ドラクエの復活の呪文はいかに未来を予測し得たのか?~福山氏電撃結婚の予言と80年代からの魔法呪縛~

福山氏の結婚予言騒動で現代に蘇った1980年代の呪縛とは!?(写真:ロイター/アフロ)

福山氏結婚騒動のミステリー

「ふくやまは ふきいしかづえ かたくあい ちかい」という(復活の呪文という名の)文字列をゲームソフト「ドラゴンクエスト」にて入力すると、レベル28で復活する!! という報道をご存知だろうか?

この不可思議な報道が他の多くのメディアに飛び火し話題になったのが、福山さん吹石さんの電撃結婚ニュースの二日後のこと。

http://www.excite.co.jp/News/net_clm/20150929/Rocketnews24_640332.html

本ゲームが製作されたのが1980年代中盤ということなどから、巷では、「前世紀に製作されたこのゲームがなぜ未来を予言しえたのか?」という、都市伝説にも似たミステリーが波及し、前週の電撃結婚騒動の目玉としてサンデージャポンなどのバラエティー番組にまで取り上げられた。

そして作者がツイッターでコメントを発表

だが、今回の騒動には数日後に新たな展開を見せる。ツイッターで、ドラクエの作者である堀井雄二氏が以下のようにコメントしたからである。その内容とは、以下のようなもの。

「報告が遅くなりましたが、およそ28年前に予言しておいたことが的中したようです。おめでとうございます!」[pic.twitter.com/rqUoPvMgOi]

この発言により、本ミステリーの信憑性が増すこととなり、ネット上でさらに拡散することとなった。「そんなわけないと思うけど、じゃどうやってそんなことができるか?_」となると、まるて想像がつかない・・と多くの人はなりがちである。そのからくりを知っているのは当時からドラクエを知る一部のベテラン(?)ユーザーというだけということになる。ではいったいどんなからくりがそこにあるというのか?

チェックサムが作り出す幻想な世界観。

話題の「復活の呪文」という文字列。ここには、DNAよろしくさまざまな情報が含まれている。プレイヤーの名前や所有しているアイテム、体力などの各種パラメーターなど、プレイヤーにとってゲーム継続に必要な情報すべて、である。

しかし、ゲーム通の間ではすでに知られていることだが、この組み合わせのアルゴリズムはすでに解析されあちこちで公開されている。例えば以下のサイトにあるように。

http://wikiwiki.jp/dqdic3rd/?%A1%DA%C9%FC%B3%E8%A4%CE%BC%F6%CA%B8%BA%EE%C0%AE%A5%D7%A5%ED%A5%B0%A5%E9%A5%E0%A1%DB

簡単にいうと、入力された文字列が正しいかをチェックする桁がある。それが1桁(1Bite)だと、めちゃくちゃな文字列であっても256(=8bit)分の一の確率で合致する。つまり製作側が想定していなかった文章でも1/256の確率で「復活の呪文となりえてしまう」のである。

さらには、そのアルゴリズムが解析され尽くした今では、ソフトを使えば、これから発生するであろう迷宮入り事件の真犯人の名前から芸能人の電撃結婚まで、どんな事象でもすべてが「ドラクエ復活の呪文」になりえるということになるのが真相である。

ハードウェア資源が極めて高価だった時代の呪縛

こんなからくりがあること自体、いまのユーザーには、理解が行かないかもしれない。「文字列にデータなど仕込まなくても、もっとシンプルな方法でゲームデータは保存できるだろ」と。あるいは「なにのためにそんなことが必要なの?」と。

しかしそれは、コンピューターに保存領域がある時代ならではの話である。

1980年代に登場したファミコンは、ユーザーデータを保存できない設計だった。コンセントを抜くとすべてがリセットされる「家庭玩具」において、ユーザーデータの保存などという贅沢(!)な仕様はカットされていたのだから。

そんな環境下において、ゲーム再継続を可能とする当時の工夫、それが、「復活の呪文」という文字列にデータを仕込む手法だったというだけの話だ。ゲーム側から与えられたパスワードをユーザーはメモし、ゲーム再開時にプログラム側はユーザーの入力したパスワードが本物かを判定し、1/256で一致すれば本物と判断し文字列をゲームデータとして変換する。これでプレイ再開となる・・その仕組みを誰かが応用して福山吹石結婚予言を作り、現代に拡散したというのが今回の「予言」の真相である。

福山さん吹石さんの電撃結婚が前世紀から予言された運命だったと信じたい方々には夢を壊して申し訳ないが・・。

いまに映える、古参クリエーターの貫禄

実はサンデージャポンで本騒動が報道された晩、僕は偶然、堀井氏とLINEで話をしていた。その時点で堀井氏はこの芸能系ニュース騒動の存在をまだ知らなかった。そして、にもかかわらず、その翌日に上記コメントを堀井氏はツイッター上で発したというわけである・・・

作者の想定範囲外だったことが次々とおきるのが、ヒット商品の定めである。熱いユーザーたちによって様々な解析を施された「呪文」と、その存在をすっかりわすれたスマホゲーム全盛時代。

コンピューターリソースの価格が当時から千万倍単位で安くなったいま、作者の堀井氏は、社会からは半ば忘れられたハードウェアの脆弱性やその盲点をあたかも「想定範囲内だった」かのようにウィットに富んだコメントで手玉にとり、それがファンタジーとなって拡散され社会でニュースとなる・・・、そのマジックをあからさまに見た気がした、というのが今回の騒動における同業輩としての結論だった。