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オレオ戦争の勝者はヤマザキナビスコかモンデリーズか

坂口孝則コメンテーター。調達コンサル、サプライチェーン講師、講演家
オレオのメーカーが変わってそろそろ半年になろうとしています(写真:アフロ)

オレオのメーカー変更

2016年8月に、ヤマザキナビスコ(現ヤマザキビスケット)は「オレオ」の製造と販売を終了しました。

ヤマザキナビスコは、モンデリーズ・インターナショナル社とのライセンス契約を来る8月31日の契約満了日をもって終了させることを決定いたしました。

出典:ヤマザキ・ナビスコ株式会社ホームページ

とあるとおり、契約切れに伴うものでした。「オレオ」は、モンデリーズ・ジャパンから販売されることとなり、中国生産になりました。

さて、オレオの販売元が切り替わってから、半年が経とうとしています。2016年9月には、「ヤマザキナビスコのほうが美味しい」「いや、モンデリーズのほうが良い」とかなんだかんだ論評やら感想などが飛び交いました。オレオには変わりないから売れるだろうとか、侃々諤々でした。

POSデータを確認してみよう

そこで、2016年1~12月までのPOSデータが出揃いましたので、調べてみました。このPOSデータは、一般公開されていないもので、スーパーマーケットの一店あたり売れ行きを示しているものです。

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データ提供元:カスタマー・コミュニケーションズ株式会社「TRUE DATA」

※2017年1月30日時点のデータに基づき、算出しています。

「TRUE DATA」は、全国のドラッグストア、スーパーマーケットなどの消費者購買情報を統計化した標準データベース。全国延べ5,000万人規模の購買情報から構成され、性別、年代情報をカバーしています。

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調べたのは双方のブランド「オレオ」で、「ビスケット」カテゴリーで抽出しました。

ご覧いただいてわかるように、ヤマザキナビスコ(現ヤマザキビスケット)とモンデリーズが切り替わったのが9月です。そこから旧オレオはゆるやかに在庫が減少し、在庫消化により売上がほぼ0にいたっています。

そのぶん、新オレオの売上が代替しているかというと、まだまだの様子です。

これをご覧ください。赤い線が何を示しているかというと、2015年1~12月です。2016年と2015年の売れ行きを対比させることで、その差異を確認できます。

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すると、2015年1~12月は平均で、毎月8,000円ほどの売上とわかります。そしてヤマザキナビスコ(現ヤマザキビスケット)が販売していた、2016年1~8月も8,400円ほどです(なお、新オレオは4ヶ月の平均は約4,000円です)。

こう見ると、前述のとおり代替できていない様子が伺えます。

モンデリーズのオレオはこれから

注意せねばならないのは、スーパーマーケットのPOSデータですから、ネット通販などのデータは網羅しておりません。また流通の観点から、ヤマザキビスケットのもともとの強さもあります。

さらに、上記のデータが商品の優劣を指し示していないのは、あえて追記しておきます。

フォローするわけではありませんが、個人的には現オレオをよく買います(近くのファミリーマートではヤマザキのスリムサンドがかならず隣にあります)。戦略的に、まず既存の販売ルートをしっかり足固めして、そして拡大を狙うかもしれません。また、半年が経とうとしているといっても、まだ半年です。

ちなみに、モンデリーズのオレオ商品展開はまだ途上です。ヤマザキナビスコはオレオブランドで、チョコもありましたし、多様な展開をなさっておりました。今後の展開を見守りたいと思います。

とはいえ、2016年のデータは上記の通りでした。

コメンテーター。調達コンサル、サプライチェーン講師、講演家

テレビ・ラジオコメンテーター(レギュラーは日テレ「スッキリ!!」等)。大学卒業後、電機メーカー、自動車メーカーで調達・購買業務、原価企画に従事。その後、コンサルタントとしてサプライチェーン革新や小売業改革などに携わる。現在は未来調達研究所株式会社取締役。調達・購買業務コンサルタント、サプライチェーン学講師、講演家。製品原価・コスト分野の専門家。「ほんとうの調達・購買・資材理論」主宰。『調達・購買の教科書』(日刊工業新聞社)、『調達力・購買力の基礎を身につける本』(日刊工業新聞社)、『牛丼一杯の儲けは9円』(幻冬舎新書)、『モチベーションで仕事はできない』(ベスト新書)など著書27作

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