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やたら大好評の新スパイダーマン「トムホ」の素顔は? ジブリ作品、「ビリー・エリオット」も経験

斉藤博昭映画ジャーナリスト
(写真:Splash/アフロ)

トビー・マグワイア、アンドリュー・ガーフィールドと、この15年間で2人の俳優によるスパイダーマン映画が計5本、製作されたが、いよいよ3人目の登場である。大役を任されたのは、トム・ホランド

『スパイダーマン:ホームカミング』は、すでにアメリカなど各国で公開が始まり、熱狂的と言ってもいい強い支持を集めている。トム・ホランドのスパイダーマン役は、すでに『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』でお披露目されていたが、主役を張った今作で、そのあまりのハマリ具合が証明されることになった。本作は爽やかな青春映画の側面も濃厚で、そのムードにじつにマッチしているのである。先日の彼への電話インタビューを基に、その素顔に迫ってみよう。

現在21歳になったばかりのトム・ホランドは、イギリス出身。通常、電話インタビューでは相手の顔が見えないので受け答えも適当になってしまうケースもあるのだが、今回は質問者であるこちらの名前をしっかり確認し、その名前で呼びかけてくるなど、なかなかにジェントルマンである。

ガーフィールドも生まれはアメリカだが、母親がイギリス人で両国の国籍をもっている。ピーター・パーカー/スパイダーマンはもちろん、アメリカ人。イギリス人らしさが込められているのかホランドに聞くと、「うーん、別に関係ないかな」と、あっけらかんと答える。

「トムハ」「トムヒ」、そして「トムホ」の時代に

それにしてもイギリス人俳優「トム」の近年の活躍はすさまじい。トム・ハーディ(『マッドマックス/怒りのデス・ロード』)、トム・ヒドルストン(『マイティ・ソー』)……。「トムハ」「トムヒ」に続き、今度は「トムホ」の大躍進である(「ハリー・ポッター」シリーズのトム・フェルトンもいますが)。

「僕はべつに、俳優になろうという強い意思があったわけじゃない。幸運が続いただけ。ステージで演技の魅力を知ったんだ」。

写真家の母と、コメディアンで作家の父の間に生まれたトム・ホランド。もともと俳優志望ではなかったと告白する。ロンドンのダンススクールに通い、10歳のときにその才能が見出されて、ミュージカル「ビリー・エリオット」のオーディションを受けることになった。そして11歳で、ビリーの親友役マイケルで舞台デビュー。3ケ月後には主人公ビリーの役を任されていた。

「『ビリー・エリオット』で、クラシックバレエからタップ、ヒップホップまでダンスの訓練をみっちり受けた。今回のスパイダーマン役のオーディションでは、別に求められなかったけど、自分からダンスやアクロバット、器械体操の特技を披露したよ」。

「高校の部活はラグビーだった」そうで、トムホ、正真正銘の体育会系なのである。

「ビリー・エリオット」のパフォーマンスは、イギリスのブラウン首相(当時)の前でも演じるなど、何人もいるビリー役の代表格になった。その後、俳優として意外な仕事が舞い込む。『借りぐらしのアリエッティ』、イギリス上映版の声だ。オリジナルでは神木隆之介が演じた主人公・翔を担当したのである。このとき14歳。イギリス版の予告編はこちら

「『アリエッティ』をきっかけに、日本のアニメに夢中になった時期があったよ。『千と千尋の神隠し』、『もののけ姫』、『ハウルの動く城』は今でも大好きさ」

宮崎駿作品を3本のタイトルを、一気に挙げるトムホ。まくしたてるような口調は、この瞬間、最高潮に達していた。そう、基本、彼はせっかちな性格なようで、インタビューの答えも瞬発力を発揮して、どんどん早口で返してくる。

その後、スマトラ島沖地震の津波に巻き込まれた一家を描く『インポッシブル』(2012年)での長男役を経て、今回のスパイダーマン役をつかむことになった。

「『インポッシブル』のJ・A・バヨナ監督は、ひじょうに集中するタイプで、撮影の合間に俳優の気分を高める音楽を流したりしてた。そして子供目線で描くのがうまい人。それに対して『スパイダーマン:ホームカミング』のジョン・ワッツ監督は、僕ら俳優に即興をやらせたりして、まったく違う演出スタイルだった。とても勉強になったよ」

というのも、トム・ホランド、将来は監督になることが目標らしい。すでに短編映画も自分で撮っていたりするのだ。

「5年後くらいまでに長編映画の監督でデビューしたいんだけど……うーん,でも今は俳優として忙しすぎるから無理そうかな」

21歳にして、映画監督としての将来をかなり真剣に考えている様子である。『スパイダーマン:ホームカミング』では、ジョン・ワッツ監督がトム・ホランドの身体能力に惚れ込み、ほぼすべてのスタントを任せたと告白していた。マスクを付けているシーンももちろん本人が演じ、要所ではパフォーマンス・キャプチャーで彼の動きをCG化したという。

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作品が完成した今、トム・ホランドはヒーロー役の使命感を実感している。

「マーベルヒーローでいちばん好きだったスパイダーマンを演じる喜びで、撮影中は幸せいっぱいだったけど、映画が完成し、たとえばスーツ姿で子供たちの病院を訪問したりして、自覚が芽ばえるようになった。スパイダーマンのパジャマを着た少年が、僕を見たときの、あの興奮した表情ったら……。これからも心して演じなきゃね」

この後もスパイダーマン単独の続編、さらに「アベンジャーズ」の一員としての作品も控えている。マーベル作品の他にも『スター・ウォーズ』のヒロイン、デイジー・リドリーとの共演作などいくつもの映画が予定され、当分、「トムホ」時代は続きそうだ。

トム・ホランドは、日本公開となる8月11日の直前に来日する。日本のファンを前にどんなコメントを残してくれるか楽しみにしてほしい。

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『スパイダーマン:ホームカミング』

8月11日(金・祝)、全国ロードショー

配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

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映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、ヤングマガジン、クーリエ・ジャポン、スクリーン、キネマ旬報、映画秘宝、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。

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