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『ナイト・ドクター』で入院中の妹役の原菜乃華 「病気でも前向きな役は今だからこそやりたくて」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
撮影/松下茜 ヘア&メイク/馬場麻子 スタイリング/津野真吾(impiger)

夜間救急専門の医師たちを描く群像ドラマ『ナイト・ドクター』(フジテレビ系)で、医師の1人の妹で入院中の高校生を演じている原菜乃華。子役出身で演技力に定評ある17歳で、今回も病気を抱えながら恋もして、健気に生きる姿が引き付ける。明日放送の8話から9話とスポットが当たるようで、展開が気になる中、話を聞いた。

オーディションの台本から涙が止まりませんでした

原菜乃華が演じる深澤心美は、ナイト・ドクターの1人、深澤新(岸優太)の妹で高校1年生。小さい頃から病気を抱え、両親を早くに亡くしたため、兄が面倒を見てきた。現在も兄や主人公の朝倉美月(波瑠)らの務める病院に入院している。新が美月に想いを寄せていることに気づいていて、7話の最後に自分の恋人の岡本勇馬(宮世琉弥)と4人でのWデートを持ち掛けた。

――『ナイト・ドクター』での心美は、1話から花火大会で倒れて病院で手術を受けて、目を引きました。

 「もう誰も助けてくれないかと思った……」と涙するシーンは、オーディションでもやりました。演技審査用の台本を読んだときから、涙が止まりませんでした。

――「この役はもらった」みたいな手応えはありました?

 まったくなかったです(笑)。毎回のことですけど、オーディションのあとは、「ああ、終わった。落ちた落ちた……」と思いながら帰りました。自分では全然うまくできたと思えなくて。でも、意外とそういうときのほうが、受かっていたりします。

――どうしてもやりたい役だったとか。

 心美ちゃんが病気を抱えながら、ひたむきに前を向こうとする姿勢は、今だからこそ、たくさんの方に刺さると思ったんです。それと、小さい頃から月9に出るのが夢だったので。オーディションに受かったと連絡が来たときは、電話口で泣いてしまうくらい、うれしかったです。

台詞の練習より内面を考えました

――菜乃華さんは映画『罪の声』のイン前は友だちとの連絡を絶って1人で籠ったり、役作りを念入りにするそうですが、今回はどんなことをしました?

 オーディションの前には(ヒロインが白血病の)『世界の中心で、愛をさけぶ』を観ました。あとは、「心美ちゃんはこの病気かな?」というのをある程度調べたり、闘病のドキュメンタリーを観て、「自分だったらどうするだろう?」とずっと考えていました。台詞をいっぱい練習するより、内面を重視しました。

――心美役に決まってからは?

 『世界の中心で、愛をさけぶ』のドラマ版を観ました(笑)。他にも、『コード・ブルー』とか医療ものを観返したり。

――それで、どんなことを考えたんですか?

 作品を観ていると、ただ涙が止まらなくて。でも、心美ちゃんはすごいなと思いました。もし私がいつ何があるかわからない病気で一生治らないとしたら、たぶん誰かに八つ当たりするし、人と極力関わらないで籠りがちになりそうなので。心美ちゃんはお兄ちゃんと仲良くて、恋人もいる。普通の女の子に見えて、本当に強いです。

過去にあったことを想像して書き出しました

――菜乃華さん自身は、病気の経験はあるんですか?

 今は健康ですけど、小さい頃はぜん息で何度も入院していました。親と離れて1人で病院に寝泊まりして、病室の天井と点滴が流れるのだけを見ていて。すごく寂しくて不安になって、悪いほうにばかり考えてしまう。その経験は活かせたと思います。

――入院しいている心美の気持ちはわかったと。

 あと、お兄ちゃんの経歴表や病気に関する資料をいただいて、心美ちゃんは過去にどういうことがあって、どんな想いをしてきたのか、自分で想像して書き出したりもしました。修学旅行には行けなかっただろうな、とか。私自身、お仕事で修学旅行に行けなくて辛かったり、自分と似たところも見つけて寄せていきました。

――心美は達観したところもあって、お兄さんより大人に見えたりもしますが、いろいろなことを考えて生きてきたからなんでしょうね。そう思えるところも、菜乃華さんの演技が醸し出しています。

 心美ちゃんは小さい頃から、いつも頭の中に「何があってもおかしくない」というのがあるので、逆に、生きることも死ぬことも重く受け止めすぎてないように感じます。そこは心に留めて演じました。監督にも「病気は抱えていても普通の女の子ということを忘れないで」と言われたので、暗くなりすぎないように意識しました。むしろ、明るい担当?

――確かに、そんな感じになってますね。

 お兄ちゃんとの会話はフッと笑えることが多いので。病院での先生たちのシーンは考えさせられることがたくさんある中で、ちょっと日常に戻る時間を担っていると思います。

私も年の離れた妹には過保護です(笑)

――キャラクター的に、心美に自分と近いところもありました?

 お兄ちゃんと心美ちゃんは11歳差なんですけど、私にも11歳下の妹がいるので、お兄ちゃんの気持ちはすごくわかります(笑)。妹が小さい頃から粉ミルクを作って飲ませてあげましたし、オムツも替えたり、お母さんが忙しいときは1人で面倒を見てました。だから、過保護になってしまうところがあって、自転車に乗ってるのを見るのも怖くて(笑)。そこはお兄ちゃんも同じなんだろうなと。でも、私は妹に彼氏ができたときは、やさしく迎え入れてあげようと思います(笑)。

――心美の彼氏の勇馬は、病気のことを知っても「会えるなら学校でも病院でも一緒」と態度を変えなかったり、いいヤツですよね。

 すごく素敵だと思います。私自身、ネガティブにモノを捉えがちなので、常に明るい人は恋人に限らず、友だちでも家族でも大切な存在です。

――お兄さんと美月先生とのWデートとして、キャンプ場に行ったシーンは楽しめました?

原 すごく楽しかったです。パエリアやマシュマロやフルーツがたくさんあって、カットがかかった瞬間、みんなで一斉に食べました(笑)。

――菜乃華さんが真っ先に行ってたんですか?

 岸さんがガッツリ行ってましたけど、私も大きい焼きマシュマロを食べて、おいしかったです(笑)。今はなかなか外で遊べない中でボートにも乗れましたし、心美ちゃんはずっとパジャマで病院にいたから、気分転換になりました。

ネガティブなのが長所だと思えるようになりました

――菜乃華さんは演技がうまくて美少女で、無敵になっていきそうですが、自分で自信があるのはどんなことですか?

 そんなところはないですね。すごくネガティブで、悪いほうに考えてしまうので。お芝居でも悔しい想いばかりしますし、人見知りでうまくしゃべれないし。本当に自信はビックリするくらいないです。

――小さい頃からキャリアを積み重ねてきても?

 その分、周りですごい方々をたくさん見てきたので。自信なんてなくなります。

――遡れば『朝が来る』で12歳で妊娠・出産する役をやったときとか、去年の『罪の声』とか、演技を絶賛されましたが。

 うれしいんですけど、「すごく良かった」と言われたら、次はもっと良い芝居をしないといけない……という思考になるんです。ハードルが上がってしまって、「どうしよう?」という不安のほうが強くなります。

――だからこそ、成長しているのでは?

 良く言えば、そうですね。今回の月9でもプレッシャーは相当あって、現場では思っていた通りのお芝居ができなかったと、ヘコむこともたくさんあります。でも、オンエアを観ると、自分で最悪だと思っていたほどではなくて。

――どこを最悪と思っていたのか、不思議なくらいです(笑)。

 自分をネガティブに見てしまうところは直さないといけないですけど、今は「課題を見つけて次に活かさないと」という気持ちが大きいです。ネガティブは短所と思っていたのが、最近はそのおかげで「もっと準備しないとまずいな」と頑張れる節があって。長所でもあるのかなと考えるようになりました。

お芝居を取ったら自分には何も残らないので

――ネガティブというより、完璧主義なのかもしれませんね。

 テスト勉強でも、一つめに手を付けたところを完璧にするまでやりたくなって、二つめ、三つめにやるものがボロボロになってしまうんです。勉強はもっと効率良くできるようになりたいなと思います。

――1を飛ばして、2に行けないタイプ?

 そうなんです。とりあえず一つのことに集中すると、ある程度ちゃんとできるようになるまで、次に行けないんですよね。

――5歳から子役をやってきたことは、振り返ると良かったですか?

 すごく良かったです。子どもの頃からの積み重ねがあるから、今があると思うので。長く経験を積んだ分、お芝居の勉強をたくさんできました。

――子役出身でずっと活躍している人もいれば、早くに引退する人もいます。菜乃華さんはやめようと思ったことはありませんか?

 「続けていけるだろうか?」と考えたことはありますけど、やめようと思ったことはないですね。私は勉強も運動もたいしてできなくて、自分が好きで続けられるものはお芝居しかないので。小さい頃からずっとやっていたこともありますけど、なくてはならないもの。「お芝居を失くしたら、私には何が残るんだろう?」という想いが強いです。おばあちゃんになるまで続けられたらと思っています。

友だちから長文のメールで感想が来ました

――女優をやっていて、幸せを感じるのはどんなときですか?

 差し入れでおいしいお肉を食べられたときとか(笑)。真面目なところで言うと、今回の『ナイト・ドクター』でも、友だちがすごく長文の感想をメールしてくれて。「このシーンが好きで、こんなことを考えさせられた」とか、「なのかが出ているから観たけど、本当に良いドラマなので毎週リアタイで観るよ」とか。そういうのを読むと、すごくうれしくなります。

――最初に、「今だからこそ」心美を演じたかったという話が出ましたが、菜乃華さん自身、コロナ禍で考えたことはありましたか?

 いっぱいありました。学校に行かないで家から出ないと、ビックリするくらい人との会話がなくて、寂しくなりました。暇な時間が増えるほど、余計なことを考えて、落ち込んでしまうこともあったり。だから、心美ちゃんの病気を抱えながらも前向きな姿には、私自身、「もうちょっと頑張ろう」と背中を押されました。

――8話、9話と心美にスポットが当たるようですが、その間に菜乃華さんは18歳になります。誕生日はまだうれしいものですか?

 全然うれしくないです(笑)。「もう成人か……」という。ずっと学生でいたくて、15歳の誕生日のあとから、このまま止まっていいと思っていました(笑)。

一つ一つ積み重ねておばあちゃんになるのが理想です

――高校最後の夏はどう過ごしているんですか?

 青春っぽいことは常にしたいと思ってますけど、全然できてません。ラストJKなので、制服を着てプリクラを撮るとか、休みの日に海に行くとか、何かやりたいです。でも、なかなかできなくて。コロナがあったり、海だと焼けちゃうというのもありますけど、結局面倒くさいんでしょうね(笑)。何だかんだ言って、外に出るのがあまり好きでないんです。

――家では何をしているんですか?

 ずっと同じ姿勢でアニメを観たりしてます(笑)。ベッドの柵にスマホの固定スタンドをクリップで付けて、寝ながら『エヴァンゲリオン』を観たり、音ゲーをしています。

――あまり夏っぽいことはしてないんですね。

 でも、クーラーの効いた部屋で食べるアイスは最高です(笑)。アイスは本当に好きで、我慢もしないといけないんですけど、撮影がオールアップした日とか家に帰って、自分へのごほうびでハーゲンダッツを食べるのは至福です(笑)。

――自分磨きのために毎日していることはないですか?

 睡眠は最低7~8時間は取るようにしています。すぐ眠くなってしまうので。ドラマの撮影中は時間的に難しいので、寝る前に必ずストレッチをして、睡眠の質を高めるようにしています。

――自分が波瑠さんくらいの年齢になったとき、どうなっていたいとか、ありますか?

 全然考えていません。波瑠さんはお芝居だけでなくて、1話の私が泣くシーンで「ノド乾いてない? 体勢きつくない?」と気づかいをしてくださったり、現場での立ち居振る舞いも素敵で、見習いたいと思いました。でも、自分が将来どうなりたいというのは、あまりなくて。一つ一つ積み重ねて、お芝居を続けて、気づいたらおばあちゃんになっていた……というのが理想です。

撮影/松下茜 ヘア&メイク/馬場麻子 スタイリング/津野真吾(impiger)

衣装協力/ANDYOU DRESSING ROOM、BRAND SELECT

Profile

原菜乃華(はら・なのか)

2003年8月26日生まれ、東京都出身。

2009年に子役としてデビューし、映画『地獄でなぜ悪い』やドラマ『朝が来る』で注目される。その他の主な出演作は、ドラマ『ビンタ!』、『二つの祖国』、『死との約束』、映画『3月のライオン』、『はらはらなのか。』、『罪の声』、『胸が鳴るのは君のせい』など。

『ナイト・ドクター』

フジテレビ系/月曜21:00~

公式HP

(C)フジテレビ
(C)フジテレビ

17歳の演技派美少女・原菜乃華が初の青春映画で恋のライバル役

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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