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17歳の演技派美少女・原菜乃華が初の青春映画で恋のライバル役 「あざとさをとことん研究しました」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
(C)2021紺野りさ・小学館/「胸が鳴るのは君のせい」製作委員会

昨年大ヒットした映画『罪の声』でカギを握る役を演じて、胸を打った原菜乃華。17歳ながら子役からのキャリアを持ち、演技力を高く評価されてきた。公開中の『胸が鳴るのは君のせい』で少女マンガ原作の青春ラブストーリーに初挑戦。ヒロインの恋のライバル役で、あざとさや手強さに切なさも見せて、劇中にスパイスを効かせている。

小学生時代の夢がふたつ同時に叶いました

――去年の『罪の声』では予告CMから菜乃華さんの涙のシーンが目を引いて、反響は大きかったですか?

 昭和の事件を元にした映画でしたけど、同年代の友だちからも「観たよ」「良かったよ」と感想をもらえました。私の電話のシーンで泣いたと言ってもらうことも多くて、すごくうれしかったです。

――『胸が鳴るのは君のせい』は、菜乃華さんには初めての少女マンガ原作のラブストーリーだそうですが、そういうマンガを読むのは好きですか?

 大好きです。好きな作品を追うというより、気になったら手当たり次第に読んでいました。友だちにお薦めされた作品や有名どころをいろいろと。『君に届け』とか『黒崎くんの言いなりになんてならない』とかですね。スマホで上位ランキングにあるのを片っ端から読んだりもします。

――そういうマンガの実写化作品もやりたいと?

 小学生のときの夢が少女マンガ原作の恋愛映画に出ることと、ヒロインのライバル役をやることだったんです。そのふたつが今、高校生になって同時に叶いました。

――『胸が鳴るのは君のせい』の原作も読んだんですよね?

 もともと読ませていただいていた作品ですけど、オーディションを受けるに当たって、私が演じた麻友ちゃんの目線で読み返しました。あと、ドラマの『失恋ショコラティエ』を観ました。あざとさの勉強になると思って(笑)。

――石原さとみさんがヒロインを演じてました。

 そうです。石原さとみさんが大好きなので、永遠に観てました。気分を上げて、少しでも「自分は麻友ちゃん」という暗示も掛けたくて。

(C)2021紺野りさ・小学館/「胸が鳴るのは君のせい」製作委員会
(C)2021紺野りさ・小学館/「胸が鳴るのは君のせい」製作委員会

客観的な目線で見せ方にこだわりました

――そういうことが実際、演技に役立ちました?

 口元に手を持ってくると女の子らしく見えるとか、映像を観て研究しました。声のトーン、目線の動かし方……。どういうふうにしたら女の子のちょっと意地悪なところが見えるのか、すごく考えました。

――菜乃華さんが普段、あざといことをしているわけではないんですよね(笑)?

 意識的にやることはまったくないです(笑)。でも、「麻友ちゃんはこういう子なんだ」と考えながらやると、そんなに苦戦することはなかったですね。台本の1行1行に線を引っ張って、「ここはちょっとささやいてみたら面白いかも」とか、考えたことを全部書き込みました。台本が真っ黒になるくらいに。

――それは今までになかったことですか?

 見せ方の部分で、そこまでこだわったことはなかったですね。『罪の声』でも役のバックボーンはすごく考えましたけど、見せ方はほとんど考えず、現場で感じたままにやっていたんです。ずっとそうだったのが、今回は原作のあるキャラクターを見せないといけなくて、客観的な目線になっていましたね。どこをどう動かすと、画面を通じて女の子らしさやあざとさが伝わるのか。今までと全然違う、お芝居の仕方でした。

――登場シーンから萌え袖で、指をツンツンさせていました。

 そこも事前に「こう動きたい、こうしたい」と細かく書き出して、麻友ちゃんっぽさが出るようにしました。あとはマンガに照らし合わせて、「このシーンではこんな顔だったな。雰囲気はこうだったな」というのを掴んでおきました。

――声も普段と違いましたよね?

 めちゃめちゃ変えました。どのトーンがいいか、撮影前日から直前まで探っていたんです。「アー、あー、アー。ここだ!」みたいなことをずっとやっていて。目線の動かし方とかもいろいろ試して、動画を撮ったりもしました。現場ではドライでやり過ぎくらいにやってみて、監督の指示で引き算をしていく感じでした。

――そういうあざとい場面を、自分で試写で観ると?

 「ああ、やってるな」という(笑)。撮影中はずっと「これでいいのかな?」と思っていたので、観てくださった方々に麻友ちゃんらしいと思っていただけたら、うれしいです。

(C)2021紺野りさ・小学館/「胸が鳴るのは君のせい」製作委員会
(C)2021紺野りさ・小学館/「胸が鳴るのは君のせい」製作委員会

役の根っこを作ってからキャラクター性を乗せて

紺野りさによる大人気コミックが原作の『胸が鳴るのは君のせい』。原が演じた長谷部麻友は主人公の有馬隼人(浮所飛貴)の元カノで、お嬢様学校に通う美少女。有馬とまたつきあおうと猛アプローチを掛けて、彼に片思いし続けている篠原つかさ(白石聖)の心をかき乱す。

――麻友はあざとくもかわいらしい一方、つかさに「今度は隼人くんとうまくやれると思うんだ」と話したりするところは、サラッと言いながら迫力や怖さがあって。

 つかさちゃんがゾッとするところなので、どうすれば一番怖いかも考えました。でも、怖いだけのイヤな女の子にもしたくなくて。麻友ちゃんの家庭環境、有馬との楽しい思い出、友だちに見せる顔はどんな感じか……。そういうこともいろいろ想像しました。家ではずっと1人で過ごしていて、ごはんもリビングで1人で食べて、父親の恋人の香水が香っているんだろうな……とか。それを自分の中に落とし込んで、根っこを作りました。今までもやっていたことですけど、その上にキャラクター性を乗せたのがチャレンジでした。

――確かに、つかさをゾッとさせる迫力は表面的なことだけでなく、奥から滲み出るものがあってのものだったんでしょうね。『アオハライド』で高畑充希さんが恋敵役を演じて、静かな言葉で本田翼さんが演じたヒロインを打ちのめしたシーンを思い出しました。

 本当ですか? 高畑充希さんと並べていただけるのはうれしいですね。

――それと、つばさに自分と有馬のことを「特別な繋がりがあるんだよ!」などと話しながら泣き出すシーンは、切なかったです。

 つかさ役の白石聖さんとの1対1のシーンは、楽しみにしていました。麻友にはつかさちゃんの有馬へのまっすぐな想いが痛くて、純粋に相手を想えるのが羨ましい気持ちに自然となりました。白石さんのお芝居も真っすぐだったので、心をすごく動かされました。

――カットがかかっても悲しみを引きずったり?

 私はそういうことはないですね。あそこは原作でも好きなシーンだったので、撮り終わったときはホッとしました。

毎回そのときにしかできない演技をしてます

――小さい頃からいろいろな作品に出演してきましたが、特に苦労した役はありますか?

 12歳のときに『朝が来る』で妊娠・出産する役をやったときは、いろいろ大変でした。でも、私がやる役は不幸がちだったり、死にがちだったりするので(笑)、撮影が近づくたびにごはんを食べられなくなったり、友だちと話すのもしんどくなることが多くて。だから、毎回大変な気がします。

――それだけ役に入り込むんですね。何かの作品に出て、何かに目覚めたとかは?

 毎回達成感はすごくあって、そのときにしかできないお芝居だったと思う作品は多いです。

――子どもの頃からだと、心身ともに成長していく中で、ひとつひとつの作品と出合うわけですからね。

 『罪の声』もちょうど自分の中で女優を続けていけるか考えていた頃で、「絶対夢を諦めない」という望ちゃんの役は、あの時期だからできた気がします。だから、毎回同じお芝居にはならなくて、ひとつの作品に出るたびに成長できたと思います。

――元から自分と近かった役もありますか?

 望ちゃんは夢を追っている部分はすごく近いと思いました。でも、私が持ってない強さやポジティブなところを持っている子でした。

――『胸きみ』の麻友は、自分との距離感でいうと?

 麻友ちゃんは元が弱い子だと思うんです。愛されたいとか寂しい想いが根っこにあるからこそ、相手を試すような行動を取ったり、人を信じられなくて疑ったり。そこは私を含め、多くの人が持っているものかもしれないですね。つかさちゃんにはもちろん共感しますけど、麻友ちゃんに共感できる人も多いと思います。

トライストーン・エンタテイメント提供
トライストーン・エンタテイメント提供

友だちに「おばあちゃん」と言われます(笑)

――普段の菜乃華さん自身はどんな人ですか?

 すごい人見知りだと思います。自分の気持ちを言葉にするのが苦手で、言いたいことが相手に伝わるように頭で組み立てられなくて、しっちゃかめっちゃかになってしまうんですよね。あと、友だちからは「おばあちゃん」と言われます(笑)。SNSに疎くて、最近始めたインスタも更新に時間がかかってしまって。女子高生に流行っているものや言葉もよく知らなくて、流行っている曲も友だちに教えてもらっています。

――自分ではどんな音楽を聴くんですか?

 最近は中森明菜さんが好きです。お母さんの影響で、ずっと聴いていたり、ライブ映像を観たりしてます。一番好きな曲は『1/2の神話』です。

――YOASOBIとかヒゲダン(official髭男dism)とかではないんですね。

 でも、邦楽ロックは好きで、Mrs.GREEN APPLEさんをよく聴いています。

――17歳のJKらしいことは、何かしてませんか?

 たぶんまったくしてないと思います(笑)。友だちと遊んでるときが唯一、高校生だなと感じる瞬間ですけど、今はコロナ禍で遊びにも行けなくて。でも、自粛中に仲良い子とビデオ通話はしていました。テスト勉強でみんなと5時間くらい繋いで、私はひたすら教えてもらってました(笑)。

不幸な役が多いのでコメディもやれたら

――今、仕事以外で興味を持っていることはありますか?

 アニメが最近、自分の中で来てます。友だちに薦められたものを片っ端から観ていたら、本当にハマっちゃって。とりあえず『ハイキュー!!』や『ヒロアカ(僕のヒーローアカデミア)』は全話観て、『進撃の巨人』も1話から観て追い付きました。

――その辺のアニメはシリーズ化されていて、結構な話数がありますよね?

 ソファーに座って、ずーっと観ていて、数日間動けなくなるんですよ(笑)。あと、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』を友だちの薦めで観たら、めちゃめちゃ良かったです。ラブストーリーは意外と観てませんけど、最近『ホリミヤ』を好きになりました。

――ドラマや映画は観ないんですか?

 たくさん観ます。やっぱり石原さとみさんが好きなので、『リッチマン、プアウーマン』とか『ディア・シスター』とか、いろいろ観ました。1シーンでも表情が何回も変わって、キラキラして見えるのが本当にうまいなと思います。

――女優としては、どんなところを目指しているんですか?

 大きい目標は、おばあちゃんになってもずっと、このお仕事を続けられたらいいなと。『胸きみ』では今までと違う目線でお芝居に取り組んで、原作のキャラクターに寄せる作業が難しいけど楽しかったので、もっとできたらと思います。

――ぶっちゃけ、演技力には自信を持ってますよね?

 本当にまだまだです。現状でやれることは毎回頑張ってやってますけど、全然満足はしてなくて。役が決まるたびに「私でいいのかな?」と思ってしまうので、ちゃんと自信を持てるようになりたいです。

――とりあえず頑張りたいことは?

 私は暗いとか怖い雰囲気を持っているらしくて(笑)、不幸っぽい役が多いので、完全なコメディもやりたいです。そのためにも、明るく見えるようになりたいです(笑)。

Profile

原菜乃華(はら・なのか)

2003年8月26日生まれ、東京都出身。

2009年に子役としてデビューし、映画『地獄でなぜ悪い』やドラマ『朝が来る』で注目される。その他の主な出演作は、ドラマ『ビンタ!』、『二つの祖国』、『死との約束』、映画『3月のライオン』、『はらはらなのか。』、『無限ファンデーション』、『罪の声』など。6月21日スタートのドラマ『ナイト・ドクター』(フジテレビ系)に出演。

『胸が鳴るのは君のせい』

公式HP

(C)2021紺野りさ・小学館/「胸が鳴るのは君のせい」製作委員会
(C)2021紺野りさ・小学館/「胸が鳴るのは君のせい」製作委員会

『胸きみ』映画化で白石聖が見せた王道ヒロイン力

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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