映画、どれを観に行くか。口コミおよび専門家、★星取レビューサイトの傾向

公開中の映画の中で、レビューサイトで高い数字を誇っている『ワンダー 君は太陽』

劇場公開されている映画で何を観るか。その際の大きな指針になるのが「評判」であるが、それは映画評論家、専門家らのレビューだったり、周囲の口コミだったりする。かつては前者が最重要な存在だったが、ネットやSNSの浸透により、近年は多くの一般観客の口コミを読み、参考にできる時代になった。その際に一目でわかる評価が、いわゆる「星取」で、多くの媒体で★5つを満点にした採点が用いられている。

映画口コミサイトも乱立するなか、現在、★の採点で最も影響力のあるのが、Yahoo!映画フィルマークス

両サイトとも、5点満点でレビュアーの平均点が表示されており、その数字はほぼ近い。たとえば現在公開中の話題作を比べてみると……(以下、Yahoo!がY、フィルマークスがF ※数字は7/11現在)

『万引き家族』 Y:3.86 F:4.1

『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』 Y:3.74 F:3.8

『ワンダー 君は太陽』 Y:4.46 F:4.3

『空飛ぶタイヤ』 Y:4.06 F:3.7'''

『パンク侍 斬られて候』 Y:2.94 F:3.3

『デッドプール2』 Y:4.06 F:4.1

それほど大きな差は見られない。この6作では、どちらもトップとワーストの作品は同じだ。しかし、それぞれの星の数のバラつきには差があり、『パンク侍』の場合、フィルマークスは★2~4が多く並ぶ一方で、Yahoo!は★1 と★5の両極も目立つ結果になっている。他の作品からも、Yahoo!の方が全体に感想がばらけている印象が強く、とくに強烈な反論も目立っていたりする。

対してフィルマークスは、ひとつのコメントに賛否の意見を書いていたり、客観的なレビューも目立つ。★の数も小数点以下も表示できるので、微妙な差も考慮できる。全体にYahoo!よりも映画マニアなムードも感じさせるが、その分、コアな意見も多かったりする。

さらに、Yahoo!では平均ポイントが2点台になる作品もよく目にするが、フィルマークスでは少なめ。Yahoo!で★平均2.16だった『ラプラスの魔女』も、フィルマークスはギリギリ3.0。昨年大ヒットして、他のコミック実写化に比べて評判も上々だった『銀魂』もYahoo!では2.76という意外に厳しい評価を受けている(フィルマークスでは3.5)。

そのあたりを考慮して参考にしてほしいが、時折、気になるのは、劇場公開前に試写会などで先に観た人の点数が意外に高く、公開が始まると点が少し下がって落ち着く、という傾向。試写会で無料で観た「ありがたみ」が加味されるのか、あるいは他に要因があるのか。普段ほとんど書いていないレビュアーによる高い点が出るのも、公開前が多い。

もうひとつ、口コミの評価で人気が高いのは、映画.comの映画レビュー人気作品ランキング。Yahoo!やフィルマークスのように、作品ごとの平均ポイントだけではなく、「直近30日に投稿された映画レビューの評価×件数+共感度」という独自のランキングを出している。さらに「泣ける」「笑える」など12項目に細分化されたレビュー印象ランキングもあるので、より各自の嗜好に合わせることが可能。映画専門サイトということで、レビューの内容もバラエティに富んでいる。

いずれにしても、口コミレビューは「書きたい」という衝動がきっかけになるので、褒めるにしても貶すにしても、感情的な部分が出てくるのは当然。だからこそ読んでいて面白い部分もある。しかし、より客観的な判断ということになれば、やはり映画評論家や専門家によるプロのレビューである。ここでも★5つの採点方法をとるケースがいくつかある。

伝統的なのは週刊文春のシネマチャートで、毎週2本を5名が採点するのだが、作品のチョイスとして、名監督や社会派テーマ系も多く、エンタメ系、アクション大作はあまり優先されない。そのためか★は3~5が中心である。前述の作品では5名の平均が、『ワンダー 君は太陽』は★3.4、『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』は★3.2、『万引き家族』は★4.4である。『ワンダー』がやや低めなのが特徴的。

星取で、より多くの作品を網羅しているのが、シネマトゥデイの映画短評で、現在12名のレビュアーが★5つで採点している。ただし、作品選定は各自に任されており(話題作は優先して書かれている)、ダメだった作品を積極的にチョイスしなくても良い。ゆえに★3~5が大勢を占めている。『ワンダー 君は太陽』は★4.4、『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』は★3.7、『万引き家族』は★4.8、『パンク侍 斬られて候』は★2.2、『デッドプール2』は★4.3。意外なほど、Yahoo!やフィルマークスに近い数字だ。

では、専門家の星取で、満遍なく公開作品を取り上げている媒体はないのか。それはキネマ旬報だろう。月2回の発行で毎回20本、つまり毎月40本も取り上げ、各作品3名が採点している。公開作はほぼ網羅されていると言ってよく(『デッドプール2』が入ってなかったりするが)、★1つという厳しい評も日常である。しかし媒体の性質上、かなり専門的なレビューも多く、一般観客にとってはやや難解な表現もある。雑誌の誌面だけでなく、ウェブのKINENOTEでも公開されるので、広範囲から選ぶ基準にはなる。

レビュアーが3名なので偏りも生じるが、『ワンダー 君は太陽』は★4.4、『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』は★3.67、『万引き家族』は★4、『空飛ぶタイヤ』は★3.33、『パンク侍 斬られて候』は★4.33

『パンク侍』が他に比べて、評価が高いのが興味深い。

ちなみにKINENOTEは、100点満点の一般レビューも用意されている。

アメリカ映画を中心に国際的な映画批評サイトでは、ロッテントマトが有名で、批評家、一般観客の両方の数字が集計されている。日本でもこの数字が宣伝材料となり、目にする機会が増えた。ただしロッテントマトは、好き/嫌いの二者択一で、全体の何パーセントが「好き」と答えたかという数字。★の数による判断とは若干異なる。同じようにシンプルに満足度のパーセンテージということで、日本なら、ぴあの初日満足度ランキングが参考にされることが多い。

「書きたい」という欲求から発生する観客の素直な反応。そして、より冷静な批評を追求する評論家のレビュー。双方を簡単に比較できるようになったことで、映画が人々にどう受け入れられているか、映画をより深く楽しむには、どうしたらいいかなど、より多くの人が考察しやすい時代に入ってきた気がする。

『ワンダー 君は太陽』

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