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乃木坂46を卒業する新内眞衣らOL・就職経験のあるアイドルの強みとは?

斉藤貴志芸能ライター/編集者
乃木坂46公式HPより

乃木坂46の最年長メンバーで29歳の新内眞衣が、卒業セレモニーを2月10日に行うと発表した。新内といえば、正規メンバーに昇格して大学を卒業後、アイドルとOLを兼任して話題になった。アイドルは10代の学生の頃にデビューすることが多い中で、就職経験があるのはまれだが、他のグループにも僅かに“元会社員”のメンバーはいる。その経歴は強みになっているのか?

奨学金返済のためにOL兼任で活動

 新内眞衣は大学在学中の2013年に乃木坂46の2期生オーディションに合格。翌年3月に研究生から正規メンバーに昇格すると共に、大学を卒業した。だが、奨学金を返済しなければならず、スタッフに相談したところ、OL兼任アイドルとして活動することに。

 ニッポン放送の関連会社に就職し、主に経理を担当。当初は乃木坂46では週末の握手会や全国ツアーくらいしか仕事がなく、普通に週5日、定時に出社して働いていたという。2015年に放送された『乃木坂工事中』の密着企画では、頻繁に社内のウォーターサーバーから自分の水筒へ水を入れに来て、同僚に「水泥棒」といじられる様子も映された。

 2016年には『オールナイトニッポン0』の水曜パーソナリティに抜擢。また、同年11月発売のシングル『サヨナラの意味』からは連続して選抜メンバーに名を連ねるなど、人気が上昇していく。2017年発売の1st写真集『どこにいるの?』では、タイでのロケと共に東京のオフィスでも撮影。「隣りのデスクに座っている彼女と旅行に行くイメージ」の1冊となった。

 アイドルの仕事が忙しくなり、会社への出勤がままならなくなったため、2018年の3月で退社した。その発表をした『オールナイトニッポン0』では、4年間のOL生活の思い出として「アイドルが絶対触らない経理ソフトをカチカチしながら伝票を切って、帳簿を書いて、領収書をしまってました」と語っていた。

先駆者はモーニング娘。初代リーダーの中澤裕子

 新内はOLとアイドルを兼任していたが、一度就職してからアイドルデビューした例では、遡るとモーニング娘。の初代リーダー・中澤裕子がいる。

 京都の高校を卒業後、大阪の会社の総務課で勤務していたが、1997年にテレビ番組『ASAYAN』の「シャ乱Qロックボーカリストオーディション」に応募。有給休暇を取って東京まで出向き、最終審査の落選者により結成されたモーニング娘。のメンバーに。遅咲きの24歳でデビューしている。

 プロデューサーのつんくの指名でリーダーとなり、初期のモーニング娘。を支えたほか、演歌歌手としてソロデビュー。卒業後、2012年にIT企業の社長と結婚し、現在は2児の母。夫の仕事の都合で移住した福岡を拠点に、タレント活動を続けている。

“かわいすぎるヘアメイク”から屈指の人気者に

 現役アイドルでは、ラストアイドルの最年長メンバー・西村歩乃果が美容師、ヘアメイクの経歴を持っている。

 手先が器用で、高校の文化祭で友だちのヘアアレンジをしたら喜ばれたのがきっかけで美容師を志し、専門学校卒業後、六本木の美容室で働いていた。2年後にアーティストのヘアメイクとして声が掛かり、ツアーにも帯同。たびたび「なぜ裏方をやっているの?」と言われながらも、自分が表に出る気はなかったが、「言われ続けるとその気になって」と、2017年に22歳でラストアイドルのオーディションに挑戦した。

 1対1のバトル形式の審査で敗れたが、テレビで「かわいすぎるヘアメイク」と紹介されて、大反響を呼ぶ。それでも当人は「試しで受けただけ。今からアイドルなんて無理」とヘアメイクを辞める気はなかった。しかし、敗者によるセカンドユニット入りを熱望するDMなどのあまりの多さに、「求められているなら」と転身を決意する。

 芸能界の裏方として社会人経験があるだけに、若いメンバーを見て「そんなことだとやっていけない」と感じて諭すこともあるという。歌やダンスは経験なかっただけに苦手という一方、グラビアなど個人での活動に精力的に取り組んだ。

 SNSにもいち早く力を入れ、国内1位になったこともあるTikTokのフォロワー数は現在90万人超え。グループ屈指の人気者となったが、「人生経験があるからズル賢いだけ(笑)」と話していた。

 最近ではバラエティの出演も増えている。楽曲でのポジションも上げていき、昨年4月発売の『君は何キャラット?』ではオーディションバトルを勝ち抜いて、初のセンターを務めた。

百貨店での販売経験を握手会に活かして

 ラストアイドルでは、奥村優希も新潟の百貨店に4年間勤めていた。高校を卒業して入社し、販売員となり、劇場が近いNGT48のメンバーが買い物に来て接客するうち、アイドルに興味を持ち始める。

 そんな中で目にしたのが、ラストアイドルの2期生募集。応募資格が22歳までで、自身はあと3ヵ月で23歳になるところだった。1対1のバトルで敗退後、2018年に2期生アンダーとしてグループに加入。

 2020年には8th、9thシングルで選抜に入り。昨年は10thシングルのカップリング曲を歌うメンバーをファン投票で決める企画で1位に輝く。そのユニット曲『瞳キラキラ』でセンターを務め、MVは“デパート店員の恋”というテーマで撮影された。

 奥村は「百貨店での接客と握手会は似てる」と語っていた。「最初のやり取りでどういうタイプかわかって、どうしたら喜んでもらえるか考えるのが楽しい」とのことで、職業経験を活かしているようだ。また、メンバーからは「大人の方との接し方がうまい」とも言われている。

元銀行員が特技の“札の勘定”でインパクト

 櫻坂46の松田里奈は元銀行員だ。高校卒業後、地元・宮崎の銀行に就職。その2018年の夏に「坂道合同新規メンバーオーディション」を姉の勧めで受けて合格し、安定より夢を選んで上京した。

 銀行に勤めていたのは半年ほどだが、欅坂46の2期生として『欅って、書けない?』に初出演したとき、特技として紙幣の枚数を鮮やかな指使いで素早く数える“札勘”を披露し、インパクトを残した。先輩の小林由依からは「お客様の愛を振り込む窓口はわたくし松田が担当します」とのキャッチコピーを贈られる。

 グループでの活動でトーク力、コミュニケーション力の高さを発揮し、昨年1月には副キャプテンに就任。10月にはTBSの肝いりでスタートした早朝の情報番組『THE TIME,』の木曜レギュラーとなり、TIMEステンド店員として情報紹介などをしている。半年とはいえ元銀行員のイメージ通り、きっちりした仕事ぶりを見せるアイドルだ。

スーツ推しでファンを“社員”に

 48グループでは、SKE48の髙畑結希が元OL。地元・香川で就職し、先輩について外回りの営業のほか、接客や事務もしていたそう。2015年3月に19歳で7期生オーディションに合格。会社を辞めて、翌年11月に正規メンバーに昇格した。

 髙畑は当初から元OLキャラをフル活用していた。ファンとのチームを“髙畑商事”と称して、イベントで“会社説明会”を開催。自らは“社長”と呼ばれ、ファンは“社員”。また、「誰よりもスーツが似合う自信があります」とアピールし、写真撮影会にOLふうのスーツ姿で登場したりも。選抜総選挙でもスーツでポスターを撮り、政見放送に臨んでいた。

 選挙結果は2017年が78位、最後の開催となった2018年が68位。だが、2020年に26thシングル『ソーユートコあるよね?』で初の選抜入りを果たした。当時24歳で、初選抜の最年長記録だった。その後の2枚のシングルでも選抜メンバーになっている。

 また、趣味が落語と渋く、自ら創作落語の舞台に立ったりも。最近では個人クックパッドを始めたりと料理に力を入れ、この元日には手作り伊達巻きのレシピがクックパッドの「お正月」の人気検索で1位になった。

 就職していたアイドルは若さでは勝負できない分、自分にしかない社会人経験を活かして活動に繋げている。遅咲きがデメリットになるとは限らないようだ。

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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