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ワンピース年間1位は東映32年ぶりの快挙。スラダン、シン・仮面ライダー、キムタクで来年も快進撃?

斉藤博昭映画ジャーナリスト
『ONE PIECE FILM RED』公式HPより

2022年度の映画興行収入は、『ONE PIECE FILM RED』がトップを飾りそうだ。興行収入は12月の2週目で186億円を超えて、まだ公開中。2位の『劇場版 呪術廻戦 0』の137.5億円、3位の『トップガン マーヴェリック』の134.7億円を大きく引き離し、ダントツの1位である。

今後、『すずめの戸締まり』(現在、85億円)が数字を伸ばしたとしても、1位には届きそうにない。12月公開の『THE FIRST SLAM DUNK』、『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』は2023年度の集計になる。

注目したいのは、『ONE PIECE FILM RED』の配給が東映であるという事実。このところ日本映画の年間興収ナンバーワンは、すべて配給が東宝。日本映画は東宝を中心に回っていた、と言っても過言ではない。ただ昨年(2021年)、1位となった『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』は東宝・東映・カラーの共同配給であった。

日本映画の年間トップを遡っていくと……(タイトルの後は興収額と配給)

2021年 シン・エヴァンゲリオン劇場版 102.8億円 東宝・東映・カラー

2020年 劇場版「鬼滅の刃」無限列車編 404.3億円 東宝・アニプレックス

2019年 天気の子 141.9億円 東宝

2018年 劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命- 93億円 東宝

2017年 名探偵コナン から紅の恋歌 68.9億円 東宝

2016年 君の名は。 250.3億円 東宝

2015年 バケモノの子 58.5億円 東宝

2014年 STAND BY ME ドラえもん 83.8億円 東宝

2013年 風立ちぬ 120.2億円 東宝

2012年 BRAVE HEARTS 海猿 73.3億円 東宝

2011年 コクリコ坂から 44.6億円 東宝

2010年 借りぐらしのアリエッティ 92.5億円 東宝

さらに遡って日本映画トップ作品を挙げると、『ROOKIES -卒業-』、『崖の上のポニョ』、『HERO』、『ゲド戦記』、『ハウルの動く城』、『世界の中心で、愛をさけぶ』、『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』、『猫の恩返し』他、『千と千尋の神隠し』、『ポケットモンスター 結晶塔の帝王』他、『ポケットモンスター 幻のポケモン・ルギア爆誕』他、『踊る大捜査線 THE MOVIE』、『もののけ姫』、『ゴジラVSデストロイア』、『耳をすませば』、『平成狸合戦ぽんぽこ』、『ゴジラVSモスラ』、『紅の豚』、『おもひでぽろぽろ』他……と、1991年まですべてが東宝の配給作品。スタジオジブリなど強力なラインナップを揃えての圧勝である。

そしてようやく1990年、日本映画の年間トップとして東映の『天と地と』にたどりつく。つまり『ONE PIECE FILM RED』は東映の単独配給作品として32年ぶりに年間1位を達成することになるのだ。快挙と言っていい。

ただ、会社ごとの年間総合では、『劇場版 呪術廻戦 0』『すずめの戸締まり』『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』『キングダム2 遥かなる大地へ』『シン・ウルトラマン』……と日本映画の年間2位以下は、例年どおりズラリと東宝作品(共同配給含む)が並んでいるので、「1強」の地位は揺らがない。それでも「呪術廻戦」や新海誠新作のような年間1位が期待されるものを押しのけて、「ONE PIECE」が風穴を開けた功績は大きい。

そして2023年もこの勢いが加速するかもしれない。記事の冒頭に挙げた『THE FIRST SLAM DUNK』は大ヒット街道を驀進中であり、年が明けると、1/27には木村拓哉が織田信長を演じる『レジェンド&バタフライ』が公開。東映創立70周年を記念した超大作で、先日の岐阜の「信長まつり」のニュースも大きな話題を呼んだので、ヒットへの期待がかかる。そして3月には『シン・仮面ライダー』が公開。『シン・ゴジラ』、『シン・ウルトラマン』は東宝だったが、もともとライダーは東映のフランチャイズだったので、この庵野秀明監督・脚本作は東映が配給する。庵野の監督作としては『シン・ゴジラ』以来で、ファンも多いので作品の仕上がりによっては爆発的な人気のポテンシャルも。ちょっと先だが、2023年の11月には、「聖闘士星矢」のハリウッド実写版『ナイツ・オブ・ザ・ゾディアック』が待機している。東映アニメーション制作なので、日本での配給も東映。

これらの作品がどこまで社会現象になるかで、興行における“東宝1強”の勢力図に変化が起こるかもしれない。2023年はどの作品が日本映画のトップを飾るか、今のところ予想は難しい。

映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、ヤングマガジン、クーリエ・ジャポン、スクリーン、キネマ旬報、映画秘宝、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。

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