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名作『ソロモンの偽証』がドラマ化。村田寛奈(9nine)が主人公の親友役で「よくいる女子高生」を体現

斉藤貴志芸能ライター/編集者

宮部みゆきの小説から映画化もされたヒューマンミステリー『ソロモンの偽証』がWOWOWで連続ドラマ化されて、本日スタートする。高校で発見されたクラスメイトの死体。自殺と断定する警察や学校の対応に納得できない生徒たちが、真相を追求して学校内裁判を始める。上白石萌歌が演じる主人公の親友役は村田寛奈。活動休止したガールズユニット・9nine(ナイン)のメンバーで、ダンススキルの高さが目を引いていたが、女優として新たな一歩を踏み出した。

お芝居をするごとにいろいろなものが見えてきて

――2年前に9nineが活動休止してから、生活は大きく変わったでしょうね。

村田 かなり変わりました。ライブ活動がなくなって、個人で何をするか考えて、趣味だったギターの弾き語りと、9nineの頃から少しやっていたお芝居がメインになりました。

――演技へのモチベーションは高かったんですか?

村田 今のほうが確実に高いです。最初は、踊れないなら他に興味があることは……という感じでした。自分にとって、お芝居の原点になったのは、事務所のメンバーでやった舞台『ローファーズハイ!!』です。今も大事にしている基本を学んで、その後はやればやるほど、いろいろなものが見えてきました。特に舞台は大きかったです。

――わりと定期的に出演していますね。

村田 同じ場面を何回もやって、「きのうはこう感じた」「今日はこう思った」と毎回更新されるのが、自分の中で新鮮でした。稽古をどんどん積み重ねても、本番になると、みんなギアが上がって、見たことのない表情をする人もいたり。それを受けて、自分も「こうしてみよう。ああしてみよう」と、即興の対応力が付いてきました。まだまだですけど、1人になって初めての舞台ではいっぱいいっぱいだったのに比べたら、自分でわかるレベルで余裕を持てるくらいにはなりました。

――ダンスで培ったリズム感とかが、演技に役立つこともありますか?

村田 たぶんステップを踏んだりする力があるから、ヨロヨロしないとは言われたことがあります。グッと引っ張られるシーンでブーンとよろけちゃう人もいるみたいですけど、そこでキュッと戻れるとか、身体能力的なことですね。逆に今、ライブでもお芝居をしていたんだと感じることのほうが多いです。9nineで「ここは楽しく、ここは切なく、ここで強く」とセットリストの流れを考えて歌を届けていたのは、ある種のお芝居だったなと。

長い本を読めるようになりました

――自分でドラマや映画は観ていたんですか?

村田 好きなほうだったと思います。お芝居を始めてから、前よりもかなりの数の映画を観るようになりました。

――特に好きな作品というと?

村田 たくさんありますけど、台湾映画の『あの頃、君を追いかけた』はめちゃめちゃ好きです。世界観、空気、色……。私は一度観た映画は、よほど気に入らない限り、また観ることはないんですけど、あの映画は流し見でもいいから画面に映しておきたいくらい、雰囲気がいいんです。私はああいうラブストーリーが好きなんだと思いながら、今は自分が面白いと感じるかわからない作品でも、率先していろいろ観るようにしています。でも、怖いのだけは無理でした(笑)。

――他に演技力の向上のためにしていることはありますか?

村田 台本を読む機会が多くなったからか、本を読めるようになったのが、一番大きいかなと思います。前はマンガも全然読まなかったんです。珍しいですよね。

――どんな本を読んでいるんですか?

村田 最近面白かったのは、辻村深月さんの『スロウハイツの神様』です。上・下巻があって、すごく長くて、読めるわけがないと思っていたんです。でも、続きが気になって、2~3日で読み終えました。

――最初はなぜ読もうと?

村田 コロナの自粛の頃から、おじいちゃんが「時間があるだろうし」って、本をとにかく送ってくるようになったんですよ(笑)。たぶん『本屋大賞』1位とか、本が苦手でも読みやすいものを選んでくれていたと思いますけど、その中に辻村深月さんの本がありました。

オーディションの人数の多さに「受からないな」と

――『ソロモンの偽証』の原作も3冊から成る一大長編です。

村田 1冊が分厚いですよね。

――もともと知っていた作品なんですか?

村田 本は読んでなくて、映画を公開された頃に普通に観ました。昔すぎてあいまいな部分もあったので、ドラマに出させていただくことになって、改めて前篇、後篇と観直しました。裁判のシーンとか結末とか、しっかり観ておこうと思って。

――主人公の藤野涼子の親友の倉田まり子役は、オーディションで決まったんですか?

村田 そうです。最初は『ソロモンの偽証』ということは知らなくて、WOWOWのドラマの高校生役という形でした。オーディションの台本が『ソロモン』っぽいなとは感じたんですけど。会場に行ったら、すごい人数の男の子と女の子がいて、「これは受からないな」と思いました。そしたら、1~2週間後にマネージャーさんから「受かったよ」と電話が来て。そこで『ソロモンの偽証』の倉田まり子役だと聞きました。

――すごい競争率を勝ち抜いたんですね。

村田 正確に何人受けたのか知りませんけど、あんなに人数の多いオーディションは久しぶりでした。お芝居が上手な人はいっぱいいるだろうし、かわいい子も多くて、すごく緊張しました。でも、「落ちても仕方ない。できることを頑張ろう」くらいのラフな感じに切り替えたら、逆に気楽に挑めたのかなと思います。

天真爛漫で意外とポンコツな役に選ばれて(笑)

――選ばれただけに、倉田まり子役が自分に合う感じはしました?

村田 台本をいただいたときは、まり子は飛び抜けて明るい印象で、めちゃくちゃ合っているとも、全然合ってないとも言えない感じでした。でも、いろいろな人と仲良くする天真爛漫な女の子で、自分自身とはちょっと違って、もし同じクラスにいたら「すごいな」って見ていたと思います。

――一番普通の女子高生っぽくないですか?

村田 そう思いました。気になることがあったら、みんなに話して噂を広めてしまうようなおしゃべりで、ニコニコしながら空気に飲まれて流される。よくいる女子高生の代表みたいなイメージがありました。涼子の一番近くにいて、支えてあげることもあるけど、思ったよりポンコツ(笑)。監督からも「ちょっとおバカっぽいから、空気が読めなくてもいい」というアドバイスをもらいました。

――自分で劇中に出てこない設定を考えたりもしました?

村田 どうやって涼子と仲良くなったかとか、考えました。そこは視聴者の方には見えないところで、監督も「気にしなくていい」ということでしたけど、自分の中ですっきりさせておきたくて。クラスの中では自分の席か涼子の席にいることが多くて、チョロチョロあちこちに行っているんだろうな、とか。そこは私たちのほうが高校生の世代に近いからと、決まりごとはありながら、わりと自由にやらせてもらいました。

――その辺り、寛奈さんの高校時代はどうでした?

村田 自分の席でイスとお尻がくっつくくらい、居座るタイプでした(笑)。まり子みたいな誰にでも話し掛けてくれる子が「お昼食べよう」と言いにきたら行く。そんな感じで、まり子とはやっぱり逆でしたね。その分、まり子のような子に接してはいたので、そういう意味で遠い存在ではなかったです。

高校時代の記憶を辿ってリアルさを出しました

――タレントとしてのイメージだと、寛奈さんは関西ノリというか、まり子っぽい明るさを感じますが、演じるときはテンション上げ気味で?

村田 「もうちょっと楽しそうに」と言われることはありました。でも、高校生のリアルな感じというと、そこまで騒ぐわけでもないですよね。自分の高校時代、周りの子がどうしていたとか、何となく記憶を辿って、自然にできたらいいなと思って演じました。

――現在24歳の寛奈さんが、高校生っぽさの点で意識したこともありますか?

村田 見た目は高校生で全然大丈夫ですし(笑)、現役の子のテンションにもついていけるので、特に「高校生役だから」と考えたことはありません。また女子高生役ができて、楽しかったです(笑)。

――ポニーテールの髪形は最初から決まっていたんですか?

村田 衣装合わせのときに決まりました。今の子はどうかわかりませんけど、私の頃は女子高生って学校には適当な格好で来ていて、髪も寝起きでボサボサのまま、キュッとくくってるイメージがあって。「そういう子いるよね」とポニーテールになりました。

学校内裁判は「友だちがやるから」というノリで

――まり子は涼子が学校内裁判をしようと言い出したとき、戸惑いながら協力していたようでした。

村田 そこも私の勝手な裏設定ですけど、「友だちが何かやろうと言ってるし、私もやろうか」くらいのテンションだったのかなと。女子高生って、そういう感じだと思うんです。まり子もたぶん最初は「涼子と一緒に帰れるから」みたいなノリで始めて、活動しているうちに、いろいろなことがわかってきて。死んでしまった柏木くんのために何かできないかと、考え始めたように思いました。

――「柏木くんって嫌いじゃなかったな」という台詞もありました。

村田 たぶんマリ子の中では、ポッと出た言葉なんですよね。裁判への想いがちょっとずつ強くなっていた中で、重く考えたというより、ただ自分が思っていることを聞いてほしかったんだと思います。でも、まり子が突然あんなことを言い出すのは珍しくて、涼子もビックリしていて。

――涼子役の上白石萌歌さんと話し合ったりもしました?

村田 私がクランクインして、最初が2人のシーンだったんです。私はめっちゃ緊張していて、萌歌ちゃんと初めましてなのに、監督に「すごく仲良い感じで」と言われて(笑)。でも、3人でワイワイしゃべって、萌歌ちゃんが共通の友人の話を振ってくれたりして、和めました。シリアスなストーリーですけど、萌歌ちゃんの明るさもあって、現場は楽しい雰囲気でした。

――葬儀場のシーンもありました。

村田 あれはセットでなくて、本当の葬儀場で撮ったので、ちょっとどんよりしました。でも、そのときに誕生日が近かった子がいて、葬儀のシーンの合間にお祝いしたり(笑)。クラスメイト役の子たちとは仲良くできました。

共演者さんの話が自分の財産に

――他に『ソロモンの偽証』の撮影で、覚えていることはありますか?

村田 裁判のシーンは、自分の台詞が多かったわけではないですけど、本当にすごかったです。先輩たちのお芝居の迫力を肌で感じました。まり子は裁判員で前に座っていたから、皆さんの顔が見えていて。素でお芝居に見入ってしまった瞬間もあって、すごく刺激をもらえました。

――寛奈さんも芸能界でのキャリアは10年以上になりますが、俳優としてはほとんどの共演者が先輩だったわけですよね。

村田 そうなんです。私はドラマに出たこと自体そんなになくて、個人でポンと俳優さんたちの輪に入っていくのは初めて。「ドラマはこうやって作っていくんだ」というところから、すごく新鮮でした。いろいろな方のお芝居を見たり、共演者さんのお話を聞く時間が多くて、新しい世界に一歩踏み出した感じがしました。

――共演者の話で特に印象に残ったことというと?

村田 子役からずっとやってらっしゃる方も多くて、「この現場でこういうことがあった」「こんなお芝居をしたら誉められた」「オーディションではこんなことをしている」とか、普段なら絶対聞けない話を教えてもらいました。有名な作品に出ている方もたくさんいて、「そのドラマ観てた!」と思いながら聞いていたり。いいタイミングで自分の財産になりました。

やっとレールが敷かれ始めました

――年末の誕生日で25歳を迎えますが、20代後半の展望はありますか?

村田 この前、学校時代の友人と久しぶりに会って、その子がたまたま25歳になったばかりだったんですね。「25歳の抱負は?」みたいな話をして、「ひろはどうするの?」とも聞かれたんですけど、とにかく仕事をしたい! かと言って、そんなにポンポン仕事が舞い込んでくるわけはないので、自分に何ができるのかも考えています。9nineから1人になって、自分で何とか掴み取りにいかないといけないのは身に染みていて。『ソロモンの偽証』のオーディションに受かったのは嬉しかったので、さらにたくさん仕事を増やしたいです。

――一方、寛奈さんのダンススキルを封印してしまうのも、もったいない気はします。

村田 1人で歌って踊ってもいいんですけど、私はメンバーとやりたい意識が強くて。昔は毎日踊っていたのが、今は妹のダンスレッスンについて行ったりする程度ですけど、たまに踊るとやっぱり楽しいです。また踊る機会があっても、1から勉強するわけではないので、今は趣味とて体を動かせればいいなと思っています。

――そして、女優業により邁進していくんですね。

村田 そうですね。やっとレールが敷かれ始めたところなので、ここで頑張りたいです。

*写真はレプロエンタテインメント提供

Profile

村田寛奈(むらた・ひろな)

1996年12月29日生まれ、兵庫県出身。

2010年にパフォーマンスガールズユニット・9nineに加入。女優として、舞台『ギア-GEAR-』、『キンギンヒシャカク!~乙女の一手~』などに出演。2020年に短編映画『たまには、大きな声で』で初主演。主題歌と劇中歌の作詞・作曲も担当。2021年に映画『彼女未来』に出演。ドラマ『ソロモンの偽証』(WOWOW)に出演中。YouTubeチャンネル『#ひろろいろ』でギター弾き語りを配信中。

連続ドラマW『ソロモンの偽証』

WOWOW/日曜22:00~

公式HP

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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