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『妖怪シェアハウス』が映画化。小芝風花の“欲”と10年間続けてきたこと

斉藤貴志芸能ライター/編集者
撮影/松下茜

小芝風花が主演する『妖怪シェアハウス』が1年半ぶりのドラマ続編に続き、映画版が公開される。どん底に落ちた主人公が4人の妖怪とシェアハウスで暮らし、様々な騒動に巻き込まれるホラーコメディー。もともと小芝にとっては民放連ドラ初主演作だったが、その後も多くの作品で大役を務め、今や若手トップ女優の一角に。節目の25歳を迎え、この作品と自身の足跡について思うことは?

驚いた顔は素直に出たままです(笑)

――『妖怪シェアハウス-帰ってきたん怪-』では、風花さんのオーバーアクションな叫びや驚きの表情も楽しいです(笑)。

小芝 演じている目黒澪ちゃんは基本ビビリなので、驚くことが多いですね。オーバーにしているというより、素直に驚いたままを出している感じです。私も普段から表情豊かなほうだと思いますので。白目をむくのは監督の指示ですけど(笑)。

――そういう崩した顔をするのに抵抗もなく?

小芝 全然ないです。今回の1話の餓鬼の格好も楽しくて、ノリノリでやっていました(笑)。

――ドラマの続編と映画版を撮るに当たって、改めて前作を観たりもしたんですか?

小芝 全話観ました。面白くて、あっという間に観終わった感じです。特に個人的に好きだった6話のヤマンバギャルの回は、やっぱり最高でした。その中で、澪の声の出し方やテンションを思い出しました。

――1年半前の澪のテンションには、すぐ戻れたんですか?

小芝 私もそこは心配だったんですけど、戻れました。本読みのとき、座敷童子役の(池谷)のぶえさんの「むかーし、むかし」というナレーションを聞いた瞬間、「あっ、これだ!」と。前作は悪い人たちにダマされていたのが、今回は闇落ちした妖怪さんたちが悪さをするお話に変わりましたけど、澪は澪のままで帰ってきたかったんです。

リアクションを返すのが楽しくて

――1年半前と比べて、風花さん自身が変わったところはありますか?

小芝 あまり変わってないと思います。シェアハウスのメンバーとの会話も昔とまったく一緒で、食べ物のことばかり(笑)。私も相変わらずお肉やフライドポテトや揚げ物系が好きです。

――前作は風花さんの民放連ドラ初主演でしたが、その後も1年半の間にたくさんの作品に出演されて、役幅の広さも感じました。風花さんの中では、得意な役柄や難しい役柄はあるんですか?

小芝 澪のような表情豊かな役は、たくさんいただいていることもあって、演じやすいかもです。いろいろな相手の台詞や表情に反応してリアクションを返すのが楽しくて。逆に、あまり演じたことがないクールな役は、少ない表情で表現するのが難しく感じます。

――どんな作品で、そう感じました?

小芝 『モコミ~彼女ちょっとヘンだけど~』ですね。言葉数が少なくて、自分の世界の中で生きている感じで、微妙な表情でどう表現するか。コメディ作品とは全然違いました。

欲があるから成長できると思います

――『映画 妖怪シェアハウス―白馬の王子様じゃないん怪―』の劇中では、AIとの恋愛が流行しています。現実でも乙女ゲームのキャラクターに夢中になる人はいますが、風花さんにはわかる感覚ですか?

小芝 私にはないかも(笑)。昔、携帯でそういうアプリをダウンロードしたことはありますけど、長続きしませんでした。毎日ログインしないといけないのが苦手みたいで。マンガを読んだりするのは好きですけど、リアルにキャラクターに恋することはないですね。

――映画のクライマックスシーンは緊迫感がありました。

小芝 現場でも「本当に『妖怪シェアハウス』を撮っているのかな?」と思うくらい(笑)、緊張感がありました。あのシーンはすごく長くて、3ヵ所で3日間にわたって撮影したんです。感情を持続するのが体力的にも精神的にも大変でした。

――シリアスな長台詞もあって。

小芝 仲間や自分の夢を守るために、大好きな人と対峙しないといけなくて、すごく苦しい状況でした。でも、澪の気持ちになると、感情的には入りやすかったです。

――「欲望がなければ幸せになれる」と言う相手に、「欲望だらけで何が悪い!」と反論するのは、共感しました?

小芝 私も欲はあったほうがいいと思います。自分自身、もっとお芝居が上手になりたいから頑張れるし、欲があって成長できていると感じるので。欲がなくなったら、向上心もなくなる気がします。

気づかないうちに天狗にならないように

――風花さんが持つ欲は、お芝居に関すること?

小芝 こんな作品に出たい、とかですね。陽な役が多いので、陰な役も演じたいです。怖い役、悪い役、猟奇的な役は、今まであまりなかったので。そういうブラックな役だったり、人間のドロッとした汚い部分が出る作品に挑戦してみたい、というのはあります。

――物欲はあまりないですか?

小芝 いえ、あります。お洋服をすごく買ってしまうので、どうしようかと思って(笑)。高いものは買いませんけど、安いとついつい買いがちで、失敗も多いんです。ネット通販では、もっと慎重にならないと。本当にこれを着たいのか、自問自答してから買うようにしたいです(笑)。

――ネット通販だとポチッとしがち?

小芝 セールという文字に弱いんです(笑)。「○%引き」とか出ていると「今だ!」と買ってしまって。商品が届いて「丈が、サイズ感が……」となることがよくあります(笑)。

――澪は作家として「1回くらい売れたい」と言ってました。風花さんはすでに女優として大活躍ですが、さらに売れたいという欲は……。

小芝 ありますよ。だって、キャスティングしていただくには、もっと皆さんに知られてないといけなくて。知っていただくためには、もっと売れないとダメなので、頑張りたいです。

――なるほど。それにしても風花さんって、自分たちは取材でお会いするだけの印象ですが、売れてからも変わらないですよね。

小芝 天狗にならないように気をつけています。人って自分で気づかないうちに変わると聞くので。「あいつ変わったな。調子に乗ってるな」と思われたくないから、「私がそうなりそうだったら言ってください」と、周りの信用できる方や家族にお願いしています。

アドリブへの恐れがなくなりました

――他に、映画版の撮影で印象的なことはありますか?

小芝 座敷童子と酒呑童子の闇落ちがめちゃめちゃ面白かったのと、お岩さんの闇落ちがめちゃめちゃ怖かったです(笑)。一番ホラーなところではないかと。でも、シェアハウスのメンバーの闇落ち部分の撮影はすごく楽しかったです。面白さと恐怖とくだらなさと(笑)、いろいろなものが詰まっていました。あと、澪はテレパシー以外でも白目をむくシーンがあって。大きなスクリーンで白目がドン、ドンと来るのはワクワクします(笑)。

――この『妖怪シェアハウス』のシリーズを通じて、風花さんが身に付けたものはありますか?

小芝 芸達者でお芝居の上手な先輩方ばかりで、勉強になることがすごく多かったです。私はアドリブが苦手だったんですけど、皆さんがいっぱい入れてきて、特に大倉(孝二)さんが多くて(笑)。それを楽しめるようになったのは、この作品のおかげです。無理に面白いことをするのでなく、掛け合いの中で自然に入ってくるのを、恐れなくなりました。

――風花さんがアドリブを入れることも?

小芝 本当に自然なもので、「こういう台詞を入れました」というわけではなくて。台本に書かれていない会話の間で仕掛けてこられたら、ちょっと返して台詞に戻るとか、そういう感じでした。

20歳で立てた目標は予想以上に叶いました

――4月で25歳を迎えました。節目感はありますか?

小芝 あります。20歳のとき、先のわからない世界でやっていくうえで、とりあえず25歳までの目標を書いたことがあるんです。それからもう5年が経ったのは早いなと思ったのと、新たに30歳までの目標を立てないといけないなと。

――25歳までの目標はどんなことだったんですか?

小芝 主演をしたい、ドラマに何本出たいとか、そういうことです。

――では、叶ったわけですね。

小芝 コロナ禍で叶えられなかった年もありましたけど、こんなに主演を務めさせていただけるとは、20歳のときには思っていませんでした。想像していたより大きな役を任せていただけるようになって、嬉しいです。

――何か努力したことが実を結んだ感覚もありますか?

小芝 現場で自分もなるべく楽しくお仕事をしたいし、私とお仕事をしていただいた方にも「今日は楽しかったな」と思ってもらえたら、なお嬉しいなと。「また一緒に仕事をしたい」と思ってもらうために、期待された以上のお芝居で返すことを心掛けてきました。それがデビューから10年かけて少しずつ、広がってきたのは感じています。「もう1回違う役で見てみたい」と、以前お世話になった監督に声を掛けていただく機会も増えてきました。マイペースの小さな歩幅ですけど、この10年ちゃんと歩いてきたとは思っています。

縮こまらずに楽しいことをしたいです

――以前、『踊る!さんま御殿!!』で「25歳になって恋愛解禁になるのが楽しみ」という発言もありました。

小芝 25歳になって、そればかり聞かれます(笑)。25歳が楽しみだったのは、恋愛解禁になるからだけではありません(笑)。自分の中ではいい節目という感じです。

――単純に、誕生日はまだ嬉しいものですか?

小芝 そうですね。23歳、24歳……と何とも思わなかったんですけど、キリがいい年の誕生日は久々にワクワクしました(笑)。

――ひとつ年を取ってしまうのか……みたいなことは、まだなく?

小芝 今のところ、ないです。30代になるのも楽しみなので。周りの30代の女性で「すごく楽しい」と言っている人が多いです。

――それで、30歳までにはどんなことを目標にしようと?

小芝 まだ考えていません。でも、もっと自分で責任を取れるようになりたいです。かと言って、周りの目ばかり気にして縮こまっているよりは、楽しいことをもっとしたいです。

――仕事以外でもやりたいことがあるんですね。

小芝 もっと旅行に行きたいです。この前、家族で温泉に行ったんですけど、めっちゃ楽しくて! ごはんを食べに行くことはあっても、泊まりの旅行は今まであまりしたことがなかったんです。そういう思い出を家族や友だちといっぱい作りたいと、改めて思いました。

撮影/松下茜

小芝風花(こしば・ふうか)

1997年4月16日生まれ、大阪府出身。

「ガールズオーディション2011」でグランプリ。2012年にドラマ『息もできない夏』で女優デビュー。2014年に『魔女の宅急便』で映画デビューと初主演。主な出演作はドラマ『あさが来た』、『トクサツガガガ』、『美食探偵 明智五郎』、『モコミ~彼女ちょっとヘンだけど~』、『彼女はキレイだった』、映画『天使のいる図書館』、『文福茶釜』、舞台『オーランドー』ほか。ドラマ『妖怪シェアハウス-帰ってきたん怪-』(テレビ朝日系)に出演中。6月17日公開の『映画 妖怪シェアハウス―白馬の王子様じゃないん怪―』、今秋公開の『貞子DX』、来秋公開予定の『Lady Kaga』に主演。

土曜ナイトドラマ『妖怪シェアハウス-帰ってきたん怪-』

テレビ朝日系/土曜23:00~

公式HP

テレビ朝日提供
テレビ朝日提供

『映画 妖怪シェアハウス―白馬の王子様じゃないん怪―』

6月17日公開

公式HP

(C)2022映画「妖怪シェアハウス」製作委員会
(C)2022映画「妖怪シェアハウス」製作委員会

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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