ロボット開発に「再参入」を決めたソニーと時代の勝算

(写真:ロイター/アフロ)

6月29日、ソニーがロボット開発に着手していることを明らかにした。一度撤退をした公開企業にとっての再参入は、新規参入とは持つ意味の重さが違う。いまこの時期、AIBO以来のロボット市場への再参入にはどのような意図があるだろうか?

「ロボット」が意味するものと、再参入の重み

「ロボット」が今後果たす役割は、最初のAIBOが発売された1999年当時より劇的に変化したが、その最たる違いは何か?と尋ねられたら、一般ユーザーとロボットの位置関係にある、と答えてまず間違えないだろう。囲碁チャンピオン戦で人類に勝利したAIの影響もあって、かつては人から教わる側だったロボットの世間でのイメージは、ここ数年で「教える側」「優る側」へと移行しつつある。言い方をかえると、これからのロボットはもはや「かわいいペット」なだけでは通用しない。人間より物事を知ってる「コンシェルジェ」であることが求められる時代に突入したのである。

さて、一度撤退したはずの分野に企業が再び参入するにはそれなりの大義がないと許されるものでもない。これは上場企業の掟である。そんなソニーがいま狙っている分野とはなんだろう? 一度は捨て去ったAIBOのようなエンターテイメントロボットの分野なのか?

撤退した企業が再参入する意味とは?

アップルやグーグルの目が自動車に向いてきた際と同じように、そこには公開企業ならではの大義があるはずだが、ずばりそれはなにか?ということになる。コンシューマーロボットにメーカーがシノギを削っているターゲット、それは家庭内の情報インフラにある。ロボットはそのHUB役を担うと目されているわけで。家庭内に鎮座する、そんなロボットが備えるべき機能は、したがってパソコンやスマホのように調べたい情報を文字で朗々と検索と表示してくれる、といった程度ではもはや不足なのだ。いまから求められるロボットとは、たとえば家族の会話に聞き耳を立て、それを記憶し、娘の帰宅時間や父親の居場所を把握し、必要に応じてそれらを家族に伝え、エアコンを予約し、家族不在時であらば予約されたエアコンを切り、来客者があれば応答しその姿を録画する・・・、などなどSF映画並みのものだ。つまりいまのロボット事業に注がれている投資家の熱い視線の先にあるのは、手や足の機構性能ではない。家庭内の「番人」としての知的会話性能なのだ。

ロボティックの先にあるもの

こういうロボットは、AIBOのような4足歩行から人間に似たロボットになってくることは言うに及ばずだが、しかし二足歩行が必須かというと、そういうわけではない。むしろ「日本語(などの自然言語)で行う会話」での知能系の開発が優先することを意味する。そんな知性がどこかのメーカーによってもう実現されているのか?となると不思議なくらい、未だにそれは達成できいない。それはなぜか ? それは各ロボットメーカーはロボット事業をこれまで、あまりに機械として見すぎてきたからにほかならない・・・。

時代を牽引してきた部門のコラボ

ソフトバンクのペッパーくんや、シャープのロボホンが鳴り物いりで発売された日本において、次なるロボット製品に問われるのは「実用的な会話と頭脳」になってくる。会話完成度の未完成さを「カワイさ」でごまかせる時代は過ぎた。では現在、それを実現できるチームはいるのか? ソニーグループにはそれがいるのだ、他社にはない、このプロジェクトには欠かせない最強のブレーンが。それはだれか? それは世界最強ともいえるソニーの「ゲームソフト開発部門」である。というのもゲームソフト部門こそ、ユーザーとの会話にもっとも耳を傾け理解するAIに必要なノウハウをもっているからで、機械的な言語解析の延長上に、人間がまともに話をしたいと思えるAI会話は存在し得ないからである。

しかし、ソニーは世界屈指の縦割り社会企業でもある。他部門同士、他カンパニー同士がおいそれとノウハウを融合させる環境があるわけでもない。いま企業としての真価が問われている日本の家電メーカー。ウォークマンを世界に送り出した"あのソニー"がこれからこの未来的分野でふたたび覇権を手にできるか?その答えは、垣根を越えて知のコラボができる大組織の柔軟さの有無、にあるように思えるのである。