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新築売れ残りマンションの販売に「婚活サイト」を利用するという手口…粗利は1物件6〜900万円程度?

酒井一樹就活SWOT代表

婚活サイトで知り合った異性にマンション投資を勧められ、購入すると連絡が取れなくなる…という「デート商法」のような事案が発生しているようです。

インターネットを通して結婚相手を見つけるいわゆる「婚活サイト」で知り合った異性に投資用のマンションを勧められ、購入したら、相手と連絡が取れなくなったという相談が急増しているとして、国民生活センターが注意を呼びかけています。

国民生活センターによりますと、いわゆる婚活サイトで知り合った相手に勧められてマンションを購入した人からの相談が、今年度、先月までの9か月間に42件寄せられ、前の年の3倍に増えています。

相談の多くは、「投資に詳しいという異性と婚活サイトで知り合い、勧められるままに投資用のマンションを購入したが、その後、相手と連絡が取れなくなった」などというものです。

国民生活センターによりますと、こうした相談を寄せる人は、都市部に住む30代から40代の女性が多く、マンションの購入金額は平均で3000万円余りだということです。

出典:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140124/k10014727661000.html

典型的なデート商法ですね。

「壺」がマンションに変わったということなのでしょうか…。

NHKのニュースには詳しく書かれていませんが、価格帯的に十中八九、新築の単身者向けマンションなのではないかと思いました。

実際調べてみたところ、後述する週刊誌の記事が見つかりました。

ある週刊誌に載った記事を転載しているブログなのですが「新築の売れ残り物件の販売を引受け、20〜30%の手数料を受け取っている業者」のことが言及されています。

(週刊誌の情報なので眉唾物ですが、今年になって他の媒体でも報道されていることから、それなりに信憑性は高そうです。)

昨年からの報道内容

実際の手口について、都内中央区を拠点とする販売会社の関係者が明かす。「我々は、デベロッパーから売れ残ったマンションを引き受け、販売を請け負う代わりに20~30%の販売手数料を貰います」

(略)

メール交換から始め、実際に会って食事をしながら、「折をみてライフプランの話題を持ち出す。『僕たちの将来のために資産を持たないか。詳しい友人を紹介する』と持ちかけ、仲間のもとに連れて行き、『賃貸に出せば、家賃収入に1万円ほど上乗せする程度のローンで資産が持てる』などと言いくるめて契約させるのです」(同)

むろん、相場より割高なのは言うまでもない。

「南関東に住む40代、離婚歴のあるキャリアウーマンが、10才以上年下の男に言われるがまま、相場に数100万円上乗せしたマンションを約2000万円で買わされた例もある。“仕事”に成功すれば、彼らには1件につき50万~60万の歩合給が支払われる仕組みです」(同)契約完了を潮に「営業」は徐々に女性のもとから離れていく。しまいに音信不通となり、“被害者”はローンを抱えたまま、婚活中の出来事という気恥ずかしさもあって泣き寝入りするケースが多いという。

出典:http://oneroommansion.doorblog.jp/archives/27824888.html

3000万円の物件なら手数料が600〜900万円。結構大きな利益になるわけですね。

普通の「物件仲介」であれば仲介手数料は物件価格の3%+6万円となりますので

物件価格が3000万円だとしても税込み100万円前後です。

物件価格は同程度なのに、仲介業者と販売代行業者では利益が全然違うことがわかります。

不動産投資はダメではないが、何を買っても良いわけではない。

マンションというものは、新築か中古か、ファミリー向けか単身向けかで

購入後の価格の推移が全く異なります。

件のニュースでは、買ったマンションがどのような物かまでは説明されていませんが「投資用」という表現と「新築で3000万程度」という価格帯を考えれば、おそらく単身向けのマンションだと予想されます。

これは一般論ですが、単身向けマンションはファミリー向けに比べて新築で販売された後の価格の下がり方が急激です。

それこそ3000万円台で売られていた新築マンションが5年から10年で1000万円台まで値下がりします。

「自己居住用」として実需での買い手が見込みやすいファミリータイプとは異なり、「投資用」として見られやすい単身向けマンションは、どうしても「利回り」を気にされてしまいますので、新しくても家賃が高くとれないのであれば、売るときも当然安くなってしまいます。

だからすでに価値の下がった中古を狙うならともかく、新築で買うことに合理的なメリットはありません。

一方のファミリー向けマンションであれば、5〜6000万円で購入したものが築5〜10年で4〜5000万円になるイメージでしょうか。

単身向けに比べれば価値の下落率は低いものの、やはり新築時が一番高いことが多いです。

すごく良心的な価格設定をされたマンションであれば中古価格が新築を上回る例もありますが、諸費用や利子負担含めてプラスになる事はまず無いでしょう。

良心的な価格設定がされており、抽選に通らなければ購入できないような人気マンションならまだ望みはあります。

しかし、「新築売れ残り」であればまず間違いなく購入時の価格がピークです。余程の値引きがあるなら話は別ですが、販売代行業者が利益を取れているような価格設定では、確実に損を被るでしょう。

もちろん景気変動や物件によるため一概には言えないのですが、売れ残るほど人気のない新築ワンルームマンションを買うというのは不動産投資として「やってはいけない」典型事例です。3000万円程度で買ったとして、売る時はかなりの確率で1000万円台になります。

仮に頭金2〜3割で買ったとしたら、残債が1000万円を切るまで「残債>物件価値」の状態が続き、仮にマンションを売却したとしても負債が残ってしまう可能性が高いでしょう。

つまり何が言いたかったかというと、「売れ残りの新築単身向けマンションを購入するなんて、投資として成り立たない」ということです。

新築の単身向けマンションを「建てる」のは内容次第でアリですが、新築の売れ残りマンションを買うのはどう計算しても損するパターンしかあり得ません。

「不動産投資に詳しい異性」は、絶対にそんなもの勧めないはずなので、そんなことを言っている方がいたら詐欺ではないかと疑いましょう。

投資用にマンションを買いたい方は、新築時3000万円程度の物件が中古で1000万円台まで落ちてきた時に買うと良いのではないでしょうか。

※ちなみに「就活サイト運営会社の代表なのになんで不動産の話をするのか」…と思われた方もいらっしゃるかもしれません。一応説明しておくと、自社メディアの1つとして中古物件の検索サイトと、賃貸物件の検索サイトを運営しています。そのため、スタンスが中古物件寄りであることはご了承ください。

就活SWOT代表

慶應義塾大学在学中、世界初の就活SNSの代表に就任。国内最大の就活SNSへと成長させた後に大学を卒業し、エグゼクティブサーチを行う人材ベンチャーに入社。役員・事業責任者などの幹部人材の採用支援に携わる。2009年にエイリストを設立し「自分の頭で考え、行動する人材を増やす事」を命題として就職情報サイト「就活SWOT」を開設。

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