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セリエAで3連覇&30回目の優勝を飾ったユヴェントスの「白黒」の秘密 

斉藤健仁スポーツライター

◇今シーズン、ユヴェントスは欧州記録となる102点を達成

「白黒」のユニフォームがひときわ強く見えたシーズンだった。

5月18日、セリエAの今シーズンの最終節となる第38節が行われて、すでにリーグ3連覇&30回目の優勝を決めているユヴェントスがホームでカリアリと対戦し、3-0で勝利して有終の美を飾った。

最終節の勝利で、ユヴェントスは今シーズンのリーグ戦において、ホーム19戦全勝を達成した。さらに勝ち点でも、2006-07シーズンにインテルが記録した97点を上回る、セリエA史上初となる100点超えとなる102点を達成。102点という勝ち点は、バルセロナとレアル・マドリードが持っていた1シーズンでの欧州主要リーグ最多勝ち点記録100点をも更新した。

◇高校生が作ったクラブだから「若者」という名に

そんなユヴェントスは、今から100年以上前の1897年11月1日、本拠地トリノにあるマッシモ・ダゼリオ高等学校の生徒によって「スポルト・クラブ・ユベントス(Sport Club Juventus)」として設立。Juventusとは、ラテン語で「若者、青春」を意味する言葉であり、高校生が名付けたクラブらしいと言えよう。

クラブの愛称の1つに「イタリアの貴婦人(La Vecchia Signora)」があるが、これはユヴェントス(若者)という名前の対義語として、選手たちがしゃれ気味につけたことが端を発しているという。また、ユヴェントスは全国的に人気があることから「イタリアの恋人(La Fidanzata d'Italia )」とも呼ばれ、セリエのクラブで唯一、本拠地名がついていないクラブでもある。

◇創設当時はピンク色のユニフォームだったが……

それでは、なぜ、ユニフォームは特徴的な白黒のストライプになったのだろうか。ユニフォームの色から、イタリア語で「白黒」を表す「ビアンコ・ネロ」(bianconero)、や、シマウマを意味する「ゼブラ」と呼ばれることも。

しかし、実は、ユヴェントスは創設当時、ピンク色のワイシャツを着て黒いネクタイを締め、黒いパンツを履いて試合に臨んでいた。

1903年にユヴェントスの共同経営社の一人で、さらに選手兼審判でもあり繊維卸業を営んでいたジョン・サヴェージ(John Savage)というイギリス人が、ピンク色のワイシャツがボロボロになっているのを見て、ユニフォームを新しくしようと考えたという。そこで、イングランドでノッティンガム・フォレスト(当時)のようなピンク色に白いラインの入ったユニフォームを購入しよう決めた。

そこで、繊維業者だったサヴェージ氏は、ノッティンガムの業者に、もともとはピンクだったが黒く汚れた古いユニフォームを添えてオーダーする。イギリスの業者の店員は、色落ちしたユニフォームを見て「これはもともと、真っ白いユニフォームだと思った」という。さらにこの男はノッティンガム・フォレストではなくノッツ・カウンティ(現在は実質3部のフットボールリーグ1に所属。1862年創設の世界最古のプロクラブとしても知られる)のサポーターだったという偶然が重なり、ノッツ・カウンティと同じ白黒ストライプのユニフォームを作ることにしたという。

◇業者の手違いにより「白黒」に。だが、今では伝統となった

その後、新しいユニフォームがトリノのユヴェントスに着いた。だが、箱を空けると白黒のストライプのユニフォームがあり、サヴェージ氏を始めとするチームは驚いたが、リーグ戦の開幕が迫っていたため交換も代替え品を用意することもできず、そのまま出場することに。その時からはユヴェントス黒白のユニフォームを身にまとうようになったのだが、結局、「白黒」は攻撃的で強い色だと考えるようになり、その後も使用することになったとされる。

1907年にはピンク色のユニフォームを廃止し、正式に8本の白黒ストライプユニフォームのものを採用、デザインも襟付きではなくVネックのものとした。この白黒のラインの本数は7本や9本になったり、50年代や60年代には11本に、90年代には5本となったりした時代も。しかし、100年以上経っても白黒ストライプのユニフォームは不変である。

なお、現在、ホームスタジアムとして使用している「ユヴェントススタジアム」のこけら落としとなった2011年9月8日には、「白黒」の縁のあるノッツ・カウンティを招聘して親善試合を行っている。

スポーツライター

ラグビーとサッカーを中心に新聞、雑誌、Web等で執筆。大学(西洋史学専攻)卒業後、印刷会社を経てスポーツライターに。サッカーは「ピッチ外」、ラグビーは「ピッチ内」を中心に取材(エディージャパン全57試合を現地取材)。「高校生スポーツ」「Rugby Japan 365」の記者も務める。「ラグビー『観戦力』が高まる」「ラグビーは頭脳が9割」「高校ラグビーは頭脳が9割」「日本ラグビーの戦術・システムを教えましょう」(4冊とも東邦出版)「世界のサッカー愛称のひみつ」(光文社)「世界最強のGK論」(出版芸術社)など著書多数。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。1975年生まれ。

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