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『仮面ライダー』のヒロインから漬物会社の社員役に。井桁弘恵が『お耳に合いましたら。』で見せる自然体

斉藤貴志芸能ライター/編集者

『仮面ライダーゼロワン』で変身するヒロインを演じた井桁弘恵。現在、それ以来の連続ドラマレギュラーとなる『お耳に合いましたら。』に出演中だ。主人公がポッドキャストでチェンメシ(チェーン店グルメ)の番組を配信するのを、後押しする同僚という役どころ。長身で颯爽とした佇まいはありつつ、「自分と重なる」という漬物会社の社員を自然体で演じている。

濃いキャラクターたちの中でクセのない役です

オーディオストリーミングサービスSpotifyと連動した深夜ドラマ『お耳に合いましたら。』(テレビ東京系)。漬物会社に勤める高村美園(伊藤万理華)の楽しみは、仕事帰りにチェンメシを買って、自宅で味わうこと。大勢の前で話すことは苦手だが、好きなことを語るときは熱量が溢れる姿を見た同僚の須藤亜里沙(井桁)が、ポッドキャスト配信を勧める。会社の後輩で音オタクの佐々木(鈴木仁)も加わり、美園はパーソナリティとして成長していく。

――深夜ドラマは自分でも観てました?

井桁 夜ふかししていて、静かで寂しくて何か観たい、でも、バラエティじゃないな……というときに、チャンネルを合わせたりします。

――テレビ東京の飯テロものにも馴染みがあって?

井桁 そうですね。あと、以前に(BSの)『極道めし』に出させていただいたので、また出演できてうれしいです。

――『お耳に合いましたら。』の亜里沙は会社勤めの女性で、等身大なキャラクターという感じですか?

井桁 そうですね。美園とか佐々木とかキャラが濃い人がいっぱい出てくる中で、亜里沙は視聴者目線というか、リアクションがリアルでクセのない役ですね。

低いテンションが自分と似ていて

――演じるうえではやりやすいですか? 普通の役はかえって難しいとも聞きますが。

井桁 亜里沙は自分と重なる部分があって、テンションも似ているので、やりやすいです。周りのキャラクターが濃すぎるので、その中で負けないか、不安もちょっとありましたけど、だからこそ、亜里沙の普通という個性が活きてくるかなと思います。トリッキーなことはせず、純粋なお芝居をしようと心掛けています。

――テンションが似てるというと、井桁さんも高からず低からず?

井桁 そうですね。みんながワチャワチャしているのを、俯瞰で冷静に見ているようなタイプです。女子で集まってキャピキャピというより、亜里沙と美園のように仲良い子は少ないけど、絆は強くて。かと言って、お互いなれ合うわけでなく、会いたいときは会って、会いたくなければ会わない。ハッキリした感じも亜里沙に似ていると思います。

――では、亜里沙は役を練るというより、自然体で演じている感じですか?

井桁 1話の撮影で、最初はテンション感を作っていったんですけど、監督に「もっと落としていい」と言われて、結構低いんだなと思いました。でも、そこに想いがないわけではなくて、ただ伝え方が雑なだけ。心の中は冷めてはいないことが出せればと意識しています。

冷めているようで情に熱いのを感じました

――今までで、特に亜里沙らしさが出たと思ったシーンはありますか?

井桁 亜里沙は男性とのつき合い方が独特というか。2話で必要な情報を得るところだけ女性の力を使って、それ以上の関係は拒んだり。自分でもまだ謎な部分ではありつつ、何かしら亜里沙らしい考え方があるのがわかりました。あとは、美園とのお芝居が多いので、2人の関係の温度感が出ていると思います。

――友だち想いではあるようですね。

井桁 そうですね。たぶん友だちとは狭く深くというタイプだと思います。だから、美園のために、ポッドキャストの話を男の人に聴きに行ったりできるんでしょうね。別に“やってあげてる”感もなく、本心で美園はポッドキャストをやったほうがいいと思っているからで、友だち想いだし、冷めているようで情に熱い感じがします。

――井桁さんも煮詰まっている友だちにアドバイスをすることはあります?

井桁 結構ありますね。女の子って相談しても答えは求めてないと言うじゃないですか。とりあえず聞いてほしい、みたいな。でも、私は「こうしたらいいでしょう?」とか言いたくなってしまって(笑)。そこも亜里沙と似てますね。

――アドバイスして感謝されたことも?

井桁 すごく昔、私が中学生だった頃に、失恋して落ち込んでいたお姉ちゃんに「そんな男、もう忘れちゃいなよ」みたいなことを言ったらしくて(笑)。それが刺さったと言われた記憶があります。

現場ではくだらないことで盛り上がってます(笑)

――『お耳に合いましたら。』は和やかなドラマですが、撮影はどんな雰囲気で進んでいますか?

井桁 美園と2人か、佐々木と3人のシーンが多くて、ずっとワチャワチャしてますね。スタッフさんから「自由に撮ってください」と携帯を渡されていて、オフショットを隠し撮りし合ったり。この前は美園がくしゃみをするシーンがあって、伊藤さんと“よくある女の人のくしゃみ”をいろんなパターンでやって、ずっと爆笑してました(笑)。伊藤さんと私は精神年齢が合うみたいで、くだらないことで永遠に盛り上がってます。あと、劇中で「まつまる太郎」というらっきょうのキャラクターがいて、その絵を3人でホワイトボードに描いて、ああだこうだ言ったりもしました。

――アーティストでもある伊藤万理華さんは、絵はうまいんですよね?

井桁 うまいです。私と鈴木くんはあまり絵心がありません(笑)。

――このドラマ自体にはどんな印象がありますか?

井桁 ストレスなく観られて、深夜にピッタリな作品だと思います。悪い人が誰もいなくて、みんなそれぞれチャーミングで、全然不快な気持ちになりません。演出も凝ってないようで凝ってるというか、こだわりがかわいくて、世界観がすごく好きです。さらに、おいしいごはんが出てきて、食欲もそそられます。

――井桁さん自身は、チェンメシに馴染みは?

井桁 デリバリーで頼むこともありますし、1話の松屋のカレギュウは美園が食べてから、ずっと気になっていて。この前、ロケ現場の横に、たまたま松屋があったんですね。鈴木くんと「食べたくない?」って2人でカレギュウを買いに行って、ロケバスで食べたら、おいしかったです。この作品をやっていると、チェンメシにすごく意識が向いてしまうので、危ないですね(笑)。

帰り道にスーパーでフルーツを選ぶのが楽しみで

――美園にとってのチェンメシのような日々の楽しみは、井桁さんにもありますか?

井桁 芸人さんのYouTubeです。最近はあまり外出もできないので、帰り道やお風呂から寝るギリギリまで観ています。

――どんな芸人さんのYouTubeを?

井桁 キングコングさんの『毎週キングコング』に、カジサックさん、オリエンタルラジオさんの中田(敦彦)さん、かまいたちさん、霜降り明星さん……。

――いっぱい観ているんですね(笑)。

井桁 たぶんコンビでやられている2人の掛け合いが好きで、そういうのが多いかもしれません。あと、(千原)ジュニアさん、小藪(千豊)さん、フットボールアワーさんの4人でやってらっしゃる『ざっくりYouTube』も最近観ています。

――食絡みでは何かあります?

井桁 以前は焼鳥屋巡りをしてましたけど、最近はなかなか行けないので、フルーツですね。夜帰ってきて寝るまでの間に、ごはんまで要らないけど小腹がすいたようなとき、ブドウとかスイカとかキウイを食べるのが楽しみです。帰り道にスーパーで「今日は何を食べようかな」ってフルーツ選びをするのに、ちょっとハマってます(笑)。

――美園はポッドキャストの番組を配信していますが、井桁さんもVoicyで音声配信をしてますね。

井桁 自粛期間中、YouTubeで芸人さんたちがラジオっぽいことをやっているのが、寝る前や寝付けないときの癒しだったんです。それで、ずっと自分でもラジオをやりたいと思っていたんですけど、今は放送局からでなくても発信できる場があると知って、やってみました。基本的には家で録りますけど、楽屋とか現場の帰りとか駅まで歩きながらとか、その日ごとにバラバラですね。

上限を決めずにやってみることを学びました

――『お耳に合いましたら。』の出演が発表されたときのネットニュースでも、井桁さんは“仮面ライダー美女の”と紹介されていました。『仮面ライダーゼロワン』に1年出演して、プラスになったことは多いですか?

井桁 多いと思います。演技への取り組み方、楽しみ方、現場でのコミュニケーション……。そういう基礎の部分をすごく学べて。体力も付きました(笑)。

――女優として糧になったことも?

井桁 やったつもりでも伝わってない、ということが多かったんですね。とりあえず上限を決めずに大きくやってみて、そこからあんばいを考えて調整していくやり方は身に付きました。『お耳』の亜里沙も上げたところから監督に削ぎ落としてもらって、ローな感じになりました。

――他にも今、演技をするうえで大事にしていることはありますか?

井桁 私は結構考えすぎるクセがあって。いろいろ想像して、「こうして、ああして、ここでこれをやって、ここで台詞を言おう」みたいな段取りを、頭の中で決めてしまうんです。それが1コ前の作品で「考えてやっているのが出ちゃっているから、直前でいったん全部忘れるように」と言われました。そこを今回も意識しています。伊藤さんと本番ギリギリまで他愛ない会話をしていて、「ヨーイ、スタート」でフラットな状態で入る。集中するときはしつつ、考えすぎないように気をつけています。

――いい結果が出てますか?

井桁 はい。でも、フラットにしすぎると「あれ? 何をするんだっけ?」となることもあるので、そこは調整しながらですね。

目覚ましの音に反応できないのが怖くて(笑)

――性格的には、事前に考えて準備したいタイプだったり?

井桁 そうなんですけど、実際は段取り通りにいかないこともあるので、臨機応変にできたらいいなと思っています。あと、大事にしているのは健康を保つことです。

――連続ドラマの撮影中は、特にそうですよね。

井桁 今回だと、一番大変なのは主演の伊藤さんですけど、だからこそ、私が体調を崩すわけにはいかない。みんなが元気でいてこそ、撮影ができるので。特にこの時期なので、気をつけないといけないですね。

――健康のために、何かしていたりもするんですか?

井桁 ビタミンをいっぱい摂って、ごはんもちゃんと食べるようにしているのと、それ以上に、睡眠をしっかり取るように気をつけています。でも、最近なかなか熟睡ができなくて。「朝起きられない気がする」みたいな緊張感が高まって、ヘンな夢を見たりするので(笑)。

――目覚ましを掛けておけばいいわけでもなくて?

井桁 起きる時間を全然カン違いしたことが最近続いて、何か怖いんです(笑)。あと、目覚ましの音に反応できなくてなってきて。鳴っても何の音か一瞬で理解できなくて、「うるさいな!」って止めて、また寝ちゃうことがあります(笑)。ヤバイなと思って、時間をズラして何コも目覚ましを掛けるようになりました(笑)。

撮影/松下茜

Profile

井桁弘恵(いげた・ひろえ)

1997年2月3日生まれ、福岡県出身。

2019年に『仮面ライダーゼロワン』に出演して注目される。その他の主な出演作は、映画『4月の君、スピカ』、『イソップの思うツボ』、『グッドバイ』、ドラマ『ウソかホントかわからない やりすぎ都市伝説 ザ・ドラマ』、『警視庁・捜査一課長』ほか。『お耳に合いましたら。』(テレビ東京系)に出演中。主演したVシネ『ゼロワン Others 仮面ライダーバルカン&バルキリー』が8月27日より劇場公開。『MORE』でモデル。

木ドラ24『お耳に合いましたら。』

テレビ東京系/木曜24:30~

公式HP

テレビ東京提供
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芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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