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東京五輪ラグビー男子日本代表メンバー決定。石田吉平(明治大3年)が最年少で選出!

斉藤健仁スポーツライター
昨年の大学ラグビーで大きく成長した明治大3年の石田(撮影:斉藤健仁)

 6月19日(土)、日本ラグビー協会はオンラインで会見を行い、東京五輪に出場する男女ラグビー(7人制ラグビー)日本代表の内定選手をそれぞれ12名ずつ発表した。

 男子は明治大3年の石田吉平(常翔学園出身)が最年少で、唯一の大学生としてオリンピックメンバーに選出された。

 男子セブンズ(7人制ラグビー)日本代表の指揮官を務める岩渕健輔ヘッドコーチはセレクションポリシーに関してこう説明した。

 「大きく分けて2つ、(1つは)グラウンド内はもちろん、グラウンド外で日本代表に、オリンピックに出るにふさわしい選手(を選んだ)。もう1つは東京で行われるため、さまざまなプレッシャーがかかる局面がある。そういったプレッシャーをある意味、楽しみながらプレーできる12名を選出した」

◆高校時代から世界の舞台で活躍してきたが手術を決断

 12名の中で唯一、2000年代生まれの石田は、常翔学園高校時代からスピードとステップで際立っていた。

 高校時代はBKのWTB(ウィング)ではなく、身長167cmと決してFWとしては大きくなかったがNO8(ナンバーエイト)の位置から、スピードとステップでトライを量産。さらに高校3年時にはアルゼンチンで開かれたユース五輪で日本代表の銅メダル獲得に貢献。高校卒業間近の3月、7年ぶりに高校生として、セブンズ日本代表としてワールドシリーズの舞台にも立った。

 明治大に入ったばかりの2019年4月、東日本学生セブンズで、いきなり紫紺のジャージーを着て3トライを挙げて3連覇に大きく寄与し、チーム内MVPに輝いた。

 ただ、大学入学早々、高校3年時に2度、亜脱臼を経験していた左肩にメスを入れる決断をした。岩渕ヘッドコーチからも「東京五輪に間に合わせるのであれば早いほうがいい」と諭されての判断だった。

◆昨季、明治大でランとディフェンスを磨いた

 手術をしてから半年後、大学ラグビーデビューを果たすと、2020年1月、石田は再びセブンズの代表に選ばれて世界の舞台に立った。ただ2020年東京五輪は、コロナ禍のために1年延期されることが決まった。

 石田は、セブンズの候補合宿に参加せず、東京・八幡山にある明治大の練習場でトレーニングを重ねた。岩渕ヘッドコーチと明治大の田中澄憲監督(当時)が話し合った末、「明治大学にいた方がいい練習ができる」と石田は、2020年は15人制ラグビーに専念する。

 石田は昨年度の関東大学ラグビー対抗戦や大学選手権で明治大WTBとしてスピードとステップを活かしてのトライ、ハイボールキャッチからのカウンター、ジャッカルなどで存在感を示した。その結果、今年1月、晴れてセブンズ日本代表に復帰を果たした。

 「大学に入ってからフィジカルを鍛えてきた」という石田は

 「(大学の)15人制の試合で、ひとつひとつ頑張っていこうという気持ちがあったから(セブンズの)スコッドに選ばれた。15人制でも抜ければ7人制でもスペースあって抜けやすくなる。自分がアタックしているときにどう抜くかを考えながら練習して、ランは自分の思うようになってきたかな。ディフェンスも克服できたことは良かった」

 と自身の成長を実感していた。

◆成人式には出席せずトレーニングを重ねた

 1月2日、大学選手権準決勝で優勝した天理大に負けてから2日後、一度、石田は兵庫県の実家に戻った。1月11日の成人式には、セブンズ日本代表としての自覚から、人混みを避けるために出席せずトレーニングをしていたという。

 石田は「(大学選手権の)決勝に立てて悔しさを忘れずやっていきたい。(セブンズ)日本代表に選ばれて光栄なことなので、成人式に行けなかったが、日本代表に選ばれてオリンピックで活躍する方が地元のみんなにとっては格好いいと思うので、成人式に行けなかったことが良かったと思えるようにやっていきたい」とオリンピックでの活躍を誓った。

 また東京五輪に向けて「アスリートをやっているうちに1回しかない。東京で開催されるので日本中のみなさんに注目されますし、一番大きな大会だし、自分にとってはターニングポイントになると思っている。オリンピックということで、一番楽しみだし、一番チャレンジしていきたい大会だと思っています。

 ニュージーランドが一番強敵だと思いますので、そこと試合をしたい!」と意気込んでいた。

会見に出席し、五輪に向けた意気込みを語る石田((C)JRFU)
会見に出席し、五輪に向けた意気込みを語る石田((C)JRFU)

◆「年齢は関係ない。ランとステップで勝利に貢献したい!」

 今年、トレーニングや強化合宿、ドバイでの国際大会を経て、一回り大きくなった石田は、大学生として唯一オリンピックメンバーの12名に選ばれた。そして石田はこう意気込んだ。

「最年少で選ばれたのは嬉しいですが、オリンピックでは年齢は関係ないので、自分の持ち味のランとステップで、しっかりチームを引っ張って勝利に貢献したい! 地元、兵庫県から(ファンが)応援してくださると思うので、結果がでるようにがんばるで!」

 東京スタジアムで、日本代表最年少のステッパーが世界を沸かせる姿が見たい。

◆東京五輪 ラグビー男子日本代表内定選手12 名

名前/所属/キャップ(大会参加回数) 

☆リオ五輪メンバー 

石田吉平(明治大3年/6)

加納遼大(明治安田生命/22)

セル ジョセ(日本ラグビー協会&近鉄/11)

副島亀里ララボウラティアナラ(コカ・コーラ/34)☆

トゥキリ ロテ(日本ラグビー協会&近鉄/50)☆

羽野一志(NTTコミュニケーションズ/29)☆

彦坂匡克(トヨタ自動車/22)☆

藤田慶和(日本ラグビー協会&パナソニック/27)

ヘンリー ブラッキン(日本ラグビー協会&NTTコミュニケーションズ/0)

ボーク コリン雷神(日本ラグビー協会&リコー/0)

松井千士(日本ラグビー協会&キヤノン/23)◎主将

本村直樹(Honda/25)

※バックアップメンバー 4名

合谷和弘(日本ラグビー協会&クボタ/24)☆

野口宜裕(セコム/14)

津岡翔太郎(コカ・コーラ/4)

フィシプナ・トゥイアキ(セコム/2)

スポーツライター

ラグビーとサッカーを中心に新聞、雑誌、Web等で執筆。大学(西洋史学専攻)卒業後、印刷会社を経てスポーツライターに。サッカーは「ピッチ外」、ラグビーは「ピッチ内」を中心に取材(エディージャパン全57試合を現地取材)。「高校生スポーツ」「Rugby Japan 365」の記者も務める。「ラグビー『観戦力』が高まる」「ラグビーは頭脳が9割」「高校ラグビーは頭脳が9割」「日本ラグビーの戦術・システムを教えましょう」(4冊とも東邦出版)「世界のサッカー愛称のひみつ」(光文社)「世界最強のGK論」(出版芸術社)など著書多数。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。1975年生まれ。

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