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『平成仮面ライダーシリーズ』でヒロインを演じた女優たちのその後

斉藤貴志芸能ライター/編集者
『ジオウ』出演中の大幡しえり (c)小澤太一/HUSTLE PRESS

若手俳優の登竜門となったがヒロイン女優は…

 『平成仮面ライダーシリーズ』の20作目で、最終作として放送中の『仮面ライダージオウ』(テレビ朝日系)。メモリアル作品らしく、ジオウに変身する主人公が時空を巡り、歴代の平成仮面ライダーたちと出会うストーリーが展開されている。

 『平成仮面ライダーシリーズ』といえば、20年の間に若手俳優の登竜門としても定着した。1作目の『仮面ライダークウガ』に主演したオダギリジョーに始まり、水嶋ヒロ(カブト)、佐藤健(電王)、菅田将暉(W)、福士蒼汰(フォーゼ)、竹内涼真(ドライブ)らがブレイク。ドラマや映画で主役を張る存在になっている(水嶋は現在、俳優業と距離を置いているようだが)。

 当初、オダギリらは「子どもと一緒に観ていたお母さんたちを夢中にさせた」と言われ、業界的にも『仮面ライダー』に目が向けられるように。加えて、オーディションで選ばれた“金の卵”が、大役を1年にわたって演じる貴重な機会を経て、演技力や表現力が磨かれることも大きい。

 一方、各作品に登場するヒロインを演じた女優たちは、その後どうなっただろう? 結論から言うと、トップのポジションまで至った例は、これまでのところ出ていない。NHKの朝ドラでは“脇役からのブレイク”が続いているが、基本大人の視聴者が多いわけでない『平成仮面ライダーシリーズ』では、そこまでの効果はもたらされてないようだ。

ブレイク寸前だった『フォーゼ』の清水富美加

 その中でリーチまで行ったのが、『仮面ライダーフォーゼ』のヒロイン・清水富美加だ。福士が演じた如月弦太朗=フォーゼの幼なじみの城島ユウキ役。天真爛漫な明るいキャラクターで、弦太朗がフォーゼに変身する際に、後ろで同じポーズを取ったりしていた。

 清水はその後、朝ドラ『まれ』(NHK)で土屋太鳳が演じたヒロインの親友役を務め、2017年には『暗黒女子』、『笑う招き猫』、『東京喰種 トーキョーグール』と主役やヒロインの映画3本の公開が控えていたが、突然、幸福の科学への出家を宣言して所属事務所を離れた。現在は千眼美子と改名して活動を続けているが、一線からは退いた形になっている。

 以前の取材で、清水は「実は『フォーゼ』が終わったら、私はバラエティ方面に行くと思っていました。でも、気づくと『どんな役ができるだろう?』と想像していたんです。それで、マネージャーさんに『女優の仕事を続けたい』と話しました」と、意欲を語っていたのだが……。

 屈指の人気作『仮面ライダー電王』では、白鳥百合子という女優がヒロインのハナを演じていた。佐藤の演じる野上良太郎が、電王に変身するきっかけを作った役。ルックスの美しさが際立って人気を高め、写真集も発売したが、体調不良を理由に途中降板。劇中ではハナは体が幼児化したことになって子役が継ぎ、白鳥は芸能活動を休止。結局、そのままフェイドアウトしている。

 一方、この『電王』で良太郎の姉役だった松本若菜は、主役級は少ないものの出演作が途切れない。最近だと、ドラマ『チア☆ダン』(TBS系)でのオダギリジョーが演じた教師の妻役、『僕らは奇跡でできている』(関西テレビ・フジテレビ系)での高橋一生が演じた大学講師と息子を巡ってぶつかる母親役などで、バイプレイヤーとして印象を残した。

『ドライブ』内田理央の活躍と『ジオウ』大幡しえりへの期待

 『仮面ライダードライブ』で竹内が演じた泊進ノ介=ドライブのバディとして、共に戦う女性警察官・詩島霧子を演じた内田理央も、活躍が目につく。『ドライブ』が本格的な女優デビューで、モデルとグラビアを両立する“モグラ女子”の筆頭格にもなりつつ、ドラマや映画出演も多い。

 カルト的な映画『血まみれスケバンチェーンソー』や深夜ドラマ『将棋めし』(フジテレビ)では主演を務め、昨年は話題のドラマ『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)で、田中圭が演じた主人公の幼なじみを演じた。奇しくも清水富美加が辞めた事務所の所属だが、改めて『仮面ライダー』のヒロインからの出世頭になりそうな勢いだ。

 そして、放送中の『仮面ライダージオウ』でヒロインを演じているのが大幡しえり。魔王の脅威に瀕する50年後の未来から来たレジンスタンスの少女・ツクヨミ役。クールで知的なキャラクターで、ライダーファンからは「『電王』のハナに似ている」との声も挙がっている。

 大幡は現在20歳で、原宿でスカウトされて2017年にデビュー。『ジオウ』以前には、映画『ひるなかの流星』やドラマ『監獄のお姫さま』(TBS系)、『ヒモメン』(テレビ朝日系)などに出演している。“しえり”は本名で、フランス語のcherie(かわいい、愛しい)にちなんで付けられたという。

 クールビューティーなルックスでツクヨミにピッタリと見えるが、本人は「私は全然クールじゃなくて、ツクヨミをやるときは声を低めに出すようにしています」と話す。『ジオウ』の制作発表でも、共演者に「天然」とイジられていた。

 劇場版『仮面ライダー平成ジェネレーションズ FOREVER』ではツクヨミは記憶をなくしていて、ドラマとは真逆のギャルっぽい女の子になっていたのが面白かった。

 そうした美貌とのギャップも含めて独自の存在感があり、まだ伸びしろも多い彼女には、平成最後のライダーヒロインから、新元号の時代での飛躍に期待したい。

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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