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大友花恋が22歳の過渡期にコメディ舞台。アメリカ人CA役に「バラエティで学んだことをヒントにします」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
撮影/松下茜

ドラマや映画に加え、バラエティ出演も多い大友花恋。60年代から世界でたびたび再演されてきた舞台『ボーイング・ボーイング』に出演する。3人の美女とつき合うモテ男が鉢合わせのピンチを迎えるコメディで、恋人の1人のアメリカ人キャビン・アテンダント役。22歳になり、演技に余裕ができたのと裏腹に悩みも増えたという大友が、この舞台に「ゼロから挑戦する気持ち」で臨む理由は?

トークのためにコミュニケーションの本を読んでます

――最近は女優業以外にバラエティ出演がますます増えたり、名古屋ウィメンズマラソンのオフィシャルサポートランナーを務めたりしていますが、幅広くやっていく意向なんですか?

大友 そうですね。とにかくいただいたお仕事に全力で挑戦してきて、気づくといろいろな経験をさせていただいていました。

――バラエティの仕事はもともと好きだったんですか?

大友 おしゃべりが好きで愉快な性格なので(笑)、芸人さんのやり取りを近くで見られるのはすごく嬉しいです。バラエティに出させていただくと緊張して、「花恋ちゃんはどう?」と振られるとドキッとしてしまうのですが、徐々に楽しめるようになった気がします。

――最近だと、『発見!タカトシランド』の大雪の札幌ロケでも、トシさんとのやり取りが弾んでいました。トーク力はどう磨いてきたんですか?

大友 『王様のブランチ』に出演が決まったとき、コミュニケーションについて書かれた本を買いました。今でもたまに読み返しています。読んで「ふーん。なるほど」と思っても、いざ収録が始まるとそれどころではなくて、結局あまり意識できていないかもしれません。でも、バラエティは小さい頃から好きで観ていたので、視聴者の方に「楽しい」と感じていただける感覚が、自分にも染み付いているんだと思います。

――『タカトシランド』ではチーズなどの食レポも絶妙でした。

大友 普段の食事から、口にしたときにどんな味がするか、どう伝えたらおいしそうに感じてもらえるか、意識してアンテナを張るようになりました。

――東京シティ競馬のCMにも出演されて、日本テレビ前とかの巨大看板にも写っています。

大友 ボーッと歩いていると看板が現れるので、自分でもビックリします(笑)。記念に写真も撮ったものの、「私がいたよ」と人に見せるのも恥ずかしいので、どうしようかと(笑)。

役の気持ちを連れてくることを体感できて

――『ボーイング・ボーイング』に出演が決まりましたが、舞台は事務所主催の『大きな虹のあとで~不動四兄弟~』以来、5年ぶりになりますね。

大友 『にじあと』は演出家さんも共演者もお互い知っている関係だったから、家族といるような安心感がありました。今回は皆さんと初めましてで、会場も前回より広いので、新たな挑戦になると思います。

――また舞台をやりたい気持ちはあったんですか?

大友 ありました。お芝居を始めたばかりの頃はガムシャラにやるしかなくて、余裕があまりなかったんです。最近は以前より周りが見られるようになった分、自由にお芝居をできなくなった気がしていて。

――余裕があるほうが、自由にお芝居できるわけではないですか?

大友 昔は周りを気にせず自由にできていたのが、今は必要はないのに、いろいろと難しく考えてしまって、「これで良いのかな?」と悩むことが多くなりました。だから、舞台というジャンルのお芝居に、ゼロから新鮮な気持ちで挑戦できることは、すごくありがたいです。

――『にじあと』のときにも手応えはありましたか?

大友 とても楽しかったです。ドラマや映画との一番の違いは、目の前にお客さんがいることと、流れでお芝居ができること。自分の感情を使って役の気持ちを連れてくることを体感しやすくて、「お芝居ってこういうものかも」と発見できました。

舞台を観ているだけで緊張してしまって(笑)

――最近でも舞台を観には行ってました?

大友 何度か行きました。『ボーイング・ボーイング』の出演が決まってからも、規模が同じくらいの舞台を観ました。ずっと『ボーイング・ボーイング』のことがうっすら頭にあったので、観ているだけなのに緊張してしまって(笑)。自分に置き換えて「こんな感じなんだ」と考えていたら、終わったあと、全身に力が入っていたことに気がつきました(笑)。

――本当に真面目なんですね。『ボーイング・ボーイング』の昔の舞台の映像を観たりは?

大友 映画を観させていただきました。コミカルでポップで、状況もセットも登場人物の気持ちもシンプルで、楽しかったです。こういう作品だからこそ、長い間、何度もリバイバルされてきたんだとわかりました。どの時代でも世界中の人に楽しまれてきた雰囲気を、私たちも作ることができたらいいなと思います。

――今回の台本も面白いですか?

大友 台本を読むだけで笑ってしまうところが、いっぱいありました。モテ男が3人も彼女がいることをどう隠し通すか、そのアタフタ感が面白かったです。「よくこんなに器用なことができるな」って(笑)。これを舞台のプロである先輩方と演じたらどうなるんだろうと、今からワクワクしています。

――一方で、コメディは演じるうえでは難しさもないですか?

大友 難しいですね。私はコメディをしっかり演じたことがないので、笑いの間やわかりやすい身体表現は新たな挑戦になります。ここ数年、たくさんのバラエティの現場で芸人さんたちとご一緒させていただいたので、ヒントにできたらいいなと思っています。

信念を持って道を切り拓くのは憧れます

――舞台の公式HPなどで、役のCA衣装で外ハネの髪の写真が上がっています。

大友 小さい頃はCAさんに憧れていて、小学2年生のときに作文に書いていたくらいなので、制服を着られるのは嬉しいです。それと、物語の舞台が1960年代で、私が演じるジャネットはアメリカ人。時代も国も超えた役ができることも、楽しみのひとつです。

――ジャネットのキャラクターは、どうイメージしていますか?

大友 天真爛漫で自由奔放です。舞台ということで、体を大きく使ったお芝居の仕方を、演出の三枝(孝臣)さんに聞いてみたいです。「アメリカでは女性のほうが強いんだから」という台詞があったり、自分で道を切り拓く信念を持っているところも気持ち良くて。まっすぐで、とても好きな役です。

――そこは花恋さんにもある部分ですか?

大友 私は自ら前へ、上へと突き進めないので、憧れのほうが強いです。だからこそ、そういう女性を演じられる嬉しさがあります。

ミックスゾーン提供
ミックスゾーン提供

体を上手く使えるようにバレエを始めました

――この取材日時点では稽古に入る前ですが、事前に準備していることはありますか?

大友 舞台に繋がるかわかりませんが、私はダンスや体操系が得意ではなくて。自分の体を上手に使えないので、バレエを習い始めました。ずっと習ってみたくて、今がそのタイミングじゃないかと。少しでも舞台に活かすことができたらいいなと思っています。

――初心者クラスみたいなところに入ったんですか?

大友 超入門クラスです。番号が付いた足のポジションから教えてもらっています。1時間半のレッスンで、ほとんどはストレッチで終わってしまうんです(笑)。それくらい初心者で、まだまだ道のりは長いですけれど、体が柔らかいことだけは誉められます。

――180度開脚もできたり?

大友 できます! ドラマの『チア☆ダン』をきっかけにストレッチを始めてから、ずっと体の柔軟性を維持してきました。でも、筋肉が足りていないので、力が必要なところでは、1人であたふたしてしまいます(笑)。

――参考に観た作品はないですか?

大友 今のところはなくて、自分の好きな映画を観ています。ただ、そう言われると最近はコメディ系の作品が多いなと、今気がつきました。

――キャストの顔合わせ前にしたことはありますか?

大友 コミュニケーションを大切にしたいので、同じCA役でご一緒する飯窪春菜さん、愛加あゆさんの過去のインタビューを読ませていただいたり、お2人のSNSを追い掛けています。早く仲良くなりたい気持ちがあります。

知識が増えた分、かえってわからなくなることも

――公開中の映画『今はちょっと、ついてないだけ』では、深川麻衣さんが演じた美容師の胸の内を聞く役で、胡散臭さを出していました(笑)。

大友 強烈な女の子でしたね(笑)。どこまで胡散臭さを出すか、どこまでピュアさを出すか。台本上ではどちらに振ることもできたので、ニュアンスが難しかったです。ひとまずやってみて、監督と「このくらいですか?」「もうちょっとかな」と相談しながら、作り上げていきました。

――インパクトのある役になりました。

大友 シーンの中で、途中から流れが変わるんです。助けてあげたいだけの想いから、雰囲気が変わるポイントを意識しました。

――あと、少し前にテレビで『恋仲』の再放送が流れていて。7年前のドラマで、花恋さんは入院している高校生の役でした。

大友 今の時代、配信で昔のドラマを全話観ることもできるので、『こえ恋』や『恋仲』の話をしてもらえて、不思議でもあり、ありがたいです。でも、不意に自分の昔の映像が流れてくると、恥ずかしくなって止めてしまいます(笑)。

――その頃より、当然ながら女優として大きく成長しましたよね?

大友 知識は増えました。シーンごとの対応の仕方や声の出し方などは、わかるようになったと思います。その分、先ほどお話しした通り、頭でっかちになってしまって。昔はもっと自由に役の気持ちになれていたはずなのに、今は「こうすればこう見える」とか「ここは相手を見せるシーンだから、自分が出すぎると邪魔になる」とか複雑に考えてしまって、かえってわからなくなることもあります。だからか、昔より今のほうが現場に行くのに緊張します。

――たぶん今は過渡期で、ここを乗り越えたら、大きなステップアップになるのかも。

大友 ひとつレベルが上がっていたらいいなと思います。

よりロジカルな考え方になっています

――作品に入るときの準備の仕方は変わりました?

大友 台本の読み方は変わったと思います。ただ台詞を覚えるだけでなく、このシーンでは何を見せたいのか。この台詞にどう感情をぶつけたらいいのか。よりロジカルな考え方になってきました。

――ここ数年で、自分にとって特に大きかった作品というと?

大友 『35歳の少女』の林田藤子役はとても印象に残っています。橋本愛さんが演じた女性と、1人の男性を巡ってマウントを取り合って。パッと見はゆるふわ女子なのに、たまにチクリと刺すという、演じたことのなかった役で、いろいろな反響をいただきました。

――橋本愛さんと取っ組み合いのケンカをするシーンもありました。

大友 ありましたね。すごく緊張しました。でも、アクション部の方が動き方をていねいに教えてくださったので、楽しめました。

――先ほどコメディの話が出ましたが、それに限らず、映画やドラマはよく観ているんですか?

大友 私はドラマが大好きなので、曜日ごとに観る暮らしをしています。

――TVerとかでなく、昔ながらの観方で。

大友 そうなんです。毎日決まった時間に観るのが楽しいです。

電子マネーのオートチャージで大人になったなと(笑)

――花恋さんは現在22歳で、『タカトシランド』の食レポでは、チーズを「お酒と合いそう」とも話してました。嗜むようになったんですか?

大友 コーヒーや紅茶と同じように好きです。いつかは1人でお酒を嗜める大人になれたらいいなと思います。

――20歳を過ぎてから、大人になったことを実感するのはどんなときですか?

大友 最近、人生で初めてクレジットカードを作りました。電子マネーをオートチャージできるようになって、私も大人になったな……と感じます(笑)。

――最近まで、クレジットカードを持ってなかったんですね?

大友 遅いですよね(笑)。みんなに「何で作らないの?」とずっと言われて、「きっかけがないんだよね」と話していました。でも、きっかけは自分で作らなくちゃと、この半年くらいで思い立ちました。

お芝居をまた純粋に楽しんで進化できたら

――4月になって、学生さんみたいに新学期になるわけではありませんが、何か新たに始めようとは?

大友 周りが大学を卒業した年で、中学時代の友人が社会人になったとも聞きました。私も何かを変えたいと思って、髪の毛を少し染めました。

――そのようですね。

大友 役のためではないんです。でも、派手すぎたかなと思ってしまって。まだ染めて4日目ですけど、明日染め直しに行きます(笑)。だから、今日の写真は貴重です。

――でも、「派手すぎ」ということもないのでは?

大友 マネージャーさんたちにも「思い切り明るくしていいよ」と言われました。でも、私にしては派手というか……。ちょっと恥ずかしくなってしまいました(笑)。

――差し当たり、『ボーイング・ボーイング』の稽古に集中ですか?

大友 今は舞台のことで頭がいっぱいです。新しいお芝居への向き合い方を学んで、ピュアな楽しみ方をもう一度見つけて、進化できたらいいなと思っています。

撮影/松下茜

Proflie

大友花恋(おおとも・かれん)

1999年10月9日生まれ、群馬県出身。

2012年に女優デビュー。主な出演作はドラマ『チア☆ダン』、『あなたの番です』、『新米姉妹のふたりごはん』、『初情事まであと1時間』、映画『案山子とラケット~亜季と珠子の夏休み~』、『君の膵臓をたべたい』など。映画『今はちょっと、ついてないだけ』が公開中。

『ボーイング・ボーイング』

作:マルク・カモレッティ 演出:三枝孝臣 

出演:福田悠太(ふぉ~ゆ~)、室龍太、大友花恋、飯窪春菜、愛加あゆ、松本明子

5月14日~29日/自由劇場 6月3日~5日/京都劇場

公式HP

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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