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若手発掘ドラマ『私の卒業』で初主演の三浦理奈。真っすぐな役は「作り込んでなくて女子高生そのものです」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
撮影/河野英喜

今後の活躍が期待される若手俳優・女優を発掘する『私の卒業』プロジェクトの第2期として、3本の短編ドラマがYouTubeで配信されている。オーディションで選ばれた19人をワークショップを経て配役。『センパイの卒業式』で初主演を務めたのが三浦理奈だ。5年前、登竜門のホリプロタレントスカウトキャラバンで審査員特別賞を受賞した17歳。演技経験がほぼなかった中、純粋さが真っすぐに出ていて心が洗われる。

中学ではずっと走り回ってました(笑)

――理奈さんは5年前のホリプロタレントスカウトキャラバンで審査員特別賞を受賞しました。Huluの番組企画でスカウトされての出場でしたが、もともと芸能界に入りたかったんですか?

三浦 全然なかったです。将来の夢は何もなくて、のほほんと生きてました(笑)。

――当時は中1で、どんな学校生活を送ってました?

三浦 休み時間はずっと走り回ったり、遊びまくってました(笑)。鬼ごっこをしたり、かくれんぼしたり。教室でも、はしゃいでましたね。

――陸上部だったんですよね?

三浦 はい。走るのは好きで、体育委員長も頑張りました。「学校内のギネスを作ろう」ということで、鉄棒とか懸垂とか何回できるか挑戦する大会で、記録を取ったりしました。

――スカウトキャラバンで賞を獲って、初めて学校に行った日は、大騒ぎになったでしょうね。

三浦 学校内を歩くたびに、「おめでとう」「おめでとう」とたくさん言ってもらいました。スカウトキャラバンに出ることは一切言ってなかったんですけど、Huluのライブ番組や朝のニュースで、みんな知ったらしくて。

――それから5年。早かったですか?

三浦 あっという間でしたね。中学まで滋賀にいて、高校入学をきっかけに上京して、最初は緊張ばかりしていたのが、だんだんお仕事を楽しめるようになってきました。

撮影/河野英喜
撮影/河野英喜

オーディションに落ちて電車でも泣いてました

――去年までで、特に印象に残っている仕事は何ですか?

三浦 初めてのムービー撮影だった「カラオケ まねきねこ」さんの広告で、アフレコがうまくできなくて。「もっと元気に」と言われたのに、なかなか元気なテンションで話せなかったんです。悔しくて、めっちゃ泣いてしまって、最後も泣きながら花束を受け取りました。

――東京生活にはもう慣れました?

三浦 人の多さにビックリしなくなりました(笑)。電車も乗り換えで迷子になっていたんですけど、ちゃんと辿り着けるようになって、成長したなと思います。

――オーディションもいろいろ受けているんですか?

三浦 はい。全然できなくて悔しすぎて、大泣きしたこともあります。その場で泣いて、電車でも歩きながらもずーっと泣いて、家に帰ってからも泣いてました(笑)。

――電車で周りに人がいる中でも?

三浦 泣いてました。でも、マスクをして外を見ていたので、バレてなかったと思います。

――そんなこともありつつ、『私の卒業』プロジェクト第2期では、3本の配信ドラマのうちの1本の主演に選ばれました。

三浦 オーディションをして、受かってからワークショップが4回あって、選んでいただきました。

――今回は手応えもあったんですか?

三浦 オーディションでは台詞がちょっと飛んでしまって。何回かやらせてもらえるのかと思ったら1回だけだったので、「ダメだったかな……」という感じでした。

撮影/河野英喜
撮影/河野英喜

一途な役には自分と近いところがありました

『センパイの卒業式』で三浦が演じた高校生の綾香は、先輩の匠(鈴木志遠)に想いを寄せていた。綾香に「話がある」と言い残したまま、コロナで卒業式もできずに街から消えた匠が、SNSでライブ配信しているのを見つける。変わり果てた姿に、綾香は「あなたの秘密をバラす」とメッセージを送ってしまう。

――ワークショップから、『センパイの卒業式』の綾香を演じていたんですか?

三浦 いえ、今回の3作品のうち、他の2作は準備稿から、みんなで考察しながらやっていたんですけど、『センパイの卒業式』はワークショップの最後のほうに台本を読ませていただきました。

――3作の中でも、綾香役が自分に合う感じはしました?

三浦 そうですね。綾香ちゃんは一途で、先輩のことをずっと想い続けている子で、自分と近いものがあって、演じやすかったです。……なんか、自分が一途だと言っているみたいですね(笑)。

――綾香はストレートな性格みたいで、自然体というか、普通に学校にいそうな子に見えました。

三浦 作り込むことはあまりなかったです。女子高生そのもの、みたいな女の子でした。

――純粋さも感じました?

三浦 「どんな先輩でも受け入れます」という台詞があって、外見が変わっても中身のやさしさを見ているところが、純粋に感じました。

――撮影で特に印象に残っていることは?

三浦 最後のシーンで、綾香ちゃんが自分から先輩に……。あそこはちょっと恥ずかしかったんですけど、頑張りました(笑)。あと、橋を走るシーンは体力的にキツかったです。

――走るのは得意だったのでは?

三浦 最近は全然運動してないんです。1回走っただけでしたけど、距離がすっごい長くて。制服でバッグを持って猛ダッシュ。最後はバッテバテでした(笑)。

撮影/河野英喜
撮影/河野英喜

撮影初日の前は1時間しか寝られなくて

――演技的に悩んだところはありました?

三浦  綾香ちゃんはこのとき、どう思ったんだろう? なんでこの発言をするんだろう? ……とか考えすぎちゃって、わからなくなるときがありました。表情についても、1コ1コ監督に相談することが多かったです。

――たとえば、どの辺のシーンで?

三浦 台本で「…………」となっている、喋らないシーンですね。「私はこういう気持ちだと思ったんですけど、どうですか?」と聞いていました。(親友の)かおるちゃんとのシーンで、そういうことが多かったです。かおるちゃんが匠先輩のことをいろいろ言ってきたときに、綾香ちゃんは「ああ、そうか」と思うのか、「何やねん!」みたいな感じなのか。そういうときに、監督に助けを求めました。それで、チラッとかおるちゃんを睨んだりしています。

――主演のプレッシャーもありましたか?

三浦 ものすごくありました。YouTubeで観てもらうことを考えたら、自分の演技を見せるのが怖くなっちゃって……。プレッシャーに押し潰されそうでした。

――高石明彦監督は理奈さんについて「肝が据わってる」とコメントしてました。

三浦 自分ではわかりません。撮影初日の前夜は緊張しすぎて、「ちゃんとできるかな……」とか考えていたら、1時間くらいしか寝られませんでした。でも、撮影が始まったら、現場でみんなとコミュニケーションが取れて、だんだんプレッシャーはほぐれていきました。

――高石監督は理奈さんが「綾香に入り込んでいた」とも評しています。自分でもそういう感覚はありましたか?

三浦 自然に涙が出てきたことはありました。カットがかかってから「ちゃんと綾香ちゃんになれていたのかな」と思いました。

撮影/河野英喜
撮影/河野英喜

現場でリセットすることが大事だと学びました

――主演作を1本撮って、多少なりとも自信になりました?

三浦 無事に撮り終えて良かったです。でも、まだまだ、もっともっと、勉強しないといけないと思いました。自分に足りないことがすごくわかったので。表情とかまばたきも全然できてなくて、先輩方の映画やドラマを観て、もっと研究していきたいです。

――演技レッスンは受けているんですか?

三浦 受けてないです。でも、今回のワークショップを通じて、映像の演技で大事なことをいっぱい教えていただきました。

――たとえば、どんなことを?

三浦 表情のこともありますし、現場に着いたらリセットすることが大事だとわかりました。いろいろ考えてきたことは頭の中にちゃんとあるうえで、1回ゼロにする。そうしないと、自分が思ったことと監督の意見が違ったとき、切り替えられなかったりもするので。

――スカウトキャラバンの同期でグランプリだった吉柳咲良さんの活躍は、刺激になりますか?

三浦 さくちゃんが出ている『青のSP』を一緒に観たりしています。私もいろいろな作品に出たいので、刺激になります。

撮影/河野英喜
撮影/河野英喜

ビビリだけどホラーに出たいです(笑)

――『私の卒業』にちなんで、理奈さん自身の卒業にまつわる思い出はありますか?

三浦 陸上部の先輩たちが大好きだったので、引退式では1人1人にお礼を言いながら、大泣きしてました(笑)。

――自分の中学卒業のときは?

三浦 上京することが決まっていて、友だちとお別れするのはすごく寂しかったです。涙もろいので卒業式は絶対大泣きすると思っていたら、涙がひと粒も出なくて(笑)。何でだろう? 寂しさはありつつ、東京での高校生活が楽しみとも思いながら卒業しました。

――上京する日も、ドラマチックなことがあったわけではなく?

三浦 その日は友だちが朝早くから家まで来てくれて、プレゼントを渡してくれました。やさしくて、「いい友だちを持ったな」と思って泣きました。

――4月からは高3。高校最後の1年はどう過ごしますか?

三浦 私は面倒くさがり屋で勉強も手を抜いたり、家にこもりがちなんですけど、もっと友だちと思い出を作って、勉強もやり切る1年にしたいです。

――女優として、差し当って目指すことは?

三浦 いろいろなジャンルの作品に挑戦できたらいいなと思います。特にホラーやアクションが大好きなので、いつか出られるように頑張ります。

――ホラーが好きなんですか?

三浦 はい。自分が出たいと思ったきっかけは、『死霊館』です。まだ小さい女の子の演技がとても上手でビックリしました。メイキングでは監督と普通に話し合っていて、すごいなと思ったんです。

――ホラーを観ても、あまり怖がる感じではなくて?

三浦 めっちゃビビリます(笑)。怖すぎて真剣に観られないから、携帯をチラチラ見て、気を逸らしてます。でも、出たくて(笑)。怖い場面で絶叫したいです。

『センパイの卒業式』撮影現場にて
『センパイの卒業式』撮影現場にて

Profile

三浦理奈(みうら・りな)

2004年1月1日生まれ、滋賀県出身。

2016年の「第41回ホリプロタレントスカウトキャラバン PURE GIRL 2016」で審査員特別賞。ドラマ『記憶捜査2~新宿東署事件ファイル~』、嵐の「HELLO NEWDREAM. PROJECT」の『A・RA・SHI -for dream ver.-スペシャルムービー』などに出演。「私の卒業」プロジェクト第2期の『センパイの卒業式』で初主演。

『センパイの卒業式』撮影現場にて
『センパイの卒業式』撮影現場にて

『センパイの卒業式』前編

『センパイの卒業式』後編

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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