CMで話題の新鋭女優・松本穂香、主演映画が相次ぎ「ズレてる」魅力でブレイクへ

映画「おいしい家族」主演の松本穂香 (C)2019「おいしい家族」製作委員会

au「意識高すぎ!高杉くん」CMシリーズの“松本さん”として、広く知られるようになった松本穂香。もともと女優としてNHK朝ドラに出演、ゴールデンタイムの連続ドラマで主演など実績を積み重ねてきたが、長編映画での初主演作『おいしい家族』が公開になる。その後も主演映画の相次ぐ公開を控え、令和を担う女優となっていく勢いだ。同世代の他の若手女優にはない独自の魅力を探った。

モノを違う視点から見たい意識はあります

 auのCMでは、ゆで卵を頭で割ったり、1人カラオケで振りを付けて歌ったりする“松本さん”を演じている松本穂香。

「あのCMを通して、私を知ってくださった方はたくさんいるみたいです。初めてお会いした方に『高杉くんに出てるよね』とよく言ってもらいます

 大阪の堺市出身で現在22歳。高校時代は演劇部に所属し、「授業中は当てられただけで汗をかいて発言できないタイプだったけど、体育館の舞台に立ったら気持ち良かった」とのことで、全校生徒を前に冷凍マグロの役をかぶりもので演じたことも。

 NHK朝ドラ『あまちゃん』にハマって女優を志し、事務所のオーディションに合格。デビューから2年を経て、2017年に朝ドラ『ひよっこ』に出演し、昨年はTBS日曜劇場『この世界の片隅に』で連ドラ初主演。3000人が参加したオーディションから選ばれた。

「『この世界の片隅に』では、今までにないプレッシャーがありました。その分、得られたものもたくさんあります。ベテランの方たちの中で同じ役を長い期間演じた経験は、自分の中で宝物になりました」

 『ひよっこ』で演じたヒロインの同僚の澄子は、メガネにおかっぱ、マイペースですぐ寝て食いしん坊というキャラクターだった。『この世界の片隅に』のすずはのんびりした性格で、会ったこともない相手の家に嫁ぎ、戦争の苦難の中でも明るく生きる女性。

 また、今年1月から放送された深夜の主演ドラマ『JOKER×FACE』では、過激な動画を配信するハイテンションだが腹の内が読めない役を演じたりと、幅広い。ドラマや映画などの出演作品は昨年9本、今年は10本と引っ張りだこだ。松本の女優としての強みは、どこにあるのだろうか?

「演技が良いか悪いかは自分ではわかりませんが、最近『ちょっとズレてるところが面白い』と言ってもらえました。自分でもちょっと変わったことが好きだったり、モノを違う視点から見たい意識はあるので、人とズレてるなら、そこは大事にしたいです」

 確かに同世代の若手女優の中でも、彼女の飄々とした佇まいは他にはないもの。どんな役を演じても、ひとすじ縄では行かない気配を漂わせる。

(C)2019「おいしい家族」製作委員会
(C)2019「おいしい家族」製作委員会

「これをやったから大丈夫」というものを持ちたい

 そんな松本穂香の長編では初主演となる映画『おいしい家族』が公開される。彼女が演じる橙花は銀座の化粧品売り場で働き、夫と別居中。母の三回忌で離島の実家に戻ると、父(板尾創路)が亡き母の服を着ていた。そのうえ、見知らぬ中年男(浜野謙太)が娘の女子高生(モトーラ世理奈)と共に居候していて、父は「この人と家族になろうと思う」と言う。反発する橙花だが、弟夫婦や島の人々が誰も、父の服装や中年男の和生との関係を奇異に思わないことに戸惑う……。

「橙花は不器用なんだと思います。あの島であの家で育って、女装とかに偏見を持ってるわけでないのは、台詞からもわかりました。ただ、純粋な分、東京で受け止めなくていいものまで受け止めた結果、疲れてしまって、自分がモヤモヤしたものを抱えていただけだったんだと思います」

 和生と娘のダリアが自然に居ついている中で、実家なのに居場所がないと感じる橙花は孤立しているシーンが多い。

「みんなですき焼きを食べる場面でも、私はひと口も食べませんでした(笑)。現場でも、他の皆さんがどんどん仲良くなる中で、私は役と同じように1人でいるために、少し距離を置くようにしていました。演技に自信満々ではないので、何か『これをやったから大丈夫』というものを持っていたいんです」

 ふくだももこ監督も彼女について「島での撮影に携帯も持たずにいらっしゃって、孤高に役に打ち込んでくれました」とコメントしている。

「携帯は単に忘れてきたんです(笑)。意外となくても平気でした。島には人も少ないしコンビニもなかったけど、余計なものが一切なくて、撮影に集中できたので逆に良かったです」

(C)2019「おいしい家族」製作委員会
(C)2019「おいしい家族」製作委員会

自分が演じていたと気づかれないのが一番

 劇中では犬の鳴きまねをしたり、夜の海辺ででんぐり返しをしたり、コミカルなシーンもあった。

「私も犬を飼ってますけど、鳴きまねのシーンはハマケンさん(浜野謙太)と2人で、過去に飼っていた犬が死んじゃった話とかをして本気で悲しくなったところで、『ワワワワーン』と鳴いていたら、思っていた以上に長回しされてました(笑)」

「でんぐり返しは酔って帰る場面で、『どこかでやってください』と言われたんです。面白いと思ったら、『何でですか?』とか考えず、『やってみよう』となります」

 飲み屋で泣きながら、エビの両手食いをするシーンも笑いを誘う。

「あそこは実際にお酒を飲んで撮ったんです。監督が『飲みや。ええよ』という感じで、そういう撮影があると噂には聞いてましたけど、『じゃあ』とやったら、お酒の力はすごいなと思いました(笑)。緊張しないし、自分で『こんな動きをするのか』というアドリブが出るし。飲みすぎたら怖いけど、みんなで楽しくできました」

 まさに松本穂香の“ちょっとズレてる”ところが発揮された。そうこうしながら、最後には橙花が父に想いをぶつける。

「『家族だから許せないことがある』という台詞がありましたけど、最初に反発していたのは本気だったと思います。女装が気持ち悪いのでなく、理解できないことが一気に目の前に並べられて『いい加減にしてよ!』という。でも、一番は『お父さんはどこに行っちゃうの?』という不安な想いだった気がします。お母さんが亡くなった悲しみは橙花の中にずっとあって、そのうえ、お父さんまでお父さんでなくなったら、家族はどうなってしまうのだろうかと……」

「だけど、お父さんがお母さんを愛しすぎていて、自分がお母さんになりたいというほどの気持ちだったんだと、橙花は気づいたんですよね。それは私自身にはわからない領域ですけど、橙花はお父さんのお母さんへの強い愛をわかったからこそ、認めざるを得なかったんだと思います」

 長編映画初主演での橙花役は、松本にとってハードルは高いものだっただろうか?

「自分と似た部分が少ない役だと、辿り着くまで難しいと思います。今回は、もちろん同じ経験はしてませんけど、理解できる感情ばかりでした。行き詰まってモヤモヤした気持ち、大切だからこそ許せないこと……。私の中にもあったから、やれた役でした」

 以前は「私は決して王道ヒロインタイプではない」と話していた松本穂香。だが実際、この『おいしい家族』に11月公開の『わたしは光をにぎっている』、来秋公開予定の『みをつくし料理帖』など、主演作が相次ぐ。

「ヒロインかどうかより、いろいろな役を幅広くやりたいです。一番うれしいのは『あの役もやっていたんだね。気づかなかった』と言われること。自分ではなく、役として見てもらえていたわけですから」

(C)2019「おいしい家族」製作委員会
(C)2019「おいしい家族」製作委員会
フラーム提供
フラーム提供

Profile

1997年2月5日生まれ、大阪府出身。2003年に主演短編映画『MY NAME』で女優デビュー。主な出演作はドラマ『ひよっこ』(NHK連続テレビ小説)、『この世界の片隅に』(TBS系日曜劇場)、『JOKER×FACE』(フジテレビ)、映画『恋は雨上がりのように』、『世界でいちばん長い写真』、『あの頃、君を追いかけた』、『君は月夜に光り輝く』など。主演映画『おいしい家族』が9月20日より、『わたしは光をにぎっている』が11月15日より公開。『みをつくし料理帖』が来秋公開予定。

松本穂香公式HP

(C)2019「おいしい家族」製作委員会
(C)2019「おいしい家族」製作委員会

『おいしい家族』

9月20日(金)より全国ロードショー

配給:日活

公式HP

(C)2019「おいしい家族」製作委員会