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男子ラグビー日本代表、リオ五輪に向けた14名発表!瀬川HCが語る選考理由と予選プールの戦い方

斉藤健仁スポーツライター
メンバーを発表する、7人制ラグビー男子日本代表の瀬川HC(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

6月29日、日本ラグビー協会は東京都内で会見を開き、リオデジャネイロ五輪に出場する7人制ラグビーの日本代表選手団を発表した。男子は14名、女子は13名が選出され、最終登録メンバー12名は7月中旬までに決定するが、ケガ人などが出た場合は交替可能だという。

◇「現時点のベストの14名」(瀬川HC)

男子は6月、20名が北海道で合宿を行っており、14名に絞るにあたって瀬川智広ヘッドコーチ(HC)は、「日本代表なので対外国人相手にどう戦うかが大事」「HO、ハーフ団とWTBで悩んでいる」と述べていた。そして、今回、オリンピックへ向けた日本代表メンバー発表時に、瀬川HCは、「チーム内では札幌合宿の最終日に発表しました。厳しい練習をともにしてきた14名を絞りこむ作業は、一人ひとりセブンズにかけてきた思いを考えると簡単に答えは出せなかった」と最後まで悩んだことを吐露した。

続いて選考理由をこう述べた。「オリンピックでは人とボールを俊敏に動かすラグビーをしたい。我々がベストなパフォーマンスをして、オリンピックでメダルを獲得するために必要な選手を選びました。ラグビーの理解力、ボールを長く保持するためにセットプレーの安定、そして世界に通用する能力を持ったキャラクター、この3点から選びました。現時点でのベスト14名だと考えております」

キャプテンの桑水流、元キャプテンの坂井、エース格のレメキ、FWでもBKでもプレー可能なユーティリティー選手のトゥキリ、タックルも強いゲームメイカーの合谷、力強いランが持ち味の羽野と後藤、セットプレーとオフロードが得意な副島、HOとして定位置を確保した彦坂といった中心選手は、もちろんメンバー入りを果たした

◇山田ら「W杯組」が揃ってメンバー入り

個人的に今回のメンバー発表で少々驚いたのは、小澤大(トヨタ自動車)の落選だった。小澤は15人制ではWTBだが、大学時代からセブンズの代表として活躍してきた。小澤のポジションはHOだが、今年のワールドシリーズで、同じトヨタ自動車の彦坂がHOとして頭角を現した。また15人制のワールドカップ、そしてスーパーラグビーのサンウルブズと世界の舞台で実力を発揮してきた山田もHOだが、瀬川HCも山田は「ステップと(トライへの)嗅覚がある」と評価。レメキもPRだけでなくHOとしてのプレーの可能であるため、小澤はメンバー入りせず、バックアップ選手となった。

また3月、4月は代表としてケガの影響もあり、メンバー外だった15人制のW杯出場者である藤田は5月と6月の合宿でアピールし、逆転のメンバー入り。残念ながら豊島翔平(東芝)はオリンピックメンバーから落選となり、バックアップ選手となった。WTBのレギュラー争いも熾烈だが、現段階では15人制W杯組の福岡、唯一の大学生の松井の両選手がメンバーに名を揃えた。長らくセブンズを支えてきたものの、負傷してしまった後藤駿弥(ホンダ)に替わり、徳永がリオ行きの切符を獲得した。

◇男子ラグビー日本選手団14名

(名前、所属チーム/出身)

桑水流 裕策(コカ・コーラ/福岡大出身)◎キャプテン

副島 亀里 ララボウ ラティアナラ(玄海タンガロアラグビー/ランバササンガムカレッジ出身)

徳永 祥尭(東芝/関西学院大出身)

彦坂 匡克(トヨタ自動車/筑波大出身)

坂井 克行(豊田自動織機/早稲田大出身)

合谷 和弘(クボタ/流通経済大出身)

藤田 慶和(パナソニック/早稲田大出身)

トゥキリ ロテ(クボタ/白鴎大出身)

レメキ ロマノ ラヴァ(ホンダ/ランコーン高出身)

羽野 一志(NTTコミュニケーションズ/中央大出身)

後藤 輝也(NEC/山梨学院大出身)

福岡 堅樹(パナソニック/筑波大出身)

松井 千士(同志社大4 年/常翔学園高出身)

山田 章仁(パナソニック/慶應義塾大出身)

バックアップ選手

安井 龍太(神戸製鋼/東海大出身)

鶴ヶ崎好昭(パナソニック/東海大出身)

大島 佐利(サントリー/早稲田大出身)

小澤 大(トヨタ自動車/流通経済大出身)

豊島 翔平(東芝/東海大出身)

ジェイミー・ヘンリー(PSI /立正大出身)

◇日本はNZ、イギリス、ケニアと同組に

メンバー発表の前日、オリンピックの予選プールの組分け抽選が行われ、日本はニュージーランド、イギリス、ケニアと同組になった。各予選プールの1~2位と、予選プール3位の上位2チームの計8チームが決勝トーナメントに進出する。

◆男子ラグビー、オリンピック組分け

プールA:フィジー、アメリカ、アルゼンチン、ブラジル

プールB:南アフリカ、オーストラリア、フランス、スペイン

プールC:ニュージーランド、イギリス、ケニア、日本

瀬川HCは、予選プールの組分けの印象についてこう答えた。

「予選プールに関しては 非常にいいグループに入ったと考えております。ニュージーランドは世界1、2位のチームですが、オーソドックスなので彼らの対策はたてやすい。イギリスはイングランド、ウェールズ、スコットランドの連合チームですが、今季のワールドシリーズ(WS)ではイングランドに引き分け、スコットランドに勝っていますし、ウェールズとは過去対戦では分がいい。また混成チームなので、我々が日々積み重ねてきた組織プレーが生きてくる。またケニアはWSのシンガポール大会で優勝しましたが、セットプレーに難があり、日本はラスベガス大会で勝っている。日本が、今まで見せたことがないアタック、ディフェンスで相手を揺さぶって決勝トーナメントに進出したい」

少なくとも1勝(2敗の場合は得失点差による)、あるいは1勝1分以上で日本は決勝トーナメント進出となる。だが、男子セブンズの目標は「メダルを取ること」だ。瀬川HCは「オリンピックでは我々のセブンズを世界に発信したい」と意気込んでいる。男子は7月にはオーストラリアに遠征し、再び日本に戻って鹿児島で最終合宿を行い、ブラジルに渡る。

スポーツライター

ラグビーとサッカーを中心に新聞、雑誌、Web等で執筆。大学(西洋史学専攻)卒業後、印刷会社を経てスポーツライターに。サッカーは「ピッチ外」、ラグビーは「ピッチ内」を中心に取材(エディージャパン全57試合を現地取材)。「高校生スポーツ」「Rugby Japan 365」の記者も務める。「ラグビー『観戦力』が高まる」「ラグビーは頭脳が9割」「高校ラグビーは頭脳が9割」「日本ラグビーの戦術・システムを教えましょう」(4冊とも東邦出版)「世界のサッカー愛称のひみつ」(光文社)「世界最強のGK論」(出版芸術社)など著書多数。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。1975年生まれ。

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