Yahoo!ニュース

桜井日奈子が「昔の自分と重なる」反抗期の高校生に。『17 AGAIN』でミュージカルに初挑戦

斉藤貴志芸能ライター/編集者
撮影/松下茜

女優デビューから5年。数々の映画、ドラマに出演してきた桜井日奈子が、ミュージカルに初挑戦する。35歳の男が突然17歳の頃の姿に戻るコメディ『17 AGAIN』で、竹内涼真が演じる主人公の娘役。“岡山の奇跡”と呼ばれてデビューした頃の自分と重なる部分もあるという。上演の1ヵ月ほど前、歌もダンスもある稽古に奮闘している最中に話を聞いた。

「歌わないで」と注意されます

――ミュージカルに興味はあったんですか?

桜井 お友だちの葵わかなちゃんが出ていた『ロミオ&ジュリエット』を観に行きました。

――自分もやりたいと?

桜井 できたらいいなとは思っていました。私はダンスは得意なので、歌さえクリアできればやれるんじゃないかと、勝手に考えていて。実際に今回のお話をいただいて、稽古をしてみたら……難しいです(笑)! 

――どんなところが?

桜井 ミュージカルって、歌、芝居、ダンスと分かれているのかと思ったら、歌の中で芝居が進んでいくんですね。私はよく「歌わないで」と注意されます。歌ってはいても、ちゃんと台詞として伝えるように、という。私がまだちゃんとわかってない部分です。他にもやることがたくさんありすぎて……。自分が出るシーンだけでもこんなに大変なのに、主演の竹内さんは初めての舞台で出ずっぱり。それを見ていたら、弱音なんて吐いていられません。みんな命を削ってやっています。

体幹トレーニングは毎日欠かしません

――ダンスはYouTubeにも上げていますが、いつ身に付けたんですか?

桜井 特に習っていたわけではないです。体育の授業でやった程度ですけど、運動神経がいいと言われるのと、体幹が強くてリズム感もあるみたいで、「習ったことがないわりにはうまいね」と言ってもらうことは多いです。

――歌はカラオケに行ったりしてます?

桜井 このミュージカルに備えて、去年の11月からボイストレーニングをしていたおかげで、声量が出て音域が広がったので、カラオケに行くのが楽しくなりました(笑)。

――どんな曲を歌うんですか?

桜井 前は声が出なくて、back numberさんとかミスチル(Mr.Children)さんとか、男性でちょっと高いくらいが自分にはベストだったんです。今は女性の歌も臆することなく、ガンガン歌うようになりました。宇多田ヒカルさんとか、すごく高いじゃないですか。前は絶対手を出せなかったのが、今は挑戦しています。

――ミュージカルの歌い方は、カラオケとはまた違いますよね?

桜井 そうですね。声が「それじゃ小さくて聞こえない」と言われます。インナーマッスルを強化するために、トレーニングを毎日欠かさずやっています。体幹だけはしっかり付きましたけど、それを歌でちゃんと使えるようにならないといけなくて。周りの皆さんの声量が本当にすごいので。

中3から高校卒業まで反抗期でした

『17 AGAIN』はザック・エフロン主演で全米1位を記録した映画が原作のミュージカル。マイク(竹内)はハイスクール・バスケットボールのスター選手だったが、恋人のスカーレット(ソニン)の妊娠を知り、すべてを捨てて彼女と人生を共にすることを決意した。しかし、35歳になった2人の結婚は破綻。仕事もうまく行かず、親友の家に転がり込むが、ある日突然17歳の頃の姿に戻ってしまう。娘のマギー(桜井)らと同じハイスクールに通うことになって……。

――日奈子さんが演じるマギーは「大反抗期」とのことで、「私も反抗期は長くあったので共感できます」とコメントされていました。日奈子さんは優等生のイメージだから、ちょっと意外でした。

桜井 そう思いますよね(笑)。でも、本当に大反抗期があって、中学3年から高校卒業まで、長いこと続いてました。

――どんな反抗をしていたんですか?

桜井 父親と口をきかなくなりました。何か話し掛けられても「別に」とか言って、同じ空間にいないように、すぐ別の場所に行ってしまったり。別に父親に何かされたわけではないんです。でも、マギーがお父さんを「嫌い、嫌い」と言っているのは、当時の自分と重ねています。

――日奈子さんは何でそんなにお父さんを嫌っていたんですかね?

桜井 本当にわからないんです。でも、上京して1人暮らしを始めたら、お父さんが私を気に掛けてくれていたことがわかって。愛情に気づいてなかったんでしょうね。今は仲良しで、よく一緒にカラオケに行ったりしています。

大人を上から見て親を叱りつける気持ちで

――マギーは反抗期という以外には、どんなキャラなんですか?

桜井 弟をいじめている学校のキングとつき合っていて、それもお父さんとお母さんへの反抗の気持ちからなんですよね。ヘンに思い切りのある子です。両親がたまにすごく子どもっぽいのを見て、自分が大人にならざるをえない部分があったのかなと、解釈しています。

――その辺も日奈子さん自身にあった感覚ですか?

桜井 自分が大人になるほど、高校生をまだ子どもと思っちゃいますけど、当時の自分たちには、逆に上から大人を見て「全部わかってるよ。子どもじゃないんだよ」という気持ちがあった気がするんです。反抗期のマギーがお父さんやお母さんに口答えするシーンがあって、演出家さんからも「親を叱りつけるつもりで」と言われます。

――他に演出で言われることはありますか?

桜井 登場人物がみんな個性が強くて、その中でマギーはまあまあ普通で、常識のある子なんですね。でも、それだけだと埋もれてしまうから、「思い切り良く、弾ける感じでいこう」と。中指を立てるシーンが結構あるんです(笑)。強気で勝ち気な女の子で、「こんなにプンプンしていて大丈夫かな?」と思ってしまうくらいです。

――日奈子さんは女優デビューが舞台でしたが、映像とは芝居の仕方も違いますよね?

桜井 違いますね。遠くのお客さんにも伝わるように、発声や体の動きを変えないといけなくて。よく言われるのが重心の使い方です。気持ちがガーッと前に出るときは、重心も前のめりにする。舞台ではカメラで抜かれるわけでないから、全身で伝えることを意識しないと、どうしても上半身だけのお芝居になってしまって。そういう表現の仕方は、慣れるのに本当に時間がかかります。

胸がザワザワしてコンテストに応募しました

――『17 AGAIN』はマギーの父親のマイクが17歳の頃の自分の姿に戻ってしまうストーリー。日奈子さんの17歳というと、デビューした頃でしたっけ?

桜井 スカウトされた頃ですね。きっかけになった「岡山美少女・美人コンテスト」に出たときが17歳でした。そのとき、コンテストに出る決断をしていなかったら、今の私はなくて。マイクと同じように、17歳が自分の転機でした。

――コンテストに出ることは、悩んだ末に決断したんですか?

桜井 悩みました。大勢の人の前に出る機会はほとんどなかったし、目立つことを好んでするタイプでもなかったので。まして、容姿を評価されるような場所に自ら行くのは……と、応募締切の当日ギリギリまで悩んで、出ることに決めました。何かわかりませんけど、胸がザワザワしたんです。

――人生が変わりそうな予感が?

桜井 そこまで大きな想像はしていませんけど、出たら何かがどうにかなっちゃうかも……みたいなザワザワを感じたのは確かです。自信はなかったから、「グランプリを目指します!」という勢いではなくて。何かひとつ賞に引っ掛かったら……くらいの感じでした。そこでおじけづいていたら、出ていませんでした。

ラジオをたくさん聴くようにしてます

――この4月には24歳になりました。まだ誕生日はうれしいですか?

桜井 うれしいです。でも、来年25歳になったら、どうですかね? 事務所の社長には「24歳はもう若くないよ」と言われました。確かに23歳まではギリギリ若かったと思うので、これからは大人の女性を目指していきます。

――前回の取材でも「大人としての知識と教養を身に付けたい」と話してましたが、何か勉強しているんですか?

桜井 たいしたことではないですけど、広くアンテナは張っていたいなと思います。(MCをしている)『沼にハマってきいてみた』に出ていても、何かハマっているものがないと、つまらない人間になってしまう気がして。そういう意味で、ラジオをたくさん聴くようにしています。

――どんな番組を?

桜井 有吉(弘行)さんの『SUNDAY NIGHT DREAMER』とか、最近始まった『オールナイトニッポンX』のフワちゃんやぺこぱさんとか。芸人さんの面白いラジオが好きなので、ハライチさんや空気階段さんの番組も聴いています。

――自分でもラジオをやりたいとか?

桜井 今の私のトーク力や知識だと、面白い話ができる自信はないですけど、いつかはやりたいと思っています。

不安でも「やってやるぞ!」という気持ちで

――『17 AGAIN』は地方公演が7月まである長丁場ですが、体力的には問題なさそう?

桜井 いえ、大丈夫か心配です。初めてのミュージカルで、まずノドが持つのか。ダンスも結構激しいんですよね。3ヵ月あって、「やってやるぞ!」という気持ちがないと負けてしまいそうなので、やってやります(笑)!

――体力作りのために、今からしていることもあるんですか?

桜井 稽古終わりにマネージャーさんにつき合ってもらって、事務所の大きい会議室でトレーニングをしています。YouTubeに上がっている動画を参考に、ヒーヒー言いながらやってますけど(笑)、だんだん体力はついてきました。

――稽古の中で、ミュージカルの楽しさが見えてきたりはしてますか?

桜井 みんなで作る感覚がより強いのが、ミュージカルだと思います。初めてのダンスの振りを入れて「難しいね」と言いながら、その難しさやしんどさも楽しむ感じを、みんなで共有できるのがいいです。

――本番までに、特に強化しておきたいことはありますか?

桜井 やっぱり歌ですね。歌うのでなく伝えるというニュアンスが、まだ掴み切れてないのを、残りの稽古期間でしっかり掴んで、お客さんに楽しんでもらえたら。驚いてもらえるくらいのものを見せたいです。

撮影/松下茜

Profile

桜井日奈子(さくらい・ひなこ)

1997年4月2日生まれ、岡山県出身。

2014年に「岡山美少女・美人コンテスト」にて美少女グランプリを受賞。2016年に舞台『それいゆ』で女優デビュー。主な出演作は、ドラマ『僕の初恋をキミに捧ぐ』、『ヤヌスの鏡』、『ふろがーる!』、『マイルノビッチ』、映画『ママレード・ボーイ』、『ういらぶ。』、『殺さない彼と死なない彼女』など。『沼にハマってきいてみた』(NHK Eテレ)で月曜MC。

ミュージカル『17 AGAIN』

5月16日~6月6日 東京建物Brillia HALL

6月11日~13日 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール

6月18日~20日 鳥栖市民文化会館 大ホール

6月26日 広島文化学園 HBGホール

7月1日~11日 御園座

公式HP

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

斉藤貴志の最近の記事