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『ドクターホワイト』で金髪ショートにした岡崎紗絵。病気を抱える役を演じて人生について考えたこと

斉藤貴志芸能ライター/編集者
『ドクターホワイト』より(カンテレ提供)

昨年ドラマ、映画、写真集と大きく躍進した岡崎紗絵が、金髪ショートにイメチェンして『ドクターホワイト』に出演している。脳にいつ悪化するかわからない病気を抱えながら、明るく振る舞う役。豊富な医療知識を持つが記憶も感情もない主人公の白夜に、一般常識を教えている。1話から緊迫感の漂うシーンもあった。この役への取り組みと、演じて考えたことなどを聞いた。

朝は寝ぐせが爆発して時間がかかるように(笑)

――1月クールのドラマを撮っていると、年末年始もゆっくり休めなかった感じですか?

岡崎 4~5日休めて、実家に帰って家族と会ってきました。クリスマスも夜だけ友だちと会って、ケーキをおうちで食べて、女子2人でワイワイと平和に過ごしました(笑)。

――金髪ショートはもう自分でも見慣れました?

岡崎 だいぶしっくりきた感じです。役のために染めたのは初めてで、パッと見たときに黒髪とは雰囲気が全然違っていて。気持ちもファッションも変わってきました。

――日常生活にも変化はあったと。

岡崎 服は特に変わりました。いつも着ていたものを合わせると、ちょっと違うと感じることが増えて、色味を落ち着かせたり。金髪で上の服に派手な色を使うと、すごくパンチが強くなるので(笑)、モノトーンにしたりしています。

――髪の手入れは短いほうが楽ですか?

岡崎 意外と楽でないんですよ(笑)。髪を洗って乾かすのは速いですけど、朝はすごく時間がかかります。寝ぐせがもう、とんでもないので(笑)。爆発しちゃって人様に見せられなくて、一度全部濡らしてドライヤーをかけるという工程が必要なんです。

――そういうものなんですね。

岡崎 ロングだと寝ぐせがついても、結んだりすれば全然目立たないんです。ショートではそれができなくて、朝はプラス30分くらい余計に見ています。

周りを困らせたくない気持ちが加速して

――今回、ウィッグでなく実際に金髪ショートにしたのは、より役に入るためですか?

岡崎 遊び心で染めたことはありますけど、役でガラッと変わった髪形にしたかったんです。自毛で見た目から全然違うイメージにできて、すごく演技の助けになりました。

――そもそも演じる晴汝(はるな)はなぜ金髪にしたかも考えました?

岡崎 そこは1話のテーマと繋がっていて、脳の病気がいつ発症するかわからないので。悔いが残らないように、やりたいことは全部やろうと金髪にしたのかなと。3年前に病気が見つかったシーンでは、髪は長くて落ち着いた色だったので、私はそう解釈しています。

――晴汝について「外に見せている顔と心の内はちょっと違う」とコメントされていましたが、難易度は高い役ですか?

岡崎 そうですね。本当に周りを見ている子で、気をつかわせない、困らせたくないという想いがすごくあって。明るく元気なのがもともとのベースで、病気がわかってから、そういうところが加速したんだと思います。暗い部分を見せないようにしているから、自分の心と外に出しているものが変わってくるところはあるのかなと。

――ただテンションを上げればいいわけではなくて。

岡崎 明るいテンションのときと、1人で病気のことで苦しんでいるときのギャップの大きさが、自然に見えればと思います。

今までは医者側ばかりで患者役は新鮮です

――岡崎さんは医療ものは『ナイト・ドクター』など結構出演されてきましたが、自分が病気の役はありましたっけ?

岡崎 初めてです。今までは先生側ばかりだったので、新鮮です。お医者さんはやっぱり偉大だなと思いました。治してもらう側としては、ずっと付き添ってもらって頼りになるし、頼れる人は他にいないので、やっぱり大きい存在です。

――そういう偉大な役を今まで演じてきたわけですが。

岡崎 診られる側になると、気持ちがまたちょっと変わります。またお医者さんを演じるときがあれば、患者さんの気持ちがよりわかりそうな気がしました。

――岡崎さん自身はずっと健康なんですか?

岡崎 小さい頃は病弱で、入院もしました。救急車で運ばれたこともあります。今回、当時の入院生活を思い出しました。親も面会時間しか来られなくて、1人で病室で絵本を読んだりしている時間が長かったので、寂しかったですね。遠足にも行けなかったり。そういう意味では、過去の経験がちょっと活きています。

私も人目を気にせず何でもやると思います

――晴汝は日々病気で苦しんでいるわけではないけど、いつ悪化するかわからない。爆弾を抱えているような心境は想像できました?

岡崎 だからこそ、やりたいことはやりたくて、未練が残らないように生きているんですよね。1話で出てきましたけど、お兄ちゃんがあまり家事をできないから、いろいろわかるようにノートに書いておいたり、いざというときの準備もしていて。そういうことも考えているところは、常にあるように思います。

――岡崎さんが同じ状況でも、やっぱり明るく振る舞いますか?

岡崎 たぶん、いつもそうするのは無理な気がします。でも、やりたいことはやると思います。我慢していたことや、人目を気にしてやらなかったこともいろいろと。あちこちの国を旅行して、見てなかった世界を見たいし、容姿でもきっと髪色をコロコロ変えます。ピンクでも何でも着たいし、ギャルになろうとするかもしれません(笑)。

けいれんは震えより蹴飛ばす動きでした

――1話で買い物中に倒れて病院に運び込まれたシーンでは、脚をけいれんさせて「死にたくない」と叫んだり、観ていて息を呑みました。

岡崎 先生たちに総出で抑え込まれるくらいで、相当けいれんが激しい演技でした。せん妄状態といって、YouTubeで調べたら本当に心が苦しくなって。あれを自分がいきなり目の前で見たら、どうしたらいいかわからない感じです。あとは本職の先生たちから、けいれんって震えというより蹴飛ばすような動きと聞いて、思い切りやりました。私も前は抑え込む側の役だったので、やっぱり難しかったです。

――晴汝としては、死が迫ってきている感覚ですよね?

岡崎 そうですね。でも、あまり考える余裕はなかったです。やり慣れないシーンだったこともあって、体力も使いますし、余計なところにも力が入って。次の日は筋肉痛のようになっていました(笑)。

――死ぬかもしれないような実体験はありませんか?

岡崎 そこまではないですね。救急車に乗ったときは、苦しすぎて意識がもうろうとしていましたけど、小さかったし、あまり覚えてないんです。今回、救急車で病院に運ばれるシーンのとき、「こんな感じだったかな」と思いました。たぶん晴汝はお父さんとお母さんのこととか、フラッシュバックがあって。

――「パパとママみたいに焼かれたくない」とも叫んでいました。

岡崎 思い起こして自分の中に入ってくるものが、たくさんあったように思います。

ドラマに入る前は食べて体力を蓄えます

――インする前に準備でしていたことはありましたか?

岡崎 原作を読んだり、脳動脈瘤について調べたりしました。原作は読むと本当に面白くて、パラパラ読めて。病気のことはブログを読むと、経験された方でないとわからないことや気持ちが出ていました。役に活かすというのも心苦しいですけど、すごく勉強になったというか。検査の結果で一喜一憂することとか、説明でなく感情のままに書かれていて、自分の中に入ってきやすかったです。

――晴汝は極端な菜食主義で、1話で倒れたのもそっちが原因でしたが、役作りで実際にそういう食生活をしたりは?

岡崎 そこまではしませんでした。小麦粉を抜いてグルテンフリーの生活をしたことはありますけど、私、ドラマに入ると痩せちゃう体質で、インする前は逆に食べていました。蓄えておかないと、体力的にもたないと思って。

お兄さんとのバランスの取れた関係がいいなと

――浜辺美波さんが演じる白夜とのやり取りは楽しそうですね。「こたつ入っていて」と言ったら、白夜が頭から入ったり(笑)、晴汝が笑い方を教えてあげたり。

岡崎 楽しいです。白夜が人間味をあまり持ってないので、教えてあげることで晴汝自身が生き甲斐を感じていて。白夜は何も知らないのがチャーミングで面白いですけど、どんなところで育ってきたかとか、謎は深いです。

――ミステリーはもともと好きなんですよね。どんな作品に触れてきたんですか?

岡崎 『オリエント急行殺人事件』の映画を観に行ったりしました。でも、深夜に行ったのは失敗でした。脳が回ってない状態で、推理するにも全然ついていけなくて(笑)。

――柄本佑さんが演じるお兄さんの将貴との関係性は自然に掴めました?

岡崎 はい。私も兄と姉がいるので。でも、うちの兄は女きょうだいと育って、家事もわりとできるんです。私より丁寧なくらい(笑)。晴汝は精神的にはお兄ちゃんに支えてもらいながら、家事とかはしてあげる、バランスの取れた感じがいいなと思います。

空き時間はアニメの話に夢中になってます

――序盤の撮影では、現場で面白いことはありました?

岡崎 全体的にほのぼの、のほほんとした感じで、居心地が良いです。医療チームとは雰囲気がちょっと違うみたいで、私はどちらかというと家にいて、白夜ちゃんやお兄ちゃん、刑事の淳平さん(宮田俊哉)と一緒のことが多い、ほっこりサイドです(笑)。

――カメラが回ってないところでは、歓談しているような?

岡崎 家のセットが寒くて、みんなでこたつに入って、他愛のない話をしています。みんなで食べるシーンが多くて、フルーツサンドがよく出るんですけど、「撮り終わったら何を狙おう」みたいな(笑)。

――OKが出たら、すぐスタッフさんが持っていったりしません?

岡崎 だから、イチゴとかキープしておくんです(笑)。「当てたら全部食べていいよ」みたいなゲームもしました。宮田さんがいると、好きなアニメや最近何が面白かったという話をするんですね。1階で白夜ちゃんのシーンを撮影していて、2階で出てない私たちがアニメ話に夢中になっていたら、その声が下に入ってしまって、「静かに!」と怒られたこともありました(笑)。

――岡崎さんもアニメを観るんでしたっけ?

岡崎 自粛中にハマって、好きになりました。『キングダム』、『鬼滅の刃』、『炎炎ノ消防隊』、『約束のネバーランド』、『進撃の巨人』、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』……。いろいろ観ました。

――話題作は網羅ですね。浜辺さんは『約束のネバーランド』実写版の主演でした。

岡崎 そうなんですよね。アニメとは設定が違うとか、いろいろ聞いて楽しかったです。

自分を高めるものを知っておくのは大事

――病気でいつどうなるかわからない役を演じて、人生について考えることもありますか?

岡崎 晴汝は終わりが人より近くに見えているからこそ、毎日を大事に生きている部分があって。私は日々セカセカしがちですけど、もっと自分の人生を考える時間が必要だなと、すごく思ったりしました。

――仕事で忙しいのは、いいことではあるんでしょうけど。

岡崎 心も体も落ち着きがなくて。でも、休みのときにいろいろ考えています。自分は何が好きなのか。何をしているときが楽しいのか。ちょっと疲れたり行き詰まったときに、どういう方向に進めば気持ちが高まるか。知っておくことはすごく大事だと思うんです。

――岡崎さんは何をすると高まるんですか?

岡崎 それが、めちゃめちゃ考えて結局、私は何が楽しいのか、あまり出てこなくて(笑)。趣味がないので、旅行をするとか、そこまで時間が取れなければ友だちとしゃべるとか、そういうことかなと。でも、1人でできる趣味も探したいと思いました。

――旅行は大きいんですね。

岡崎 だいぶ大きいです。最近は北海道に行けてリフレッシュできましたし、ロケ番組ですけど、(鈴木)愛理と小田原に行ったのもすごく楽しくて。

――また海外にも行ける状況になったら、どこか考えている国はありますか?

岡崎 とにかく韓国に行きたいです。近いし、韓流ドラマの聖地巡礼もしたいですし、美容関係で行きたいところもあって。それをモチベーションに、ドラマの撮影も頑張ります(笑)。

Profile

岡崎紗絵(おかざき・さえ)

1995年11月2日生まれ、愛知県出身。

『ミスセブンティーン2012』に選ばれ、『Seventeen』モデル卒業後の2016年から『Ray』の専属モデルに。女優として2015年に『脳漿炸裂ガール』で映画デビュー。主な出演作はドラマ『パーフェクトワールド』、『アライブ~がん専門医のカルテ』、『教場Ⅱ』、『ナイト・ドクター』、映画『ReLife』、『午前0時、キスしに来てよ』、『mellow』、『シノノメ色の週末』など。1st写真集『すがお。』が発売中。ドラマ『ドクターホワイト』(カンテレ・フジテレビ系)に出演中。

『ドクターホワイト』

カンテレ・フジテレビ系/月曜22:00~

公式HP

見逃し配信「カンテレドーガ」

早朝の公園で素肌に白衣だけを身に着けて倒れていた女性(浜辺美波)は、自身を「白夜」と名乗るだけで、記憶を失い一般常識も持ち合わせていなかった。しかし、なぜか驚異的な医学知識と天才的な診断能力を備え、医師たちの誤診を正していく。彼女を発見したのが医療ジャーナリストの狩岡将貴(柄本佑)。自宅に連れてきたところ、2人暮らしの妹・晴汝(岡崎紗絵)が歓迎して、何かと世話を焼いている。

カンテレ提供
カンテレ提供

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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