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冬の連続ドラマで元・仮面ライダーは何人出演しているか?

斉藤貴志芸能ライター/編集者
『女神の教室』に出演中の高橋文哉 (C)フジテレビ

月9ドラマ『女神の教室~リーガル青春白書~』で、北川景子が演じる主人公が派遣教員を務めるロースクールの生徒役で、高橋文哉と前田拳太郎が出演している。高橋は『仮面ライダーゼロワン』、前田は『仮面ライダーリバイス』で主役だった。若手俳優の登竜門と呼ばれる『仮面ライダー』シリーズだが、実際、今クールのプライムタイムのドラマで、レギュラーに名前を連ねている出身者は何人いるのか? 

ゼロワンとリバイが法科大学院生役で共演

 高橋文哉は『仮面ライダーゼロワン』(2019年)から今回の『女神の教室』(フジテレビ系)まで、10クール続けて連ドラに出演中。仮面ライダーゼロワンに変身する飛電或人は、芸人を目指しながらお笑いセンスは皆無という役どころで、三枚目要素もあったが、その後は繊細で陰のある役でも好演している。

 『最愛』(TBS系)では吉高由里子が演じた主人公の失踪していた弟役。再会シーンでの透明感は鮮烈で、姉を思いやるゆえに遠ざかるのが涙を誘った。

 前クールの『君の花になる』(TBS系)ではボーイズグループのリーダー役で、クールに見えつつ熱い想いを秘め、本田翼が演じた元教師の寮母との恋模様は良いムズ痒さがあった。

 『女神の教室』で演じる真中信太郎は、ロースクール(法科大学院)の学生グループのリーダー的存在。優等生だが、裏で暗い顔ものぞかせる。大学時代に就活に失敗し、一流企業に入った友人たちを見返すために弁護士を目指していて、司法試験への焦りを抱えていた。

 一方、前田拳太郎が演じる水沢拓磨は一匹狼の学生。母子家庭育ちで奨学金の返済もしなくてはならず、アルバイトをしながらロースクールに通う。

 『仮面ライダーリバイス』(2021年)での五十嵐一輝=仮面ライダーリバイは根明な熱血漢だったので、また違う顔を見せている。真中とは対立していたが、4話の模擬裁判を通じて本音で歩み寄った。

 2話では学生たちがタトゥーについて話していた中で、桐矢純平(前田旺志郎)が「プリキュアだったら? ウルトラマンだったら?」と問い掛けるくだりがあり、SNSで「目の前にリバイとゼロワン」「そこは仮面ライダーだろ」といったツイートが寄せられた。

(C)フジテレビ
(C)フジテレビ

『リバイス』の三兄妹は全員がレギュラー出演中

 家族をテーマに据えた『リバイス』では、五十嵐家の長男・一輝ら三兄妹が仮面ライダーに変身。そして、全員が今クールのドラマに出演している。

 次男・大二=仮面ライダーライブ役の日向亘は、日曜劇場『Get Ready!』(TBS系)で、法外な報酬と引き換えに患者の命を救う闇医者チームの1人、スペードこと白瀬剛人役。天才ハッカーでカルテのデータを盗み出したりと、妻夫木聡が演じる主人公の執刀医らをバックアップする。

 『リバイス』での大二は、一輝への劣等感から悪魔に精神と肉体を乗っ取られたりと、苦悩が滲む役だったが、スペードは飄々としたキャラクターで、ガラリとイメージを変えた。18歳にして、妻夫木、藤原竜也、松下奈緒という手練れのメンバーたちと渡り合っている。

(C)TBS
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 空手に打ち込む末っ子のさくら=仮面ライタージャンヌ役の井本彩花が出演しているのは、『警視庁アウトサイダー』(テレビ朝日系)。西島秀俊が演じる主人公の刑事・架川英児の行きつけの居酒屋のアルバイト店員・沙希役だ。

 出番は多くないが、地下アイドルでもある設定で、初のツインテール姿を披露。米倉涼子、上戸彩、武井咲らを輩出した「全日本国民的美少女コンテスト」のグランプリだけに、登場すると画面をパッと明るくする華がある。

 なお、西島秀俊は昨年Prime Videoで配信された『仮面ライダーBLACK SUN』で、主人公の南光太郎=仮面ライダーBLACK SUN役。架川と組む刑事・蓮見光輔役の濱田岳も、この配信ドラマでクジラ怪人を演じた。

「史上最弱」からトップ俳優に躍進

 もはや『仮面ライダー』出身という肩書きを超越している佐藤健は、『100万回言えば良かった』(TBS系)に出演中。井上真央が演じる主人公の相馬悠依にプロポーズしようとした矢先、自分が死んだとわからないまま幽霊になったシェフの鳥野直木役。

 1話の不意打ちのキスシーンなどで幸せ感が溢れたところから、悠依と直接コミュニケーションが取れなくなった中で、互いの想いが募るのが切ない。3話では悠依が姿が見えない直木に「大好きです」と繰り返すのを聞き、号泣していた。

 『天皇の料理番』、『義母と娘のブルース』、『恋はつづくよどこまでも』(いずれもTBS系)や映画『るろうに剣心』シリーズなど、数々の作品で主演や主人公の相手役を務めてきた佐藤。ブレイクのきっかけは『仮面ライダー電王』(2007年)だったことを知らない人も、今や多いかもしれない。

 『電王』は電車がモチーフの異色作で、佐藤が演じた野上良太郎は臆病で喧嘩も弱く運も悪いという役柄。イマジンという怪人に憑依されて戦うが、自身は「史上最弱の仮面ライダー」と称された。

 そんな『電王』は平成仮面ライダー史上で屈指の人気作となり、佐藤も一躍イケメン俳優のトップランナーに。

 その後、『ROOKIES』(TBS系)の野球部員の1人から、『ブラッディ・マンデイ』(TBS系)、『メイちゃんの執事』(フジテレビ系)などで徐々にポジションを上げ、2010年の『Q10』(日本テレビ系)でプライムタイム初主演。そして、現在に至っている。高橋文哉らが今、その道筋を辿っているように見える。

主人公の姉役から15年かけて主役も

 『電王』で、変身はしていないが、野上良太郎をやさしく見守る姉の愛理を演じていたのが松本若菜。現在、『夕暮れに、手をつなぐ』(TBS系)に海野音(永瀬廉)が所属する大手レコード会社のA&R・磯部真紀子役で出演している。

 また、『探偵ロマンス』(NHK)では、会員制の秘密倶楽部の謎めいた女主人・蓬蘭美摩子役。

 16年前の『電王』が女優デビュー作で、その後は脇役や1話ゲストでの出演が長く続いていたが、昨年7月には『復讐の未亡人』(テレビ東京系)で初主演。『やんごとなき一族』(フジテレビ系)、『ファーストペンギン!』(日本テレビ系)などレギュラーも増えた。クセの強い役が多いことも相まって、38歳にして注目を高めている。

(C)TBS
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『フォーゼ』のリーゼントからトントン拍子で

 『大奥 3代・徳川家光×万里小路有功 編』(NHK)で、公家出身の美しき僧・万里小路有功を演じている福士蒼汰も、『仮面ライダー』出身のイメージは完全に払拭しているが、初主演は『仮面ライダーフォーゼ』(2011年)だった。

 フォーゼに変身する高校生の如月弦太朗役で、リーゼントの髪型が印象的だった。以後も、朝ドラ『あまちゃん』(NHK)で能年玲奈が演じたヒロインの初恋の先輩を演じるなど、トントン拍子で駆け上がる。『恋仲』(フジテレビ系)、『4分間のマリーゴールド』(TBS系)など主演作も数多い。

 歴史上の男女が逆転した江戸の世界を描く『大奥』では、徳川家光(堀田真由)の側室・お万の方となって深い愛で結ばれ、様々な事件もありながら、大奥の基盤を築いていく。

(C)NHK
(C)NHK

 『大奥』では、有功のお付きの部屋子で、3話で家光が有功に贈った猫を殺めた玉栄役の奥智哉も、『リバイス』に出演していた。

 井本彩花が演じたさくらと同じ空手道場に通っていて、実は悪魔の排除を目指す地下組織の一員だった牛島光役。仮面ライダーオーバーデモンズに変身した。

 当時17歳でレギュラー最年少。二宮和也主演の映画『ラーゲリより愛を込めて』にも出演している。

『ゴースト』以来の人間でない役で主演

 昨日スタートした『東京の雪男』(NHK Eテレ)に、人間社会で暮らす雪男という異色の役で主演する磯村勇斗は、『仮面ライダーゴースト』(2015年)で仮面ライダーネクロムに変身するアラン役だった。

 怪人である眼魔の世界を管理する存在の1人だったが、人間界こそ美しいと気づき、天空寺タケル(西銘駿)=仮面ライダーゴーストらと共に戦った。

 その後は『サ道』シリーズ(テレビ東京系)、大河ドラマ『青天を衝け』(NHK)の徳川家茂役、昨年の『持続可能な恋ですか?』(TBS系)で上野樹里が演じた主人公の幼なじみ役など、順調にステップアップ。

 『東京の雪男』の山川ユキオ役は見た目から、いつものイケメンぶりを抑えた素朴な印象で、人間の馬場翠(北香那)と恋に落ちる。人間でない役は映画『ホリックxxxHOLiC』でも演じているが、ドラマでは『ゴースト』のアラン以来。

 Eテレのドラマらしく偏見や差別、国による厳しい管理、大量消費社会の理不尽などにも向き合い、共生社会のあり方が問われていくようだ。

(C)NHK
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ヒロインからの出世頭はセクシーな歌手役を

 『大病院占拠』(日本テレビ系)で、占拠された病院の外科医・若狭昇役の稲葉友は、『仮面ライダードライブ』(2014年)で仮面ライダーマッハに変身する詩島剛を演じていた。アメリカ帰りのカメラマンで驚異的な身体能力を持ち、明るいお調子者キャラだった。

 その姉でヒロインの警察官・詩島霧子を演じていたのが内田理央。変身はしないが格闘術や射撃に長けて、主人公の泊進ノ介(竹内涼真)=仮面ライダードライブの片腕として活躍した。

 現在は『夕暮れに、手をつなぐ』で、永瀬廉が演じる音の憧れの人気ユニット・ズビダバのセクシー系ボーカル、アリエル役。音に「キスしたくなっちゃう」と迫るシーンもあった。

 深夜帯では、シリーズ化されたエロラブコメディ『来世ではちゃんとします3』(テレビ東京系)で、性に奔放だったが健全交際を決意した大森桃江役で主演。

 内田は18歳でデビューし、主にグラビアアイドルとして活動していたが、23歳を区切りと考え、『ドライブ』のオーディションに落ちたら引退するつもりだったという。

 結果的に『ドライブ』以降も『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)、『向かいのバズる家族』(日本テレビ系)、『言霊荘』(テレビ朝日系)など出演作が相次いだ。

 さらに、グラビアと共に「MORE」専属モデルも務める“モグラ女子”の代表格にもなるなど、多岐に渡り活躍している。『ドライブ』が運命を変える形となり、今や元ヒロインの出世頭だ。

(C)TBS
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 数えてみると、元・仮面ライダーやヒロインが今期のプライムタイムで11人、レギュラー出演中。登竜門と呼ばれるのに値する数だろう。

 高橋文哉や前田拳太郎ら近年の仮面ライダー出身者が数年後には、現在の佐藤健や福士蒼汰のように主役を張るポジションに就いていることも期待したい。

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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