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“シンデレラ”でない美形の新人女優・森日菜美 『ハルとアオのお弁当箱』出演で19歳から飛躍を目指す

斉藤貴志芸能ライター/編集者
撮影/松下茜 へア&メイク/円谷歩美

10月からスタートした深夜ドラマ『ハルとアオのお弁当箱』(BSテレ東)。主人公のハルはオタク女子で、職場でランチに誘われても断り続けている。それでもハルをいつも誘うギャル風の大学職員が美形で話題だ。演じているのは19歳の新人・森日菜美。これが連ドラ初レギュラーの彼女は、どんな女優なのか?

お子様ランチに並ぶ食べ物が好きです(笑)

「今日の朝ごはんは今年初めての肉まんでした。あと、テレビの占いが最下位で『大事な取材日なのに』と思ったら、ラッキーアイテムがポテトサラダだったんです。お母さんに『ある?』と聞いたらあったので、ひと口食べて出てきました(笑)」

 品の良いお嬢様風のたたずまいで喋り方も丁寧だが、話は止まることなく溢れて、しかも何だか面白い。森日菜美は東京出身で、実家は農家を営んでいる。

「小松菜の栽培をしています。私も畑に行って、葉っぱの土を取ったりするお手伝いをしていました。最初はちょっとお小遣いをもらうのが目当てでしたけど(笑)、自粛期間中に楽しくなって、率先して行くようになりました。虫が出るとめちゃめちゃ騒ぎながら(笑)、作物が成長した姿を見られるのが面白いです」

 好きな食べ物には「お母さんが作った玉子焼きが世界一」と挙げる。

「お子様ランチに並んでいるものが好きなんです。さすがにお子様ランチ自体は頼みませんけど(笑)、ハンバーグとかナポリタンとか。舌がお子ちゃまなので、逆に炭酸が飲めなくて。口の中に衝撃が起きるものがダメなんです。イクラがプチッとするのも苦手で、友だちが海鮮丼にドサッと乗っているのを食べていても、何がいいのかわかりません(笑)」

撮影/松下茜
撮影/松下茜

学業優先だったから普通の青春を送れました

 芸能界に入ったのは、中2だった6年前に受けた所属事務所・東宝芸能の『創立50周年記念オーディション』がきっかけ。

「ドラマの『1リットルの涙』を再放送で観て感動して、DVDも買って毎日観てました。そのうち『自分も人の心を動かす側になりたい』と思って、お母さんと調べていたら事務所のオーディションがあったんです」

 当時は原宿などでスカウトされることもあったが、「自分で受けて勝ち獲るほうがいい」と思ったという。

「その頃は物怖じしない性格で、面接で何でもかんでも言っちゃったんです(笑)。だから、やり切った感じはありましたけど、『これで良かったのかな?』と。そしたら、後日電話がかかってきて、事務所に入らせていただくことになりました」

 翌年に映画『校庭に東風吹いて』でデビュー。ただ、受験して入学した中高一貫校に通っていて、学業優先が芸能活動をするに当たって親からの条件だった。そのため、高校卒業まではレッスンを受けながら、たまに単発の仕事をする程度。

「自分ではもっと早くやりたい気持ちがありましたけど、修学旅行や体育祭にもちゃんと参加できて、普通の青春を送れたことは両親に感謝しなきゃと思います」

 どんな学生生活を送ってきたのだろうか。

「中学では水泳部に入りました。4歳から近くのスイミングスクールに通っていまして、最初は運動のためだったのですが選手コースに昇格して、区で1位になったりしたんです。中学も水泳部がある学校を受験しました。でも、入ったら水泳部というより筋トレ部だったんですよ(笑)。学校にプールがなくて、毎日筋トレして走って、月に一度市民プールで泳ぐだけ。だったら自分で泳いだほうがいいと、部は辞めて趣味で水泳をやっていました」

 体育祭、文化祭とか学校行事は?

「楽しむタイプでした。でも、私は水泳以外は運動音痴で、50m走は10秒台。走る姿もダサくて、体育祭で徒競走に出たらビリで笑われて。だから、応援で『行け行け! オラーッ!!』と頑張っていました(笑)」

撮影/松下茜
撮影/松下茜

「ここで変わらなきゃ」と水着グラビアに挑戦

 昨年から大学生となり、ようやく活動を本格的にスタート。今年6月には『週刊ヤングジャンプ』の巻末で初の水着グラビアを披露した。

「正直、最初は抵抗がありました。でも、ほとんどお仕事をやってなかったので『ここで変わらなきゃ!』と挑戦したんです。撮影現場ではすごく緊張して『見ないで!』って感じだったのが、撮られていくうちに楽しくなって。後から写真を見ても、1枚目と最後で表情が全然違うんです。最初は『起きてる? 寝てる?』みたいな感じだったのが(笑)、最後はめちゃめちゃ生き生きしていて。その1日だけで、自分の成長を感じられました」

 何回か撮影を重ねるうちに良い表情が出ることは多いが、初撮影の1日だけでそこまで変わったとはカンが良いのだろう。そして東宝芸能といえば、沢口靖子、水野真紀、長澤まさみから近年の浜辺美波、上白石萌音・萌歌姉妹など清純派女優の系譜で知られ、雑誌で水着グラビアを披露することは珍しい。

「野球でも150kmを投げる右ピッチャーが何人もいても仕方ないじゃないですか。アンダースローや左ピッチャーもいないと。東宝芸能だと同世代に浜辺美波さんや上白石萌歌さんがいるので、別の道を歩もうと思いました。最終的に女優という目標はありますけど、別の方向から攻めて、いろいろやっていけたら」

 その水着グラビアでは、顔面偏差値の高さに加え、スレンダーかつセクシーなスタイルの良さが目を引いた。撮影前にはシェイプアップも?

「私、普段すっごく食べるんです! 食が命。現場に行くと『お昼は何だろうな?』と考えるタイプで(笑)、1日3食の他にも現場に差し入れがあると食べちゃって。あのお菓子たち、絶対『食べてね』と誘ってますよね(笑)。そんな感じで、食べないことはできないので、その分、2週間前から走ったり半身浴をしました。近所の大きな公園に行って、夕方に好きな音楽を聴きながら走って、『自分、エモいな』みたいな(笑)」

 反響は大きく、『ヤングジャンプ』が発売されると、600人ほどだったインスタのフォロワーが一気に4000人を超えた。最近も『週刊プレイボーイ』のグラビアに登場している。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

役の口調をマネていたら普段も口グセになって

 そして、現在『ハルとアオのお弁当箱』に出演中。主人公で大学の図書館に勤めるハルこと木野春葉(吉谷彩子)をランチに誘う、学生課の職員・赤井茜役だ。

「ドラマのレギュラー出演は初めてで、緊張したし不安もありました。でも、現場がすごく温かくて。私が一番年下で、ごはんの後に『眠くなっちゃったの~?』とかお子さま扱いされますけど(笑)、吉谷さんが和ませてくれたり、茜とコンビでハルを誘う緑川役の矢島舞美さんが気さくに話してくれて。控え室でプライベートのことも語りながら、掛け合いをどうするか考えて、息の合ったお芝居ができたと思います」

『ハルとアオのお弁当箱』より
『ハルとアオのお弁当箱』より

 赤井茜は髪をクルクル巻いていたりと見た目はギャル風で、人脈が広く、後半にはハルのために出会いをセッティングしようとする。

「私もテンション高めで明るい性格なので、似ている部分はあります。ただ、私は声が低めで、茜は語尾が上がって『やだぁ~』とか『なにぃ~』とか言うんです。そこが難しくて、裏声を使いました。役作りで家でも茜風に話していたら、逆に普段言わない『やだぁ~』とかが口グセになってしまって。友だちとごはんを食べているときにも出ちゃって、ウザがられました(笑)」

 さらに、茜は動きも大きめだ。

「緑川に抱きついたり、大げさなんです。人を見つけたら『ヤッホー!』とか。私もテーマパークとかに行くとワーッと叫んだりはしますけど、そこまで大げさに動かないので、テンションを高めて演じたり、普段から『茜ならこういう服を着るだろうな。こんな行動をするだろうな』と考えていました。自分にはできないと思っていた役に染まってきたのは、嬉しかったです」

 劇中では、緑川と共にハルをランチに誘っては断られるのが定番になっていく。

「茜はメゲないんですよ(笑)。ハルがどんな人か知りたくて、アタックを続けて。私だったら、一度断られたら『何でですか?』みたいにダダこねて、イヤになっちゃいます。茜の思ったことをすぐ口に出して、芯が強いところは尊敬します」

撮影/松下茜
撮影/松下茜

お弁当作りは母に「やめて」と言われて(笑)

 茜は大学職員の役だが、自身は大学に学生として通っている。

「経済学部なので専攻ではないですけど、心理学や倫理学を取って人間の本質を学ぶのが、深くて面白いです」

 ちなみに、自分でお弁当を作ることは?

「今はほとんどオンライン授業ですけど、中学、高校とずっとお母さんがお弁当を作ってくれて、大学では学食で食べることが多いですね。一度、作ってみようとはしたんです。お金を貯めないと自分の好きな洋服とか買えないので、お昼ごはん代を浮かそうと、早起きしてお弁当を作っていたら、焦がしちゃったり、レンジでチンするだけなのにオーブントースターに入れちゃって。お母さんに『もうやめて!』と言われました(笑)。食べるのは好きだけど、不器用で作れないんですよね……」

撮影/松下茜
撮影/松下茜

フニャフニャしていても根は負けず嫌いです(笑)

 誕生日は3月30日。来春には同級生の中では最後に20歳を迎える。芸能界での本格始動が早くはなかった中で、目標にしていることはあるだろうか?

「私は雲の上みたいな女優さんは目指していません。妹っぽいとかお姉ちゃんみたいとか親近感が沸いて、老若男女に好かれたら一番いいなと思います。そういう意味では、綾瀬はるかさんがすごく好きです。ほんわかして自分らしさもあって、他にはいない存在。私も早く“森日菜美”という女優像を作っていきたいです」

 穏やかに語りながらも、意志の強さがのぞく。

「私はフニャフニャした性格ですけど(笑)、根は結構負けず嫌いです。オーディションに落ちたらすごく悔しいし、次に活かしてやろうと思います」

 芸歴では先輩ながら同年代の浜辺美波や上白石萌歌たちにも負けたくないと?

「お二人には尊敬という部分があって(笑)。萌歌さんは私が東宝芸能に入った頃、一緒にレッスンを受けていました。小さい頃から頑張り続けて、今はあんなに活躍されてますから、自分も頑張りたいと思わせてくれる存在です。ただ、オーディションとかでいつも『シンデレラではないんだね』と言われて、それが悔しくて」

 浜辺や上白石姉妹は、東宝芸能が開催する『東宝シンデレラ』オーディション出身。第1回グランプリが沢口靖子で、長澤まさみ、野波麻帆、現在主演ドラマにCMと注目の福本莉子らも輩出し、女優の登竜門として知られる。森が受けた『創立50周年記念オーディション』は別口だった。

「そこで負けじと、『東宝芸能でシンデレラ出身でないティーンの女優は私しかいないんです!』と言っています。でも、私も肩書きが欲しい。シンデレラでないなら、ティンカーベルでもラプンツェルでも何でもいいので(笑)、自分のキャラを確立したいです」

撮影/松下茜
撮影/松下茜
撮影/松下茜
撮影/松下茜

Proflie

森日菜美(もり・ひなみ)

2001年3月30日生まれ、東京都出身。

2014年に『東宝芸能創立50周年記念オーディション』に合格。2015年に映画『校庭に東風吹いて』でデビュー。ドラマ『腐女子、うっかりゲイに告る。』、『竜の道~二つの顔の復讐者~』、『警視庁・捜査一課長 2020』、映画『うさぎ追いし 山極勝三郎物語』などに出演。ドラマ『ハルとアオのお弁当箱』(BSテレ東)に出演中。デジタル写真集『PROTO STAR 森日菜美 vol.1』が発売中。2021年初夏公開の映画『しあわせのマスカット』に出演。

『ハルとアオのお弁当箱』(BSテレ東/月曜24時~)

服や化粧よりゲームやアニメにお金と時間を使いたいオタク女子・ハル(吉谷彩子)。ジェンダーレス男子の蒼くん(井之脇海)と出会い、勢いで同居生活をすることに。ルールはお互いにお弁当を作り合うことで……。

公式HP

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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