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ラーメンだけじゃない好物も。つねにナイスな男、キアヌ・リーブス インタビュー

斉藤博昭映画ジャーナリスト
この、ちょっとユルい表情が「らしい」

大作で主演を務めるスターは、もちろん数々のプレッシャーがあり、セレブとしての自意識も高く、そうした面がインタビューから伝わることも多い。しかし徹底してマイペース。出演した作品が気に入っていれば、とことん楽しくインタビューに応じる人もいる。その代表例が、キアヌ・リーブスだ。7/7に公開される最新作『ジョン・ウィック:チャプター2』まで、キアヌには過去4回取材しているが、その印象がブレることはない。

公園で“ぼっち”でパンを食べ、地下鉄で女性に席を譲る。こうした一般人と変わらないキアヌの日常はネットでもおなじみだが、素顔の彼も自然体。イメージどおりなのである。

ラーメンの質問はNG

そんなキアヌの“自由すぎる”態度を抑えるためか、彼のパブリシストはけっこう厳しい。前作『ジョン・ウィック』に続いて「ラーメンに関する質問はしないで」などのお達しもある。作品から大きく外れてはマズいからだろう。まぁ本人が勝手にしゃべっちゃうことも多いんですけど……。今回も宿泊は、もちろん帝国ホテル。ビートたけしと共演した『JM』に、「洗濯を頼みたい。東京の帝国ホテルがしてくれるような」とキアヌがアドリブで入れたセリフがあるように、彼のご指名なのは間違いない。ただ今回は、取材は近くの別のホテルで行われた。映画の宣伝では前作『ジョン・ウィック』以来、2年ぶりの来日だが、えっ、もう2年? 先週、東京にいたような感覚だけど。不思議だなと、真顔で答える。その様子も、作った感じではないのがキアヌらしい。

キアヌにとって『ジョン・ウィック』は、アクションスターとして大復活をとげた新たな当たり役であるが、彼も心からこの役を心底、愛しているようだ。

今回の続編では35人の敵を次々と倒す、驚異のアクションシーンも
今回の続編では35人の敵を次々と倒す、驚異のアクションシーンも

『ジョン・ウィック』1作目のインタビューでは

柔道や柔術を初めて基礎から習って、本当に楽しかった。これまで肩も手術したし、左脚の関節炎でヒザから水を抜く治療なんかもしてきた。でも“年の功”で要領よくトレーニングする術も心得てるよ

と、少年のような表情で役作りを振り返ったキアヌ。今回の『チャプター2』では、さらに興奮した口調でーー

こういった独自の世界観をもったアクション映画が、僕は好きで、好きでたまらない。僕はアクションのトレーニングで『ツールボックス(道具箱)』を使うんだ。たとえば、銃の装填はこのやり方、車のスピンだったら45度から180度まで、さまざまなテクニックを『箱』に例え、それぞれ箱を取り出してくる感じ。

そして僕があこがれるのは、1960〜70年台のハードボイルドのアクションヒーローだ。サニー千葉(千葉真一)さん。アクションスターの、ひとつの型を作ったから、僕らはみな彼に恩義を感じてる。三船(敏郎)さんもそう。何があってもクールで、ちょっぴり熱いハートがある。そこがジョン・ウィックにつながっているよ

キアヌのアクション愛は日本のスターにも話がおよんでいく。

余市でウイスキーを飲みたい

相変わらず微妙なスタイリング(おそらく自前)が微笑ましい
相変わらず微妙なスタイリング(おそらく自前)が微笑ましい

何かと日本との縁も多いキアヌに、2年前のインタビューで日本への思いを聞くとーー

できれば東京で1ケ月くらいアパートを借りて住んでみたい。表参道の裏通りとかなら静かでいいんじゃない? それで静まり返った夜の東京の道を、ポルシェかなんかに乗ってとばすのが、僕の夢だよ

と、かなり具体的な願望を語っていた。ウケを狙ったサービス精神の答えとは、ちょっと違う。今回、そんな東京愛がどう変わったか聞いてみると……

東京に住みたい気持ちは変わらないよ。あともうひとつ、行きたい場所ができた。北海道の余市だ。じつは友達が余市のウイスキー醸造所へ行こうと誘ってくれたけど、僕は仕事があって断った。その友達が真冬の美しい余市の写真を送ってくれて、ものすごいジェラシーを感じたんだ(笑)。余市のウイスキーが好きなのかって? うん。悪くない味だからね

日本のウイスキーにも目がないらしい。

そして今から12年前。アクション映画『コンスタンティン』でインタビューしたとき、キアヌはこんなことを言っていた。

『スピード』の頃、グッドアクター(良い俳優)をめざしたいと言っていて、いま40代に入って、なんとかグッドアクターのレベルになれた気がする。次の目標はグレートアクター(偉大な俳優)になることかな

グレートアクターへの道

52歳の現在、その「グレート」に到達したのかを改めて聞いてみた。

うーん、まだまだグレートじゃないかな(笑)。50代の現在、こうしてクールでイケてる映画に参加できているから、キャリアには心から感謝している。このまま仕事が続いて、もっと自分を模索し、実力を磨き続ければ、もしかしたらグレートの域に差しかかれるかもね

60代を迎えても、おそらくキアヌは自分のことを「グレート」と呼ぶことはないだろう。とはいえ、その頃にはアクションスターから次のステージに移っているに違いない。われわれ映画を観る側が、彼をグレートアクターとして尊敬の眼差しで見つめる日が訪れることを楽しみにしたい。

画像

『ジョン・ウィック:チャプター2』

7月7日(金)、全国ロードショー

配給/ポニーキャニオン

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映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、ヤングマガジン、クーリエ・ジャポン、スクリーン、キネマ旬報、映画秘宝、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。

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