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ライバル作の勢いはどこへ…。『スター・ウォーズ』一人勝ちは止められない? 2018年のお正月映画

斉藤博昭映画ジャーナリスト
『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』LAワールドプレミアより(写真:ロイター/アフロ)

12月15日(金)に日本でも公開される『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』。2年前の前作『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』は、116.3億円の興行収入を記録し、2016年のランクで、『君の名は。』に続く第2位となった。

新シリーズ3部作の2作目ということで、『フォースの覚醒』の数字にどの程度、近づけるのか。通常、シリーズものの続編は数字を落とすのが常識。しかし今回はちょっと状況が違う。同じお正月映画に、大きなライバル作品が見当たらないからだ。もしかしたら『最後のジェダイ』のありえない独走状態になり、前作超えの数字を期待できるかもしれない。

2年前の『フォースの覚醒』公開時には、ちょっとばかり残念な結果があった。公開週の週末ランキングで、あろうことか2位に甘んじたのである。1位は『映画 妖怪ウォッチ エンマ大王と5つの物語だニャン!』。興行通信社が発表するランキングは「動員」なので、興行収入では『フォースの覚醒』の方が上回っていた。とはいえ、がっかり感が漂ったのは否めない。

最終的に『妖怪ウォッチ』の興収は55.3億円だったので、『フォースの覚醒』の約半分。しかし翌週末も動員1位は『妖怪ウォッチ』で、強力なライバルであった。この年のお正月映画は、洋画でも『007 スペクター』が29.6億円、邦画では『orangeーオレンジー』が32.5億円の興収。『フォースの覚醒』の圧倒的勝利とはいえ、他の作品もそこそこ健闘した。

そして『スター・ウォーズ』の本シリーズがなかった昨年は、『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』が73億円、『ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー』が46億円、『バイオハザード:ザ・ファイナル』が42億円、『映画 妖怪ウォッチ 空飛ぶクジラとダブル世界の大冒険だニャン!』が32億円。そして『海賊とよばれた男』が23億円と続いた。

では2017〜18年のお正月映画で、『最後のジェダイ』のライバルはどんな状況か。

邦画として最大のライバルとして期待されていたのが、原作の発行部数が7000万部という『鋼の錬金術師』だったが、公開週末土日の12/2〜3の2日間の数字が、同じ山田涼介主演で、最終興収35.2億円に達した『暗殺教室 卒業編』の約4割。同じく大ヒットコミックの映画化『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』より数字は上回ったが、『鋼〜』は作品自体の評価も賛否両論なので、これから数字を大きく伸ばす可能性も低い。公開週こそ1位になったが、翌週には5位に落ちたので、10〜20億円の間になると思われる。

『フォースの覚醒』の最大のライバルだった『妖怪ウォッチ』の新作『映画 妖怪ウォッチ シャドウサイド 鬼王の復活』は、一昨年と同じく翌日(12/16)の公開となるが、シリーズの興収数字の推移をみると、78億円→55.3億円→32億円と急激に下降しているので、がんばっても前作並みかと思われる。

12/9〜10のランクで4位までを占めたのは、その週末公開の『仮面ライダー平成ジェネレーションズ FINAL ビルド&エグゼイドwithレジェンドライダー』、『DESTINY 鎌倉ものがたり』、『オリエント急行殺人事件』、『ガールズ&パンツァー 最終章 第1話』。しかしどの作品も数字はまあまあというところ。『仮面ライダー』はおそらく翌週の数字は落ちるだろうが、残りの3作は今後の数字キープに期待したい。とくにガルパンは息の長い興行になりそうだが、当面の目標は20億円あたりだろう。

そう考えると、どれも『最後のジェダイ』の前では、地味な奮闘である。

3年前のお正月映画は『ベイマックス』(91.8億円)、『妖怪ウォッチ』(78億円)の2強であったし、2011〜12年は『ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル』(59.7億円)の独走で、かろうじて『映画 怪物くん』が31.3億円という結果だった。ヒット作が多く生まれるような印象のあるお正月映画だが、むしろそうでもないのである。

『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』への期待がいくら高いとはいえ、その一人勝ちで終わるのも、ちょっと寂しい気がする。

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 『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』

12月15日(金)、全国ロードショー

配給/ウォルト・ディズニー・ジャパン

(C) 2017 Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、ヤングマガジン、クーリエ・ジャポン、スクリーン、キネマ旬報、映画秘宝、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。

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