多数の就活生に対応しなくてよいため、質の高い採用につながる」と採用を分散する利点を強調。

一度に多数の就活生を選考しなければいけないからこそ、学歴フィルターなども用いて学生を絞る必要が出てしまっていると分析している。

同社の場合は3年生の11月と1月に人事面接のピークとなっており、4年生の6月までに全面接数の約7割がすでに実施済みとなっている。それでいて、合格者が早期に偏っているというわけでは無い。

今後も、同社では学校別、地域別のエントリー者数や選考進捗状況も含め、採用データを外部に公開していく方針だという。

【形骸化していたルール、このまま無くなるのか?残るのか?】

経団連の就活ルール廃止が学生にとって良いものになるかどうか、そして企業にとっても良いものになるかどうか。それは採用市場に関わる1人1人の振る舞いによって決まる。

「ルールはすでに形骸化している」という事実に向き合い、これからどうしていくべきかという議論を開始できただけでも就活ルール廃止という一歩には大きな意味があったのではないだろうか。

しかし先日の記事でも紹介した通り、現時点では「経団連が主体となって就活ルールを決めなくなった」という段階である。

今度は政府が主導となり、外資やIT企業にも要請する形で再度就活ルールの設定を行おうとしている。

一歩間違えば「元の木阿弥」となってしまうかもしれない。

形だけのルールを再設定してお茶を濁す事がないよう、関係者には慎重な対応をお願いしたい。