「ラグビー界のベッカム」ことウィルキンソンが引退を表明。その功績をふり返る

5月19日、「ラグビー界のデイビッド・ベッカム」こと元イングランド代表SOジョニー・ウィルキンソンが、所属するトゥーロン(フランス)の公式HPで今シーズン限りでの引退を表明した。ウィルキンソンはベッカムよろしくキックが正確で、そしてイケメンのイングランド代表選手という共通点から、そう呼ばれた。スポーツメーカーのCMでもベッカムと共演するなど、ラグビー界を牽引してきた世界的スター選手だった。

2003年W杯決勝でDGを決めて母国に初の栄冠をもたらした

愛称「ウィルコ」。最も印象的なシーンは、やはり2003年のラグビーワールドカップのファイナルであろう。

左足ではなく、右足だった。

エディー・ジョーンズ(現日本代表ヘッドコーチ)が率いた開催国オーストラリア代表と、北半球初となる「ウェブ・エリスカップ」奪取を狙ったイングランド代表の決勝戦は80分では17-17と決着がつかず、延長戦に突入した。

試合終了間際、イングランド代表の「スーパーブーツ」、SOジョニー・ウィルキンソンが約30mのドロップゴール(DG)を狙った。相手にマークされていた利き足の左足ではなく、右足で蹴った放物線は見事にクロスバーを超えた。

ラグビーの母国に、初のワールドカップ優勝の栄冠をもたらした瞬間となった。

テストマッチ1246点は世界歴代2位!

テニス、クリケットなどにも秀でていたウィルキンソンだが楕円球に専念し、1997年にはニューカッスル・ファルコンズ(イングランド)でプロ選手としてのキャリアをスタートさせた。すぐに当時のイングランド代表サー・クライブ・ウッドワード監督の目にとまり、18歳と314日という史上2番目の若さで、1998年のアイルランド戦でテストマッチデビューも果たした。

その後、イングランド代表で積み上げたテストマッチのキャップは91(うち67勝)。度重なるケガに悩ませられたが、2003年のワールドカップ優勝に続いて、2007年にはチームをワールドカップの決勝に導き、2011年にはシックスネーションズ(6カ国対抗)でも自身4度目となる優勝に貢献。「イギリス代表」にあたるブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズでも6試合に出場した。

もちろん、ウィルキンソンは得意のキックでPG、DG(36本!)、コンバージョンを決め続けた。テストマッチにおいて1000得点を超える5人の選手の1人となり、ニュージーランド代表SOダン・カーターの1442点に次ぐ1246点を誇る。ラグビーワールドカップでは277得点を記録し、ワールドカップの2大会(2003年&2007年)の決勝で得点を挙げた唯一の選手にもなった。

『2つの決勝』を終えてからブーツを脱ぐ

日本にも何度か来日し、2004年には早稲田大のグランドで、現在は日本代表で活躍するFB五郎丸歩(ヤマハ発動機)らにキック指導をしたこともあった。2005年にNECとの親善試合のためニューカッスルの一員として来日したが、虫垂炎を患い、その勇姿を国立競技場で見ることができなかったことは残念でならない。

2011年に代表を引退していた34歳のウィルキンソンは、昨シーズンはトゥーロンで欧州王者となり、欧州最優秀選手に選出。今シーズンも中心選手として活躍し、今週末の24日にはウェールズのミレニアムスタジアムで、ラグビー版のチャンピオンズリーグである「ハイネケンカップ」決勝でサラセンズ(イングランド)と対戦し、31日にパリ郊外にあるスタッド・ドゥ・フランス行われるフランス・プロリーグ「TOP14」決勝のカストル戦の『2つの決勝』を終えてからブーツを脱ぐ。

「決して忘れることができないプロラグビー選手として過ごしてきた特別な17年間と、そして、すべての機会を与えてくれた人々に心から感謝しています。僕の持っているすべての力を、2つの決勝に注ぐつもりでいる」(※トゥーロンの公式HPより)

2つの決勝でも、蹴る前に少し前屈みになることが印象的な、その特徴的なキックで有終の美を飾ることを期待して止まない。