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アイドルがメンバーに感じる悔しさとは? アンジュルムの強さを受け継ぐ後輩軍団の団結

斉藤貴志芸能ライター/編集者
左:川名凜 右:橋迫鈴(撮影/松下茜)

強さとカッコ良さを備えたアイドルとして、熱い支持を受けるアンジュルム。昨年までの数年、メンバーの卒業と加入が相次いだが、今年は10人体制で安定。秋は31枚目のシングル『悔しいわ/Piece of Peace~しあわせのパズル~』のリリースに日本武道館コンサートと続く。若手組の2人の“リン”、橋迫鈴と川名凜に聞いた。

グループ通話でアドバイスをもらってました

――グループに同じ名前のメンバーがいることは、多少意識しますか?

川名凜 もともと橋迫さんのニックネームが“りんちゃん”だったので。私は後から入って、“ケロンヌ”とか“ケロ”とか全然関係ないあだ名がついて、もはや自分の名前が“りん”なのを忘れています(笑)。

――橋迫さんは川名さんたち後輩3人が入ってから、ハッチャケるようになったと聞きます。

橋迫鈴 研修生の頃から仲良かった為永幸音ちゃんと素で話すようになって、見ていた先輩たちに「こういう子なんだ」とわかってもらえました。年の近い3人が入ってくれたのも嬉しかったです。

――川名さんは加入した頃、橋迫さんにどんな印象がありました?

川名 初めてたくさんしゃべったのが、加入したばかりの頃の撮影の帰りだったんです。外で歩きながら話していて、橋迫さんは今ほど声が大きくなくて、すごく耳を澄まして聞いていた記憶があります(笑)。

橋迫 私、静かだった?

川名 おしとやかなイメージ通りでした。でも、ちょっと経ってから、どんどん変わっていった感じがします。私はオーディションで一般から加入して、わからないことがたくさんあったのを、橋迫さんが全部教えてくださいました。同期3人と橋迫さんでグループ通話をして、「あそこはもっとこうしたほうがいいよ」とかアドバイスをいただいたり。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

優等生かと思ったら「焼肉定食」でギャップが(笑)

――橋迫さんの川名さんが入ってきたときの印象は?

橋迫 ケロも最初はおとなしいイメージでした。トロンボーンとか楽器が弾けるということで、優等生かと思っていたら、何か不思議な子という感じで。DVDマガジンで好きな四字熟語を「焼肉定食」と言っていたり(笑)、カエルが好きというのもギャップがありました。

――爬虫類好きの橋迫さんとカエル好きの川名さんで、合う部分もあったようですね。

川名 爬虫類を苦手な方も多いと思いますけど、私は大丈夫だから、少数派で合うみたいです。

――2人で爬虫類の動物園に行く企画で、大きなヘビを首に巻いたりもしていました。ああいうのは罰ゲームでやるものですが(笑)。

川名 むしろ嬉しかったです(笑)。怖いとは思わなくて、かわいくて。

橋迫 意外と平気なメンバーもいて、川村文乃さん、為永幸音ちゃんと昆虫食を食べにも行っています(笑)。

川名 私も一緒に食べに行ったとき、そこまで偏見はなかったんですけど、目の前に出されたら、ちょっと気持ち悪いなと思って(笑)。食べてもみても独特で、リピートはいいかなと(笑)。

――橋迫さんもトカゲやヘビを飼いつつ、エサにするコオロギが苦手とか(笑)。

橋迫 そうなんです。足の数が多くて動いているのがダメで、ゾワゾワします(笑)。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

首や頭の動きまできれいなんです

――橋迫さんと川名さんたち後輩3人の橋迫軍団は、自然にできたんですか?

橋迫 自分たちでは特に意識してなくて、最初はファンの方が名付けてくれました。先輩方も「橋迫軍団が好き」とか広言してくださって、自然と定着した感じです。

川名 もともと後輩組で話すことが多かったので、名前が付いただけというか。今も変わらず、よく話しています。

――川名さんはパフォーマンス面で橋迫さんから学んだこともありますか?

川名 すごく多いです。小さい頃から研修生としてやってらっしゃって、ダンスの細かいところも、橋迫さんを見てたくさん学びました。すごいのは首や頭、短い髪の動きまできれいなんです。

――橋迫さんはそこまで意識して踊っているんですか?

橋迫 無意識にやっていると思います。私のクセかもしれません。でも、髪は短く切ってから動くようになって、自分でも好きだったりします。

橋迫鈴(はしさこ・りん) 2005年10月6日生まれ、愛知県出身
橋迫鈴(はしさこ・りん) 2005年10月6日生まれ、愛知県出身

悔しい気持ちの先にどうしていくか

――『悔しいわ』は譜割りが難しそうですね。

川名 レコーディングでは口が回りませんでした(笑)。特にAメロは早口言葉みたいで。いつもは感情をどう込めるとか、意識することがたくさんありますけど、この曲に関しては、言えるか言えないか。そういうレベルだったので、頑張りましたけど、私に早口パートは来ませんでした(笑)。

橋迫 私も早口は苦手で、滑舌も自信なくて不安でした。でも、言葉が全部リズムにハマっていたので、噛みながらも逆に歌いやすかったです。

――歌詞に関しては、わかるところが多いですか?

橋迫 私はじゃんけんに負けても悔しいと思うくらい(笑)、負けず嫌いなので、この気持ちは共感できます。私はこの歌詞みたいに、悔しい感情をポジティブに受け止められなくて。こういう考え方もあるんだなと、思ったりもしました。

――<まだまだ大丈夫だし頑張れるってことさ>と歌っています。

川名 歌詞では大きな悔しさより、些細な悔しさが詰まっていて、全部わかるなと。悔しいと感じたその先に、どうしていくかまで寄り添ってくれる感じで、若い人の心に刺さりそうだなと思いました。

――川名さんはブログで「毎日誰かしらに悔しいって感情を抱いてる」と書いてました。

川名 橋迫さんに悔しいと思うこともあります。年齢的には私のほうが上ですけど、やっぱりパフォーマンスがカッコ良くて。さっき、「無意識」ということでしたよね。元からのセンスが光っていると思うんです。私は意識しないとできないから、悔しさと尊敬が同時に出てきます。

橋迫 私から見たら、ケロは表情がいいんです。私はいつも表情で苦戦するので、すごいなと思っています。

川名 たまに「ここは絶対映る」というときは表情を意識しますけど、それ以外はあまり考えてないかもしれません。

橋迫 それこそセンスだと思います。

川名凜(かわな・りん) 2003年12月6日生まれ、千葉県出身
川名凜(かわな・りん) 2003年12月6日生まれ、千葉県出身

大人っぽい方が同い年だと不安になります(笑)

――橋迫さんは研修生時代、同期のデビューが相次いだときは、悔しさは大きかったですか?

橋迫 同期の中で私がデビューは最後になったので、悔しかったです。後輩も先にデビューして、焦りもありました。

――最近はそういうことはないですか?

橋迫 平山遊季ちゃんが入ってすぐ、直前に卒業された笠原桃奈さんのソロパートをまるまる受け継いで。ちょっと悔しい気持ちはありました。

――自炊で料理を始めたそうですが、うまく作れなくて悔しいとかは?

橋迫 それはないですね。失敗しても良さだと思っちゃいます。パスタがちょっと焦げても「私は焦げたほうが好きだし」とか(笑)。

――<あのモデルと実は同い年だった>みたいなこともありますか?

橋迫 メンバー同士で、他のグループのアイドルさんやアーティストさんのことを、「この方は○歳なんだ」みたいな話は結構します。

川名 韓国のアイドルさんとか、すごく大人っぽい方が同い年だったりすると「私は大丈夫かな」と不安になります(笑)。

――橋迫さんのパートで<史上最高額の宝くじに当たるとか>とありますが、本当に10億円が当たったら、どうします?

橋迫 家を買いたいです。ツリーハウスみたいな家に動物たちと住みたくて(笑)。

川名 私はお金をたくさんもらっても、たぶんロクなことに使わないので(笑)。家族にあげるか、貯金するか、寄付をします。

アップフロントエージェンシー提供
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白黒衣装とネオンに映えるメイクと髪形を考えました

――MVでは川名さんが冒頭で、両手を広げてセンターに出てきます。

川名 ああいう振付にしていただいて、完成したMVを観たら、ドーンという感じになっていて。カッコいいなと思いました(笑)。

――ビリヤードをやるシーンもありました。初めてだったんですか?

川名 橋迫軍団で遊びに行ったとき、一度やりました。卓球台とかローラースケートとかいろいろある施設でビリヤードもあって、ルールもわからないまま、とりあえずやってみたんです。それ以来で、キューの持ち方からその場で教わりました。

――橋迫さんはバスケゲームをやって、シュートを決めていました。

橋迫 あそこは何回かやって入りました。バスケは研修生になる前、いちおう半年だけ部活でやっていたんです。試合まで経験していませんけど、やるのは好きです。

――メイクは全員カッチリしていた感じで。

川名 衣装が白と黒で背景がネオンだったので、メンバーごとにメイクやネイルで色を足したり、みんな意識していたと思います。

橋迫 私は普段と全然違いました。明るめの赤のリップを塗って反射させたくて、MVでちゃんと映えていたので良かったです。

川名 私もまずメイクを強くしたくて、それなら髪形でも個性を出そうと。

――三つ編みのツインテールみたいな髪形でした。

川名 衣装的に髪を下ろすと重たい印象になるから、上げたかったんです。でも、私は撮影の最後に入ったので、もう他のメンバーがいろいろな髪形にしていて。被らないように消去法でああなったんですけど、ネオンの感じとマッチしました。

――髪形は自分で決めたんですね。

川名 そうです。メンバーそれぞれ、やりたい髪形にしていたと思います。

アップフロントエージェンシー提供
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コンサートでバラードも歌って魅力を広げられたら

――両A面のもう1曲『Piece of Peace~しあわせのパズル~』のMVでは、2人のペアでのシーンがありました。歌詞の通り、補い合ってる感じですか?

川名 というより、アンジュルムの個性的なメンバーたちの中で、橋迫さんとは特に似てるなと思うことが多いです。ふとしたときに、同じことを考えていたり。

橋迫 そうだね。常にいろいろなことを考えていて、話題がコロコロ変わったり(笑)。

――歌唱シーンは風がだいぶ強い中で撮ったようで。

橋迫 そうなんです。

川名 2日に分けて撮影したんですけど、1日目は雨が降ったり止んだりで、土砂降りになって撮り切れなくて。そしたら、2日目はあからさまな強風(笑)。髪が一番大変で、ピンをたくさん付けて撮りながら、5分に1回くらいメイクさんに入ってもらってました。

――アンジュルムには珍しいバラードですが、普段はこういう曲も聴くんですか?

橋迫 私はアップテンポのほうが、気分が上がって好きです。でも、1回ハマったらその曲ばかり聴いて、すぐ飽きてしまうので(笑)、本当に幅広いです。いきなりディズニーの音楽を聴こうと思ったり、運動会のBGMを聴きたくなったり(笑)。

川名 私もアップテンポな曲が好きだったんですけど、バラードも歌詞の意味をよく考えて、好みになってきました。アンジュルムは元気な曲が多いので、コンサートでこういうバラードも歌ったら、もっといろいろな方向から魅力を伝えられると思います。

――ソロパートも歌い甲斐がありそうですね。

川名 アンジュルムの他の楽曲と比べると落ち着いて歌えて、ダンスも激しくないから、聴いてもらう意識は強いかもしれません。

橋迫 メロディがゆっくりなので、歌詞がスッと入ってきます。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

10人組で変わらなかった分の進化を見せます

――前回の取材では、伊勢鈴蘭さんが「グループの真ん中の代として橋迫鈴ちゃんと話すことが多い」と言ってました。今のアンジュルムは「先輩たちの強さと若い子たちのパフォーマンスがいいバランス」とのことでしたが、<補い合って認め合って>に通じるのかなと。

橋迫 メンバーの個性がすごく出ていて、変動がないのも大きくて。今は安定感があります。

――そういえば、今年はメンバーの卒業がありませんでした。

川名 グループ全員、仲が良くて、その風通しの良さがパフォーマンスに繋がっていると思います。楽しんで活動している姿をファンの方にお見せするのは、大事なので。仲良しこよしでなくて、良いものをお届けすることには、みんな真剣に取り組んでいます。私たちは今のアンジュルムを作ってくださった先輩方を間近で見ているので、これからも続いていく歴史を受け継いでいきたいです。

――11月30日には、今年二度目の日本武道館公演が開催されます。

川名 2022年はメンバーが1人も変わらず10人で活動できて、その分、1年前より進化したアンジュルムをお見せできたら。私たちはまだ後輩メンバーですけど、加入してから2年経つので、頼られる存在になっていきたいです。

橋迫 それが終わったら、クリスマスにはメンバーみんなにお菓子を配りたいです(笑)。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

アンジュルム

2009年4月にハロー!プロジェクトの研修生メンバーでスマイレージとして結成。2010年5月に『夢見る15歳』でメジャーデビューし、同年の日本レコード大賞で最優秀新人賞。2014年10月にアンジュルムに改名。フランス語のange(天使)とlarme(涙)を組み合わせた造語。現在のメンバーは10人。11月30日に日本武道館で単独ライブ「アンジュルム concert 2022 autumn final ANGEL SMILE」を開催。

アップフロントエージェンシー提供
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『悔しいわ/Piece of Peace~しあわせのパズル~』

10月19日発売

初回生産限定盤A・B(CD+BD) 2090円(税込)

初回生産限定盤SP(CD+BD) 3850円(税込)

通常盤A・B(CD+トレーディングカード) 1200円(税込)

通常盤A
通常盤A

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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