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「自分の持ち味を出せた」明治大出身SH飯沼(SA浦安)、リーグワンD1で最速の先発デビュー

斉藤健仁スポーツライター
1月の大学選手権はキャプテンとして明治大を引っ張ったSH飯沼(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

リーグ戦も残り4試合、いよいよ佳境に入ってきたNTTジャパンラグビー リーグワンのディビジョン1。

入社したばかりの大卒ルーキーの出場が解禁されたばかりの4月9日(土)の第12節、ディビジョン1の1年目の選手で唯一先発出場を果たしたのがNTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ浦安(SA浦安)のSH(スクラムハーフ)飯沼蓮だった。

入社したばかりの新人が大きなインパクトを残した

飯沼といえば、今年の1月、大学選手権決勝で惜しくも敗れた明治大のスキッパーだった。

大学選手権(決勝)で負けてから、次の目標をここ(リーグワンデビュー)にフォーカスしていたので、心の準備はできていたし、イメージはたくさんあったので、スムーズにこの日を迎えることができた」(飯沼)

合流して1ヶ月あまり、シャイニングアークスでのデビュー戦だった飯沼はいきなり、日本代表を数多く揃え、ディフェンディングチャンピオンで9連勝中の強豪・埼玉パナソニック ワイルドナイツと激突した。

ただ若きスクラムハーフは「自分的には試合にのめり込んでいて、(相手は)リスペクトしていたが、打ちのめしてやろうと思ってやっていた。あと自分のプレーを80分アピールしようとプレーしました」というメンタルで臨んだ。

この日はスタンドオフでプレーした元スコットランド代表の名SHグレイグ・レイドローとハーフ団を組んで80分間、試合に出場。24-31と僅差で敗れたもののデビュー戦で大きなインパクトを残した。

飯沼にとって世界的SHのレイドローの存在も大きかったようだ。「わからないことたくさんあったが、(レイドローが)ポジティブな方向に持って行ってくれた。『蓮の好きなようにやっていい』と言ってくれた

シャイニングアークスのロブ・ペニーHC(ヘッドコーチ)も飯沼について「才能ある選手だと思います。その才能がこれからどんどん見られることを楽しみにしている。9番は競争率が高いポジションだが、その中でもその競争に勝っていける、いいパフォーマンスを出してくれることを証明してくれた」と高く評価した。

飯沼はデビュー戦から世界的選手や日本代表選手と比べても遜色ないプレーを披露

試合を楽しんだ結果「勝手に自分の持ち味を出せた」

まだ入社したばかりの飯沼は、試合の週の午前中は練習、午後は新入社員として研修にも参加する多忙な日々を過ごした。それでも9番を背負った飯沼は「1分も無駄にせず準備に取り組んだ」ことが、パフォーマンスにつながったという。

チームに外国人がいるのも初めてだし、英語とか、チームのラグビー、サインを理解しようと思って最初は焦っていた。だけど試合当日は、自然体で、頭に入れすぎず楽しもうと、緊張せずに試合に入れて、勝手に自分の持ち味が出せた」(飯沼)

ただスクラムハーフとしてチームを勝利に導くことができず「デビュー戦にしては悪くはないと思うが、敗戦が悔しい」と唇を噛んだ。前半、0-10とビジターで、強豪相手にリードして折り返したが、後半、相手に3連続トライを許し、試合終了間際も攻め立てたものの24-31と接戦をものにすることができなかった。

ただ80分を通してピッチに立ち、長短のパスと体を張ったプレーでチームに勢いを与えた22歳の若きSHは「試合前から、チャレンジャーなので受けるのではなく、どんどんアグレッシブにチャレンジしていこうという意識で、前半はすごくいい形で終えた。

だが、後半初めに簡単な形で3トライされてしまって、突き詰め方が足りないなと思いました。そこを改善できればもっといいチームになると思うので修正していきたい。最後、チャンスが何度かあったが取り切れないところが勝つチーム、負けるチームの違いなので、それを感じることができたので、いい経験になりました」と冷静に振り返った。

ラグビー一家に育った飯沼。目標は日本代表

飯沼は、筑波大とNECで活躍した父(健さん)、日本代表で活躍した母(順子さん)、弟・暖(日川高校3年)の全員SHというラグビー一家に生まれ育った。

3歳からラグビーを始めたが、小学校2年生から中学校まではハンドボールもプレーし山梨県で優勝を経験したという。だがラグビー経験者だった父に背中を押されて日川高からラグビーに専念し、「花園」こと全国高校ラグビー大会に出場。明治大でも1年時から紫紺のジャージーを着て活躍した。

目標は「日本代表になること」だという飯沼が理想とする選手は、昨季、日本でもプレーしたニュージーランド代表SHのTJ・ペレナラだ。「自分の判断、考えでチームの流れを変える、チームの心臓になるような、実力を持った選手になりたい

ディビジョン1の中で最速のリーグワンデビューを飾り、飯沼は「大学とは違う、今までTVで見ていたような日本代表や世界スーパースターのいるパナソニックと対戦できたのは感謝ですし、いい経験になった」と話すように、大きな自信になったことは間違いない。

大きな経験を得た飯沼は、4月15日(金)、東京・秩父宮ラグビー場で行われる第13節、現在4位につける強豪の横浜キヤノンイーグルス戦でも再び9番を背負う。

シャイニングアークスのアタックをリードして11位と入替戦圏内で苦しんでいるチームに、今度こそ白星をもたらすことができるか。

スポーツライター

ラグビーとサッカーを中心に新聞、雑誌、Web等で執筆。大学(西洋史学専攻)卒業後、印刷会社を経てスポーツライターに。サッカーは「ピッチ外」、ラグビーは「ピッチ内」を中心に取材(エディージャパン全57試合を現地取材)。「高校生スポーツ」「Rugby Japan 365」の記者も務める。「ラグビー『観戦力』が高まる」「ラグビーは頭脳が9割」「高校ラグビーは頭脳が9割」「日本ラグビーの戦術・システムを教えましょう」(4冊とも東邦出版)「世界のサッカー愛称のひみつ」(光文社)「世界最強のGK論」(出版芸術社)など著書多数。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。1975年生まれ。

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