Yahoo!ニュース

『ドラゴン桜』で脚光浴びた“Wさら”。KinKi Kids、W浅野、W松井など同名効果が生むものは?

斉藤貴志芸能ライター/編集者
『ドラゴン桜』で注目された南沙良(左)と志田彩良(撮影/河野英喜)

最終回の視聴率が20%を越えた『ドラゴン桜』。16年前のシリーズ前作の生徒役から、長澤まさみがレギュラー出演したほか、新垣結衣、山下智久(声のみ)ら現在も活躍中の面々がゲストで登場した。今作の生徒役たちも脚光を浴び、南沙良と志田彩良は“Wさら”と呼ばれたりも。過去にも“W○○”と呼ばれた2人が共に成功した例はあるが、たまたまの同名が生む相乗効果は大きいのだろうか。

共に「自分と真逆」という役で光った個性

 『ドラゴン桜』の放送中に、南沙良と志田彩良をそれぞれ取材させてもらう機会があった。面白かったのは、2人とも「自分と役は真逆」と話していたこと。明るく無邪気な早瀬菜緒を演じた南は「私自身は友だちとはしゃぐことはあまりなくて……」と言い、今まで映画で演じてきた陰のある役のほうが「自分と重なる部分がはっきり見えて演じやすかった」とも。

 一方、父親のDVを受けて感情を抑えていた小杉麻里役の志田は、劇中で笑顔を見せることは少なかった。だが、「普段はよく笑うタイプで、すごくしゃべるほう。早瀬菜緒ちゃんが自分と近いです」と話していた。実際、取材での印象も、南はおとなしそうで静かにしゃべり、志田は常に笑顔をうかべながら、自身の大食いエピソードなどを披露してくれた。

 役への取り組み方も対照的。南は女優を目指したのも「自分でない人になる妄想が好きだった」のがきっかけ。演技をする際も目に見える形での役作りはあまりせず、「台本を読んで想像を広げて、そこにどう近づけるか」というスタンス。

 志田のほうは今回だとDVの記事を読んだり、そうした題材の作品を観て思ったことなどを含め、役についてノートにいろいろ書き出すという。東大専科の1人1人への気持ちをまとめた相関図も作った。

『ドラゴン桜』で早瀬菜緒を演じた南沙良(撮影/河野英喜)
『ドラゴン桜』で早瀬菜緒を演じた南沙良(撮影/河野英喜)

 方法論は違っても、2人とも強く印象に残る演技を見せた。飽きっぽい早瀬菜緒は勉強に音を上げがちだったが、徐々に東大受験へ本気になり、7話では模試の結果がE判定で東大専科をクビになったとしても「諦めない」と決意を告げる。そして、E判定=クビが自分の勘違いだとわかると「てへっ」と相変わらず屈託のないところも見せた。

 結局、東大には落ちたものの、共通テスト利用でちゃっかり青山学院に合格。「自分の中の一番明るい部分を引っ張り出した」という南が、菜緒を愛すべきキャラクターに仕立てた。

 小杉麻里は文系トップの成績ながら、「女に学歴は必要ない」という父親に暴力までふるわれ、「就職希望」と言っていた。6話では退学させられそうになるが、桜木(阿部寛)たちが父親の暴力を警察に訴えようとしたのを、麻里自身が止めるように頼んでいた。「世界でたった1人のお父さんだから……」と。そして、「みんなと東大に行きたい」と訴えるシーンで、志田は「初めて泣こうとしなくても涙が出ました」と振り返る。

 麻里は東大文Ⅲに合格。志田自身は「勉強はあまりした記憶がありません」と言いつつ、聡明な佇まいにリアリティを漂わせた。

 南は来年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』に出演が決まっている。志田も10月に主演映画『かそけきサンカヨウ』(今泉力哉監督)が公開。Wさらの今後の活躍への期待は大きい。

『ドラゴン桜』で小杉麻里を演じた志田彩良(撮影/河野英喜)
『ドラゴン桜』で小杉麻里を演じた志田彩良(撮影/河野英喜)

W主演で良さを引き立て合ったW浅野

 同名のタレントを並べる“W○○”といえば、中年世代には浅野温子&浅野ゆう子の“W浅野”が思い出される。同学年で共にデビューは1970年代だが、1988年にドラマ『抱きしめたい!』でW主演。バブル末期からブームとなったトレンディドラマの先駆け的な同作で、浅野温子が自立したスタイリスト、浅野ゆう子が親友の専業主婦を演じた。

 颯爽とした2人がカジュアルなブランド服を着こなし、シャレたマンションで暮らすライフスタイルが若い女性の憧れとなり、ドラマは平均18.5%の高視聴率を記録。スペシャル版が1989年と1990年、さらに1999年、2013年に至るまで4度に渡って作られている。

 その後も浅野温子は『世界で一番君が好き!』、『101回目のプロポーズ』、『沙粧妙子-最後の事件-』、浅野ゆう子は『親愛なる者へ』、『都合のいい女』、『長男の嫁』などと数々の主演作を重ねた。

浅野ゆう子
浅野ゆう子写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ

 文芸評論家の斎藤美奈子氏が、村上龍と村上春樹の“W村上”について「名字が同じでなかったら、2人はそもそも比較対象となる作家だったのか」と指摘したことがある。それは正論だが、作家が個々に作品を執筆するのと違い、芸能界ではたまたま名前が被る2人が並び立つことで、注目と相乗効果が生まれる。

 浅野温子と浅野ゆう子は共にスタイリッシュだが、しなやかでアンニュイな温子に対して、ゆう子は軸が強くて明るい。共演によって、お互いの良さがより引き立った。

飯島直子と網浜直子のW-NAOのお宝CD

 1990年代には飯島直子と網浜直子が「W-NAO」として、アーティスト活動を行っている。飯島はレースクイーンやキャンペーンガールを経て女優デビューし、中山秀征、松本明子と共演した深夜バラエティ『DAISUKI!』で注目された。網浜は1985年にアイドル歌手としてデビューし、ドラマ『夏・体験物語』に同期の中山美穂の友だち役で出演していた。

 W-NAOは1992年にデビューし、『孤独のRunaway』や『太陽のKomachi Angel』などB´zの楽曲をカバー。スタイルのいい2人が並んだヴィジュアルは目を引いたが、当時は知名度がそこまでなく、広く浸透するには至らなかった。1995年に自身たちで作詞を手掛けたオリジナルの4thシングル『Rescue me』が最後のリリースに。

 しかし、飯島は1994年に『ジョージア』のCMをきっかけに“癒し系”としてブレイクし、ドラマ『智子と知子』や『OUT~妻たちの犯罪~』に主演するなど女優として活躍。W-NAOのCDは後に“お宝”扱いされている。

飯島直子
飯島直子写真:アフロ

ジャニーズ初の2人組となった堂本光一&堂本剛

 アイドルグループでも、たまたま同姓や同名のメンバーが中核を担うことがある。その最たる成功例が堂本光一と堂本剛のKinKi Kidsだ。同じ1979年生まれの関西出身で、共に1991年にジャニーズ事務所入り。ジュニア時代から同姓ということで2人でフィーチャーされることが多く、“W堂本”と呼ばれていた時期もあった。

 1993年にKinKi Kidsと命名。ドラマ『人間・失格』や『若葉のころ』に2人で出演。そして、1997年にジャニーズでは初めて2人組としてデビューした。1stシングル『硝子の少年』からヒットを連発し、2020年発売の『KANZAI BOYA』まで42作連続オリコン1位という、ギネス記録を打ち立てている。王子様系の光一にワイルドな剛という対照性も含め、ただの名前繋がりからとはいえ、天の配剤に思えるデュオとなった。

SKE48のW松井は6歳差で良いバランスに

 SKE48では2008年の結成時から、松井珠理奈と松井玲奈の“W松井”が2枚看板として支えた。珠理奈は小6でSKE48のメンバーになると、いきなりAKB48のシングル『大声ダイヤモンド』で前田敦子とWセンターを務め、全国レベルで注目を浴びた。高2だった玲奈もAKB48の次のシングルで選抜入りし、人気を高めていく。SKE48のシングルは基本、珠理奈がセンターを張りつつ、玲奈とのWセンターも織り込まれていった。

 キャラクター的に珠理奈がひまわり、玲奈がかすみ草に例えられ、年齢は玲奈が6歳上。センターを巡って競い合うというより、玲奈が「エースは珠理奈」と一歩引いていたのが、グループ内で良いバランスを生んでいた。

 玲奈は2015年にSKE48を卒業して女優に転身し、ドラマ、映画、舞台と出演が途切れない。小説家としても評価されている。13年に渡ってグループを引っ張った珠理奈も、今年4月に卒業した。

櫻坂46や=LOVEでも…。奇跡に感じる偶然

 櫻坂46でも欅坂46として結成当初から、渡辺梨加と渡邉理佐の“Wわたなべ”が、センターの平手友梨奈に次ぐ人気を博した。共に長身で梨加は『Ray』、理佐は『non-no』のモデルも務めている。一方、梨加は過度におっとりしていてフェミニン、理佐はクールでカッコいいイメージと対照的だ。

 指原莉乃がプロデュースする=LOVEでは、高1の齋藤樹愛羅と高2の齊藤なぎさの年少組が、共に“さいとう”姓。現在は「ぴんくえんじぇる」とのユニット名を持つが、当初は“Wさいとう”と呼ばれていた。背格好が似ていて双子と間違われたこともあるそうで、楽曲中でも2人での歌割りが多い。

 名前の一致はただの偶然でしかないのだが、こうした例を見ていくと、共通点やバランス感が絶妙な2人が同じ名前だったことに、奇跡を感じたりもする。互いをイヤでも意識しないといけないときもあるかもしれないが、その分、自身の特性を磨くことにも繋がり、揃って成功を呼んでいるようだ。

『ドラゴン桜』で注目の南沙良の女優純度の高さ

『ドラゴン桜』の秀才女子役で光る志田彩良

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

斉藤貴志の最近の記事