【ラグビーW杯】エディージャパンこと日本代表は、なぜ、バルサよろしく、パスとランで世界に挑むのか?

パスとランを主体とした攻撃ラグビーが日本代表の生命線だ(撮影:斉藤健仁)

いよいよイングランドで「楕円球の祭典」が始まった。

第8回のラグビーワールドカップは9月18日に開幕し、19日にラグビー日本代表も初戦となる南アフリカ代表戦を迎える。日本代表は8大会連続8回目の出場となるが、過去7大会で勝利は1991年大会のジンバブエ戦の1度のみで、通算成績は1勝2分21敗と大きく負け越している。

そんな日本代表の指揮官には2012年、オーストラリア人の父と日本人の母を持つ、エディー・ジョーンズHC(ヘットコーチ)が就任。世界も日本も知る名将の下、一日、3部~4部練習を重ねて強化し、ウェールズ代表やイタリア代表を破り、過去最高の9位まで世界ランキングを上げた(9月7日現在は13位)。

そんな「エディージャパン」が掲げる、アタッキングラグビーこそが「ジャパンウェイ(Japan Way)」であり、その根幹をなすのが「ボールポゼッション」とFWとBK一体となった「パスラグビー」である。

ジョーンズHCは、ラグビーはどうしても身体的接触から避けられないスポーツであるため、日本代表より体格に優れた世界の強豪に勝つためのスタイルとして、守り勝つことではなく、攻撃を軸に考えたというわけだ。

かつて、ジョーンズHCは「ラグビー界のiphoneを目指す」「サッカーのバルセロナ(バルサ)のようなラグビーがしたい」というコメントを繰り返していた。

その攻撃ラグビーを実現するべく、常にボールをキープして、なるべく攻撃する時間を増やすため、そして攻撃の起点となるスクラムやラインアウトといったセットプレーを強化するため、フィジカルや接点の強化を4年間にわたって敢行してきた。

そして攻撃の戦術は、スクラムや密集からボールをパスする「9番」SH(スクラムハーフ)の回りと、「10番」司令塔のSO(スタンドオフ)の周りにFWの選手を数人ずつ、「12番」インサイドCTB(センター)の回りにFWとBKの選手を配置する「アタックシェイプ」という戦術を採用している。

※それぞれ、起点となる選手の背番号から「9シェイプ」「10シェイプ」「12シェイプ」と呼ばれている。

その意図とは、ボールを大きく投げて味方を飛ばすようなパスをすると、ボールが空中にある間に相手のディフェンスが寄って流れてしまい1対2、もしくは1対3など攻撃側が不利な状況になってしまう可能性が大きいからだ。

そこで、FWとBK一体となって重層的なアタックラインを形成し、「3つのユニット」で相手のディフェンスラインを惑わしつつ、ランと短いパスを多用することで、攻撃側は最低でも1対1の状況を作り、トライを狙う。

つまり、日本代表では「リロード」と呼んでいる連続攻撃をしつつ、FWとBK一体となってショートパスを重ねてトライを奪ったときこそ、日本のラグビーのスタイルが発揮されている瞬間となる。

かつて、ジョーンズHCにラグビーの魅力をたずねると、人なつっこい笑顔でこう応えてくれた。

「ラグビーは1823年にイングランドでウェッブ・エリスがボールを持って走ったという伝説があるとおり、ボールを持つことで始まった。

だから私にとってラグビーはランニングゲームです。またボールがいい動きをする、賢く使われる、それが魅力です。いい判断、正しい判断をするスマートなラグビーこそ、面白いラグビーです」

ただ今春からは、ワールドカップで戦うフィジカルの強い強豪相手に、ランとパスだけでなく固執することなく、スペースにしっかりとキックを蹴るラグビーも同時に試行してきた。

やはり自陣からどんなシチュエーションでもボールを回すのはやはりワールドカップで勝つためにはリスクがあり、自陣で反則をしてしまうと相手にPGを許してしまうことになるからだ。

南アフリカ戦代表の前日、改めて「ジャパンウェイ(JapanWay)とは?」と聞かれてジョーンズHCは力強くこう答えた。

「あくまでも勝たないといけない。どう勝つか、その方法を探るだけです。その方法とは、我々日本代表はボールを賢く、ハイテンポで動かす。そのコンビネーションを繰り出して勝機を見いだす。それを実行する勇気も必要です。そうすれば強い相手に対しても追い込める」

指揮官が掲げる目標は24年ぶりの勝利だけでなく、南アフリカ、スコットランド、サモア、アメリカと同組の予選プールを突破しての決勝トーナメント進出である。

この目標が達成されるときには、きっと、「エディージャパン」こと日本代表が世界のラグビーファンを魅了するような攻撃ラグビーをしているはずだ。

※「スポプレ144号」より転載、一部改編