就活ルール廃止により注目される企業の採用姿勢…「企業が学業成績を評価しろ」との批判は合理性に欠ける

(写真:アフロ)

経団連の中西宏明会長が日本の就活について言及した際に「日本人学生が、諸外国の学生と比べてあまり勉強しない」と指摘した事で賛否が挙がっている。

会見では、

「日本では大学に入学することに比べて、卒業することがさほど難しくない」

「学生がしっかり勉強するよう、大学には有意義な教育を実施してもらいたい」

などの見解が述べられた。

この意見に対して、「企業の採用姿勢にも問題がある」という批判が出ているようだ。

具体的には、

「企業が学業に注目してこなかったから学生が勉強しない」

「経団連加盟企業が採用選考で成績をちゃんと活用するべき」

などのような意見だ。

「選考のために勉強させる」では根本的問題を解決していない

しかし、やや穿った見方ではあるが「内定を餌にして学生に勉強をさせよう」とするようなやり方は本質的なのだろうか?

また、それは企業にとって本当に意味のある行為なのだろうか?

中西会長からも「学生が大学で勉強した事を評価していくべき」という見解が示されているが、これが採用や新人教育の現場を見た上での意見なのかどうかは定かではない。

学んだことが社会に出てから活きるかどうかがまず第一の問題だ。

そこをすっ飛ばして「採用選考で成績を使え」というのは現場を無視した自己満足でしかない。

それによって学生が多少勉強するようになったところで、何らかの経済的成果が得られるとは思えない。

「成績を考慮する」ことの合理性があるならば採用の現場でも自然とそういった選考を行うようになり、学生も学業に励むインセンティブが増える。まずこの順番を間違ってはいけない。

実際、専門的知識が活きる一部の職種においては研究の成果なども評価対象には入っている。なぜなら、そこに「学業成績を考慮する」合理性が存在するからだ。

単純にそういった職種が全体の中で見ると割合が少ないので「企業が学業成績を重視していない」という印象につながっているのだ。

企業が採用を行うのは、事業の発展・継続のため

当たり前だが、採用活動はボランティアではない。

結果的に雇用という形で社会に貢献していたとしても、基本的に自社の業績を上げるために人材を採用する。

もちろん企業も選考内容をどうするべきかという問題には頭を悩ませている。

もし学業成績の優秀な学生が入社後に活躍するとわかっているならば、企業は喜んで学業成績を採用基準として重視するだろう。

入社後の活躍と学業成績が相関する業種・職種であれば今でも学業成績による評価は行われていると言ってよいだろう。問題は、相関すると言える業種・職種ばかりではないという事だ。

この問題を無視して「企業は学業成績を評価して選考するべき」と批判するのは、手段と目的を履き違えている。

もしこの問題を解消し「学業成績が就活で評価される」仕組みにしたいのであれば、アプローチは2つ考えられる。

1つは、「ビジネスで実際に役立つ知識や経験を大学で提供する」という事。

もう1つは「アカデミックな知識・研究が活きる産業・仕事を増やす」という事だ。

要は、産業界とアカデミックな世界との間にギャップがある事が問題なのだ。

このギャップはその業界において国際競争力の低下にもつながる問題であり、無理やり学業成績を評価するという「パフォーマンス」でお茶を濁すべきではない。

大学で学ぶ事をどう事業につなげていくか、どのような人材がいれば事業が発展するか…という本質的な部分で両者が歩み寄り、ギャップを埋めていく事が大切なのではないだろうか。

それが実現すれば選考基準などは自然と適切な内容に変わっていくだろう。