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『ゴシップ』の書籍編集役で目を引く一ノ瀬颯 「戦隊ヒーロー出身の他の人たちに負けたくないです」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
撮影/河野英喜

クライマックスに入るドラマ『ゴシップ #彼女が知りたい本当の○○』に出演中の一ノ瀬颯。黒木華が演じる主人公らのネットニュース編集部を、様子見している書籍編集部員の役。次回9話ではストーリーに大きく絡んでいくという。『騎士竜戦隊リュウソウジャー』で主演デビュー後、着実に出演作を重ね、今回はクールなイケメンぶりで目を引くが、『王様のブランチ』などではフランクな姿も見せている。どんな役者を目指していくのか?

余裕があるように見せないといけなくて

――出演作が続いていますが、『リュウソウジャー』以降で自分にとって大きかった役はありますか?

一ノ瀬 ひとつひとつの役が全然違って、今回の『ゴシップ』のように年齢などは等身大に近い役もあれば、『麒麟がくる』の将軍のような現実とかけ離れた役もあって。かけ離れているほど自分で作れるところはありますけど、それぞれの役から学ぶことはたくさんありました。

――大雑把に二枚目な役とくだけた役という分け方をすると、どちらがやりやすいですか?

一ノ瀬 僕自身が結構ふざけた人間なので(笑)、遊び甲斐があったり自由度が高い役のほうが、やりやすさはあります。『ゴシップ』の矢部は冷静で、しゃべるときも余裕がないといけなくて、難しさを感じています。

――話し方から意識しているんですね。

一ノ瀬 落ち着いて話すようにはしています。ただ、表面的なことを意識しすぎると、わざとらしくなるかなとも思うので、どちらかというと内面を大事に、全体的に余裕がある人物像を作っています。共演しているのが実力のある方々ばかりで、僕はただでさえ緊張しぃだから、どうしても気圧されがちで。そこを抑えて、さらに余裕を見せないといけない分、自分の幅が必要な役です。

役の人生を想像して年表を作りました

『ゴシップ #彼女が知りたい本当の○○』(フジテレビ系)の舞台は、大手出版社「クスノキ出版」が運営するニュースサイト「カンフルNEWS」の編集部。主人公の瀬古凛々子(黒木華)が編集長を務めている。一ノ瀬が演じる矢部涼介は書籍編集部の編集者で、カンフルNEWS編集部員の一本真琴(石井杏奈)の同期。

――矢部はコネ入社のボンボンという役どころですが、人物像をどう掘り下げました?

一ノ瀬 コネ入社ではあるけど、仕事はある程度できる設定でやらせてもらっています。真琴からは「いいな」と思われる立場でもあるので。ボンボンというと、お金持ちでふんぞり返って人を見下すとか、いいイメージではないですよね。でも、矢部には嫌味っぽさはなくて。コネ入社を隠さず「何が悪いの?」みたいな感じで、人との接し方に問題はない。ボンボンらしさはありつつ、嫌われてはいないあんばいを探しながら、演じています。

――劇中に出てない矢部の背景についても考えました? たとえば、どんな学生時代を送ってきたとか。

一ノ瀬 想像で軽く年表みたいなものは作りました。そこは自分で作り放題なので、遊び感覚で過去の経験を考えていって。コネ入社できるくらい親の力があるので、恵まれた環境でモノに不自由せず、教育も十分に受けてきたんだろうなと。スペックも人より高めで、人生イージーモードでやれてきたのかなと想像しました。

人にやさしくするのは両親に教えられました

――一ノ瀬さんにも、ボンボンとは違うにせよ、育ちの良さを感じます。

一ノ瀬 本当ですか? 当たり前のことですけど人にやさしくするとか、道徳的なものは全部、両親に教えられて生きてきました。家族仲は良くて、小さい頃はクリスマスとかはみんなでごはんを食べたり、初詣も一緒に行ったりしていました。

――一ノ瀬さんは勉強も頑張っていたんですよね。それもご両親からの教えだったんですか?

一ノ瀬 勉強は最初は嫌いだったのを、親に言われてやってましたけど、ある程度まで行くと、やらないと自分が気持ち悪くなったんです。気づいたら生活の一部として、やるのが当たり前の習慣になっていました。

――矢部は真琴に「出世するには」という話をすることもあります。あれは本音なんでしょうか?

一ノ瀬 自分の気持ちをそこまで表に出さない人間で、傍から見ると気楽なおぼっちゃんに映るかもしれませんけど、本人の中では意外と、出世欲も悔しさも持ち合わせていると思います。

――一ノ瀬さん自身と重ねられるところもありますか?

一ノ瀬 戦隊や(仮面)ライダーを近い時期にやっていた人たちとはスタートが同じで、そういう人たちが活躍されていると「負けられない」とか、歴代のそうそうたる先輩たちに早く追い付きたいとは、常に思っています。ちゃんと実力を付けて、俳優として認められたい。そこは矢部に似ていると思います。僕もあまり表には出しませんけど。

――矢部と真琴の関係については、どう捉えていますか?

一ノ瀬 1話から、友だちに「いい感じのカップルだね」と言われてしまって。確かに2人でいることが多いし、ごはんに誘うし、真琴も嫌がってはいない感じですけど、ただの同期なんですよね。仲は良くても恋人までは行ってない関係です。

ボンボン役ではどんな熱の入れ方がいいのか

――9話では書籍編集部とカンフルNEWSの攻防があるようですが、矢部も関わるんですか?

一ノ瀬 結構ガッツリ関わります。カンフルNEWSをかき乱していて。書籍編集部での仕事ぶりや直属の上司との関わりも描かれていたり、矢部のいろいろな面を見てもらえると思います。

――確かに、これまでは矢部が編集の仕事をしている場面はなかったですね。

一ノ瀬 そうですね。最初は真琴と2人で会っていて、カンフルNEWSにちょくちょく顔を出すようになって、気づいたら何となくいるくらいの描かれ方でした。

――その中でも、さっき出た年表の一環で、書籍編集の仕事についてもリサーチしたんですか?

一ノ瀬 できる範囲で調べて想像しました。でも難しいのが、矢部のボンボンっぽさを出す意味では、仕事はある程度できても、できすぎるのはどうかなと。編集部の一員として、めちゃめちゃ燃えているというより、与えられた仕事をうまくやる。プラスαで出世も狙っている。それくらいがいいと思うので、熱の入れ方は難しいところでした。

――なるほど。そういう意味では、難しい役かもしれませんね。

一ノ瀬 やらなすぎても埋もれてしまいますから。この役を演じさせていただくことになったとき、「スパイスになれれば」と言ったので、いいバランスを考えています。

俳優以外の仕事で表現の手数が増えました

――一ノ瀬さんはデビュー作の『リュウソウジャー』で俳優としての土台を作ったと発言されていましたが、その後の2年はどんな時期でした?

一ノ瀬 『リュウソウジャー』は実践ではありましたけど、たくさんのことを教えてもらって、自分にとってはインプットの現場でした。そこから他の現場に出て、それぞれ違うキャラクターをいただいて、勉強したことを試してみた感じで、アウトプットの時期だったかなと思います。土台にどう枝葉を付けていくか。戦隊が終わって1年目は、違う方法で役にアプローチして、試行錯誤の色が強くて。次の1年は俳優業に加えて、『東京ガールズコレクション』や『王様のブランチ』に出演させていただいたり、トークショーをやらせてもらって。そういう仕事に携わることで、自分の出し方が増えました。

――演技以外の仕事も大きかったんですね。

一ノ瀬 刺激になりました。バラエティで芸人さんたちと共演させていただくことも多くて、自分の話し方や表現の手数が知らない間に増えていて。それがお芝居に繋がるとは考えてなかったんですけど、影響はありましたし、視野が去年の1年で広がりました。

――特に『王様のブランチ』を観ていると、親近感がすごく増しました。

一ノ瀬 役をやっているだけだと、自分自身がどういう人間かわかってもらえないと思うので、そういうものを出す機会をいただけたのは、とても嬉しかったです。自分のことを身近に感じてもらったうえで、「こういう役をやっているんだ」と観てもらうのも面白いと思います。

二枚目より、ふざけて振り切るのが得意です

――演技に対する考え方や目指すものも、2年で変わってきたりしましたか?

一ノ瀬 いろいろな方と接しているうちに、目指すものはどんどん増える一方なので、今は少し大変な状態です(笑)。素敵な魅力に溢れている方ばかりで、盗みたいことがたくさん見つかっていて。

――誰が見てもカッコいい一ノ瀬さんですが、その他に武器として身に付けたいこともありますか?

一ノ瀬 さっきもお話しした通り、僕自身はあまりスマートな人間ではないので(笑)、むしろ二枚目は得意でないんです。だからクールさを身に付けたほうが、求められる方向に近くなるのかと思います。逆に、ふざけたり振り切れるところは、意外と武器なのかなと。

――『ドクターX』のスピンオフで主演された『ドクターエッグス』では、面白いところも出てました。

一ノ瀬 そういう要素がありましたね。台本にめちゃめちゃなことが書かれていたとしても、たいてい思い切りできるので、そこで違う可能性を皆さんに見せられたらいいなと思います

――一ノ瀬さんのルックスで、ハチャメチャな振り切り方もできたら、確かに大きな武器になりそうですね。

一ノ瀬 カッコつけることも必要なので取り入れつつ、おふざけの部分も深く掘っていければ。でも、『ゴシップ』ではクールに頑張りたいと思います。

撮影/河野英喜

Profile

一ノ瀬颯(いちのせ・はやて)

1997年4月8日生まれ、東京都出身。

2019年に『騎士竜戦隊リュウソウジャー』でデビュー。主な出演ドラマは『麒麟がくる』、『この恋あたためますか』、『いいね!光源氏くん し~ずん2』、『ナイト・ドクター』、『ドクターX~外科医・大門未知子~(第7シーズン)』など。『ゴシップ #彼女が知りたい本当の○○』(フジテレビ系)に出演中。『王様のブランチ』(TBS系)でレギュラー。

『ゴシップ #彼女が知りたい本当の○○』

フジテレビ系/木曜22:00~

公式HP

フジテレビ提供
フジテレビ提供

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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