Yahoo!ニュース

『ドラゴン桜』の秀才女子役で光る志田彩良。演技ノートを作り「泣こうとしなくても涙が出ました」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
撮影/河野英喜

今期のドラマで視聴率トップを走り、東大受験に向けてさらに盛り上がりを見せる『ドラゴン桜』。落ちこぼれ高校の中でも成績優秀で文系トップの小杉麻里を演じているのが志田彩良だ。役柄通り聡明そうな佇まいを見せつつ、前回の6話ではDVをふるう父親を庇ったり、感情を爆発させる演技も話題を呼んだ。10月には主演映画の公開も控える彼女のバックグラウンドを探った。

普段は役と真逆でよく笑ってます

――現在、『ドラゴン桜』に『ゆるキャン△2』と出演ドラマ2本が放送されていますが、印象が全然違いますね。

志田 普段はよく笑うタイプで、『ゆるキャン△2』の斉藤恵那のほうが自分に近いです。逆に、『ドラゴン桜』の小杉麻里は自分と真逆で、それぞれに演じる楽しさがあります。

――デビューしてから陰のある役が続きました。

志田 そういう役が多いです。第一印象では「暗そう」「静かそう」と言われがちなので、見た目のイメージはあるのかなと思います。でも、友だちにも「話すと全然違った」と言われます。

――実際の学校では、どういうタイプだったんですか?

志田 クラスでもすごくしゃべるほうでした。明るいグループにいて、笑いのツボはかなり浅いと思います(笑)。

――もともと小学生のとき、お母さんがネットに上げた写真からスカウトされたそうですが、自分でも芸能界に入りたい気持ちはあったんですか?

志田 母が写真を上げたのが、「やってみたいかも」と思い始めていた時期だったんです。だから、事務所からお話があって、すぐ入れてもらいました。

――「やってみたい」と思ったのは、何かきっかけが?

志田 これというものはないですけど、ドラマは母と一緒によく観ていて、自然にやりたいと思うようになったのかもしれません。

――女優デビューして短編映画から主演が続いて、演技に自信を持った感じですか?

志田 いえ、今も自信はなくて、『ドラゴン桜』の現場でも「あのシーンはダメだった」とか話してます。共演のみんなが「大丈夫だよ。良かったよ」と勇気づけてくれるので、「頑張ろう」という気持ちになります。

一度だけ国語でクラス1位を取りました

――『ドラゴン桜』で演じている文系トップの小杉麻里は、本当に頭が良さそうに見えますが、志田さんも成績優秀だったんですか?

志田 全然です(笑)。勉強はあまりした記憶がありません。でも、高校時代に国語の勉強をすっごく頑張ったことがあって。そしたら、クラスで1位を獲れたんです。そのときに「やればできるんだ」と思いました。

――桜木先生が教えるような、特別な勉強法をしたとか?

志田 いつもは試験の前日に詰め込むのを、3日前からやっただけです(笑)。

――それでクラス1位とは、本当にやればできる子だったんでしょうね。

志田 暗記は得意だったので、国語の教科書に書いてある文章を全部覚えました。何回も繰り返し読んで、台本を覚える感覚で頭に入れました。

――あっ、なるほど。

志田 そのときは、国語の先生の教え方がわかりやすくて、すごくやさしかったので、やる気が出たんですけど、1回良い点を取れたら満足しちゃって。次からはまた、試験前日の詰め込み式に戻りました(笑)。

――好きな言葉が“雲外蒼天”だそうで、そういう言葉を知っているのも、勉強していたからかと思ってました。

志田 その言葉は何かの本で知ったのかもしれません。詩集はよく読んでいて、特に茨木のり子さんが好きです。

凛として強く見えるように意識してます

――『ドラゴン桜』の生徒役はオーディションで決まったそうですが、原作を読んで小杉麻里役が来そうな予感はありました?

志田 早瀬菜緒ちゃんが普段の自分と一番近いキャラクターだったので、もしかしたらこの役ができるかなと思っていました。そしたら、まさかの自分と真逆の小杉麻里ちゃん役で驚きました。

――菜緒役の南沙良さんも「明るい役は自分と真逆」と言ってました(笑)。撮影に入る前に、準備したことはありました?

志田 いつもノートに役のことをいろいろ書き出します。台本を読んで感じたことや、今回だとDVの被害を受けた方の記事や資料を読んだり、そうした題材の作品を観て思ったことも全部書きました。数10ページくらいになったかな。現場にはそれを読み返してから行くようにしています。

――演じるのに役立っていますか?

志田 はい。6話のような大事なシーンの前や、自分の中で迷ってしまったときに読んで、基本に戻ったりします。

――麻里役について書いたどんなことが、感情を爆発させた6話で活きたのでしょう?

志田 ちょっと恥ずかしいので、内緒にしておきます(笑)。

――頭が良さそうに見えることも意識していますか?

志田 そうですね。麻里ちゃんは凛として強いイメージがあるので、そういうふうに見えるように、立ち姿から気をつけてます。

役に毎回新しい一面が出るのが面白くて

――一方、麻里は東大専科と勝負した学年トップの藤井遼を「尻尾を巻いて逃げ出すつもり?」と挑発して勝ち気なところを見せたり、水野先生に「勝手なことをしないでください!」と怒ったりもしてました。

志田 毎回の台本をいただくたびに、麻里ちゃんの新しい一面が出てきて、5話では大食いキャラになっていたり(笑)。そこが演じていて面白いです。麻里ちゃんは“こういう役”というより、根の部分は固めつつ、どんどん付け足していく感じですね。東大専科のみんなと絡み始めたから、また違う麻里ちゃんになっていくと思います。

――根の部分というのが、さっき出た凛々しさや強さ?

志田 あと、幼なじみの(原)健太のことを気に掛けているやさしい部分も、大事にしたいと思っています。

――発達障害で孤立していた健太に、麻里はずっと寄り添っていました。

志田 麻里ちゃんは父親のこともある中で、逆に健太に一番支えてもらっていたと思うんです。面倒を見ている感覚は本人にはないのかなと考えて演じています。

どう演じるか寝る前にずっと考えてました

――志田さんと麻里は真逆とのことですが、似ているところもないですか?

志田 本当に1コもないくらい、真逆だと思います(笑)。

――でも、カメラが回れば役に切り替わると。

志田 『ゆるキャン△』は自分にすごく近い役なので、控え室にいたときの自分のまま、お芝居をする感じでしたけど、『ドラゴン桜』ではカメラが回って「スタート!」と言われた瞬間、一気に切り替わります。カットが掛かれば、またすぐ素の自分に戻ります。専科のみんなもそんな感じですね。役と普段でギャップのある方が多いので。だから、自分も自然と同じようにできている気がします。

――演じ方に悩んだりはしてませんか?

志田 今までで一番難しい役柄だとは思います。感情的になることも多くて、水野先生とのシーンみたいに怒ったり、ここまで家庭環境が複雑な役も経験なかったので。大事なシーンを撮影する前日は、どうやって演じたらいいのか、寝る前にずっと考えてしまいます。

――6話の父親とのシーンとかで?

志田 そうですね。麻里ちゃんにとって大事な回でしたから。感情を出すシーンも多かったんですけど、泣くところで初めて、泣こうとしなくても自然に涙が出ました。

役と唯一の共通点は大食いなこと(笑)

――麻里と似てるところはないとのことですが、大食いなところはどうでしょう?

志田 そこは唯一似てるかもしれません(笑)。私も結構食べるほうで、この前も朝にパンが食べたくて買って撮影に行ったら、楽屋にパンのお弁当を用意していただいていたので、朝から5コ食べました(笑)。

――あとで胃がもたれたりせず?

志田 全然ないです。お昼にはまた、ちゃんとお腹がすいて、残さず食べました(笑)。

――今まで、何かを何杯食べたみたいな記録はありますか?

志田 高校時代は周りの友だちもよく食べる子ばかりで、ラーメン大盛りにごはんに唐揚げみたいなのが当たり前の環境で育ちました(笑)。一度「ハンバーガーを何コ食べられるかな?」という話になって、そのときは5コ食べました。また別の日に「うどんは何杯いける?」となって、3杯食べたと思います(笑)。そういう勝負はよくやってました。

悲しくて泣いたときも鏡を見て演技に繋げます

――今、志田さんが自分で勉強していることはありますか?

志田 やはりお芝居ですね。普段生活していて、悲しいことがあって泣いているときも、「鏡で見て自分の泣いてる顔を勉強しよう」と思ったりします。本当に悲しくても、頭の片隅に「お芝居に繋がるんじゃないか」という意識があって、「こういう顔をして泣いているんだな」と。

――女優さんらしいですね。怒ったときもそういうことをするんですか?

志田 さすがに人前で鏡は見ませんけど(笑)、1人でイライラしてしまったり、自分の中で何かあったとき、「今の感情はお芝居に使えそう」とか常に考えて生活しています。

――東大専科ばりに、志田さん独自の演技のメソッドみたいなものはありますか?

志田 変わったやり方ではないかもしれませんけど、先ほどもお話したように、いつもノートに役のことを書いています。台本にない部分も「こういう生活をしている」「好きな食べ物は何か」などと想像していて。

――麻里に関しても、そういうことまで書いたんですね。

志田 お父さんに対する想いだったり、専科の1人1人との相関図を作って「この人のことはこう思ってる」と書いたりしました。その気持ちが変化したら、また新しい相関図にして「今はこう思っている」と書き直しました。

――頭で考えるだけでなく、書き出すことが大事なんですか?

志田 そうですね。現場で迷ってしまうこともあるので、そういうときに「どう考えていたんだっけ?」と見返せるようにしています。

――最初の印象は大切だと?

志田 考えすぎるとどんどんわからなくなってしまうので、新鮮な状態で書いたことが役立つことは多いです。

日曜劇場の現場は表情の勉強がすごくできます

――撮影のあとに1人反省会もするんですか?

志田 はい。普段はわりとポジティブなほうですけど、お芝居は本当に難しくて、ずっと未知なもので、ネガティブになることも多いです。でも、『ドラゴン桜』の現場では、みんな仲が良いので、自分が悩んでいることを聞いてもらったり、逆に誰かの話を聞くこともあって。みんなでドラマを作っている感じがすごくします。

――演技の面白みは、どんなところに感じますか?

志田 自分と違う人の役を演じるからこそ、普段はない感情に出合うことも多いです。毎回が新しい自分と巡り合うチャンスで、そこは楽しいところだと思います。

――女優として、当面の課題にしていることはありますか?

志田 表情のお芝居が苦手なんです。昔から怒っても友だちに「怒っているのかわからない」と言われたり。『ドラゴン桜』の福澤(克雄)監督は表情をすごく大事に撮られているので、勉強させていただくことは多いです。

――この日曜劇場で数々の名作を生んできました。

志田 共演者もスタッフの皆さんもすごい熱量でやられている作品に参加できて、本当に光栄です。ひとつひとつの現場を大切にして、自分の引き出しを少しでも増やしたいなと思っています。

撮影/河野英喜

志田彩良(しだ・さら)

1999年7月28日生まれ、神奈川県出身。

2014年に短編映画『サルビア』に主演して女優デビュー。主な出演作は映画『ひかりのたび』、『パンとバスと2度目のハツコイ』、『mellow』、ドラマ『チア☆ダン』、『his~恋するつもりなんてなかった~』、『ゆるキャン△』、『だから私はメイクする』など。ドラマ『ゆるキャン△2』(テレビ東京系)に出演中。10月15日公開の映画『かそけきサンカヨウ』(今泉力哉監督)に主演。

日曜劇場『ドラゴン桜』

TBS系/日曜21:00~

公式HP

TBS提供
TBS提供

『ドラゴン桜』で注目の南沙良。「自分と正反対の役」で光る女優純度の高さ

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

斉藤貴志の最近の記事