Yahoo!ニュース

SUPER☆GiRLS・渡邉幸愛 卒業撤回からリーダーに就いた1年の想い

斉藤貴志芸能ライター/編集者
SUPER☆GiRLSの5代目リーダー、渡邉幸愛(撮影/小澤太一)

2020年に結成10周年を迎えるアイドルグループ、SUPER☆GiRLS。その5代目リーダーを1月から務めているのが渡邉幸愛だ。初期メンバーら5人が卒業した中で、自身も一度は同時に卒業すると決めていたが、急きょ撤回。新メンバー7人が加わった新体制での船出を選んだ。日本武道館での10周年ライブを目標に突き進んだ1年を振り返ってもらう。

卒業はグループのために頑張ってからでいい

SUPER☆GiRLS(スパガ)は2010年にエイベックス初のアイドルオーディションから結成。メンバーの変遷がある中で、渡邉幸愛は2014年に2期生として加入。今年1月、1期と他の2期が全員卒業し、4期が加わって“第4章”となった際、リーダーに就任した。

――幸愛さんも一度は卒業を決めたんですよね?

渡邉  去年の夏前、スパガが2020年に再び日本武道館に立つために、「それまで続けるメンバー以外はここでけじめをつけよう」というお話を事務所からされたんです。私は地元の仙台での活動から13年間アイドルをやってきて、CDデビューなどの夢が叶って、自分なりに頑張ってこられたので、卒業することを決めました。夏のフェスとかは「これで最後だ」という気持ちで出ていたんです。

――その後、ミーティングで1期、2期全員が卒業する意向を伝えたそうですが、それまで他のメンバーの決断は知らなかったんですか?

渡邉  なぁぽん(浅川梨奈)は前から「10代でアイドルを卒業する」と言ってましたけど、他の先輩や同期が辞めるのは知りませんでした。

――残るのが当時は高1と中3だった3期の3人だけとなり、幸愛さんは考え直したわけですね。

渡邉  新メンバーが入って、3期が初めて先輩になったとき、相談できる相手がいないのはめちゃくちゃ不安だろうなと思ったんです。3人だけを残していいのか? 私も次にやりたいことはありましたけど、それは今でなくてもできる。だったら「卒業は、ここでグループのためにできることをしてからにしよう」と考えました。

――卒業を決めるまでは悩んだでしょうけど、それを撤回するのも悩みませんでした?

渡邉  意外と早く決められました。確かに卒業を決心するまでは、両親に相談したりして本当に時間がかかって、スタッフさんにも止めていただきました。そこでブレたらダメなので、誰に何を言われても「もう決めたので」と言っていたんです。でも、ミーティングのときに気持ちが揺れたのは、どこかでまだやりたかったからだし、卒業をやめることにはあまり悩みませんでした。

――そして、スパガ第4章のリーダーとなりました。もともと引っ張るタイプではあったんですか?

渡邉  優柔不断ではなくて、「こうなったらこうする」とパッと決める性格なので、そういう役割をすることは多かったです。

――改めて「リーダー論」みたいな本を読んだりは?

渡邉  なかったです。ただ、私はスパガで3人のリーダーを見てきたんですね。志村(理佳)さんはやさしさのリーダー。相談すると欲しい言葉を返してくれました。あみた(前島亜美)さんは強いリーダー。芯がしっかりしているところをリスペクトしています。(溝手)るかちゃんはピュアで行動がまっすぐだから、言われたことがすんなり入ってきたんです。それぞれの良いと思った部分を、自分で活かそうと思いました。

撮影/小澤太一
撮影/小澤太一

先行きが不安で口内炎がいっぱいできました

――4期として一気に7人が加入しました。

渡邉  元のメンバーが4人しかいなくて、ほとんどゼロから振付やフォーメーションを覚える中で、4期に強く言いたいときもありました。でも、自分も入ったときのしんどさはわかるから、そう強く言えない。だけど、言わないと前に進めない……。そんな葛藤がありました。4期はキラキラした夢を持って入ってくれたはずなのに、合宿でどんどん表情が暗くなっていくんですよ(笑)。心配と申し訳なさが自分の中でグルグルして、先行きの不安から口内炎がいっぱいできました。

――新メンバーを叱ったり慰めたりしつつ?

渡邉  そうですね。良かったと思うのは、4期は7人いたから、自分たちの中で励まし合いができていたんです。それと、ゆうきりん(金澤有希/元GEMリーダー)が4期をまとめていて、何かあれば私に話してくれて、「直接聞かなきゃ」と思ったら声を掛けたり、自分から相談に来る子もいました。基本的にはみんな逞しくて、ダンスが不得意な子も一生懸命さは伝わってきたので、時間がない中でひたすら頑張っていた感じです。

第4章のSUPER☆GiRLS(エイベックス提供)
第4章のSUPER☆GiRLS(エイベックス提供)

――特に4期に言い聞かせたことはありますか?

渡邉  とにかく楽しんでほしい、というだけでした。自分の1年目は高2で上京して友だちもいないし、新メンバーの加入が初めてで受け入れ体制も十分ではなくて、しんどさのほうが強かったんです。4期にはそんな1年目にしてほしくなくて。アイドルはすごく楽しいお仕事。その楽しさを見失わないように、肩の力を抜いて自由にしてもらっています。

――第4章最初のシングル「コングラCHUレーション!!!!」では、4期の井上真由子さんがセンターに抜擢されました。彼女のフォローには気をつかいました?

渡邉  私も入って最初の「花道!!ア~ンビシャス」で良いポジションをもらって、プレッシャーに負けてしまったんです。「自分を出せなかった」という後悔がすごくあって。まゆちゃんのことはオーディションから見てきて、レッスンでも常にちゃんと表情を作ったりしていたところに惹かれました。その良さを活かせるように、リラックスしてほしいと見守ってました。

――ステージ前に声を掛けたりも?

渡邉  最初の頃は、話を聞いてあげようと思っても、あまりしゃべってくれなかったんです(笑)。自分のことを思い出しても、先輩に何か聞かれても話せなかったので、少しでも力になれたらと背中をポンポンしたくらいです。

――他のメンバーの相談は受けたこともあって?

渡邉  移動の電車で一緒になって、「こういうことがあって……」という話を聞いたことはあります。でも、そんなに重いものはなくて、基本みんな自分たちで解決してくれました。

「リーダーらしいことはあまりしてない」という渡邉幸愛だが、4期の坂林佳奈は「ダンスができなくて悔しいときとか寄り添ってくれる」、井上真由子は「誰に対しても平等に接しているので尊敬します」と話している。3期の阿部夢梨は「いつもみんなのことを考えてくれて、スパガのためなら何でもする気持ちを感じます」という。

撮影/小澤太一
撮影/小澤太一

お客さんが数人だったのが行列ができるように

――4期の成長速度はすごく速いようですね。

渡邉  どのアイドルさんと比べても、スパガの4期は今、一番成長していると思います。だからこそ、もっとたくさんの人に見てほしいもどかしさもあります。10月のワンマンも満員にはできなくて……。すごく頑張っているし、いいグループになったと自信を持って言える分、来てくださった方に感謝しつつ、悔しい想いが残りました。

――とはいえ、10月のワンマンは北とぴあさくらホールで開催して、浅川さんたち5人の卒業直後よりは、だいぶ盛り返したのでは?

渡邉  やっぱり8年やってきた1期、5年やってきた2期が抜けて、応援してくださる方は減りました。1期がいたから初期のファンの方が残ってくれていた部分もあったので、私1人では引き留められなくて……。

――目に見えて動員が少なくなったりも?

渡邉  最初は本当にしんどかったです。「コングラCHUレーション!!!!」のリリースイベントで、たまたま雨が多かったこともあって、「大丈夫かな?」というくらい、お客さんの少ない日もありました。個別イベントも4期の列は数人からのスタートで、不安になりました。でも、新しいファンの方が増えて4期を応援してくれて、お客さんの層がガラッと変わったんです。以前とまた違う、良い雰囲気になっているのを感じます。

――お客さんが増えるのも目に見えてわかる感じでした?

渡邉  そうですね。今は4期の列にもたくさん並んでくれますし、9月に出した「片想いのシンデレラ」のリリースイベントでは、越谷レイクタウンで開演前から「すごい行列ができているよ」という報告を、ファンの方からSNSにいただきました。努力して、スパガを知らない方に見てもらう機会で、ちゃんと新しいファンを掴めたんだと思います。何より全員センター曲のMVを毎月配信して、知ってもらった方が多いかもしれません。

――リーダーになってから、外に対する発信も増やしたんですか?

渡邉  小さいことですけど、ブログは毎日書くようになりました。寝落ちしてしまったら、次の日の朝に「ごめんなさい」と更新したり。そこで自分の想いを綴って、ツイッターでは写真とかを付けて、どこかでバズりたいと思って、インスタグラムでは自分の世界観を作る。SNSごとに色を変えてやっています。

――その成果もあったんでしょうね。

渡邉  私自身、自分のファンはもう増えないと思っていたんです(笑)。それが初めての方がイベントに来てくれたり、自分たちの気づかないところで出会えていた方が多かったんだと、実感しています。

撮影/小澤太一
撮影/小澤太一

メンバーの背中を押すのが楽しくなりました

――夏フェスのステージもかなり盛り上がってました。

渡邉  よく言ってもらうのは「初期のスパガに似ている」と。未熟でも頑張っていたガムシャラ感が、今のスパガとリンクするみたいです。

――現在のセンターの阿部夢梨さんがツインテールということもあって、初期センターの前島亜美さんを彷彿させる気もします。彼女のセンターはハマる感じがしますか?

渡邉  あざとい子ですけど(笑)、実はすごく努力をしていて、いろいろちゃんと考えてくれているので、センターを任せられます。あと、あのアイドルっぽさは大事で、シンボルとしてセンターに立つことで、グループも印象に残る。本当に夢梨はピッタリだと思います。

――幸愛さん自身がセンターに立って引っ張りたい気持ちはないですか?

渡邉  3章の頃はありました。自分のために頑張ってきましたけど、今はグループや他のメンバーのことが第一。自分はみんなの背中を押して応援したい気持ちが強くて、そのために頑張るのも悪くないと感じています。4期の(樋口)なづながソロライブをする夢を叶えて喜んでいたり、夢梨がテレビのバラエティに出ているのを見るのが、今はすごく楽しいです。

――もう口内炎はできませんか(笑)?

渡邉  今は2コありますね(笑)。でも、ストレス性ではないので、肝油ドロップを毎日10粒くらい食べてビタミンを摂取したら、治りが早くなりました。

撮影/小澤太一
撮影/小澤太一

――クリスマスに発売されるスパガのアルバム『超絶★学園~ときめきHighレンジ!!!~』では全員のセンター曲が収録されて、幸愛さんはリード曲「ときめきHighレンジ!!!」でセンターを務めました。

渡邉  センターに立つことはもうないかと思ってましたけど、やっぱりMVはかわいく映りたくて、撮影日は朝から美顔器で電流を流してました(笑)。高揚感のある曲で、10周年に向けて加速していくスパガにマッチしてます。

――では、来年中に日本武道館のステージに立つために、あとやるべきことは何でしょう?

渡邉  パフォーマンス力の向上はもちろん、一番は認知してもらうことだと思います。「昔は好きだったけど、今のスパガは知らない」という方も多いので、テレビに出させてもらえたら、チャンスを逃さないでしっかりパフォーマンスを見せる。対バンライブで新しいファンの人を掴む。小さいことからひとつひとつ大事にして、一歩ずつ進んでいけたらと思います。

――ちなみに、一度卒業を決めたときにやりたかったことというのは、女優業ですか?

渡邉  女優のお仕事もですけど、芸能界と関係のない分野を学んでみたい想いもあります。でも、なづちのソロライブを観て「自分もやりたい」と思ったし、アイドルとしての夢もまだまだあって。みんなと一緒に頑張って、日本武道館で満員の景色を見て、「やっと辿り着いたね」と喜びたい想いが、やっぱり今は一番大きいです。

profile

わたなべ・こうめ。1998年3月17日生まれ、宮城県出身。

小学3年生からの地元での活動を経て、2014年2月にSUPER☆GiRLSに2期生として加入。2019年1月からの“第4章”でリーダーを務めている。ソロで2018年11月にファースト写真集「koume」を発売。女優としてドラマから映画に展開した『咲-Saki-阿知賀編 episode of side-A』などに出演。SUPER☆GiRLSの5thアルバム『超絶★学園~ときめきHighレンジ!!!~』が12月25日に発売。

『超絶★学園~ときめきHighレンジ!!!~』

CD+Blu-ray 4500円(税込)
CD+Blu-ray 4500円(税込)
CD 3000円(税込)
CD 3000円(税込)
芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

斉藤貴志の最近の記事