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5月公開から続々と…未体験型エイリアンがスクリーンを賑わせる

斉藤博昭映画ジャーナリスト
『メッセージ』より、背後に浮かぶのが地球外から襲来した飛行物体

間もなく、5月19日に日本でも公開される『メッセージ』は、SF作品ながら今年のアカデミー賞で作品賞にノミネートされるなど、ひじょうに評価の高い一作。内容はもちろんなのだが、注目してほしいのがビジュアルだ。空中に浮かんだままの巨大宇宙船のデザインも、これまでのSF映画にはなかった斬新さだし、何より、その内部で主人公たちを待つ、地球外生命体の姿に多くの人が衝撃を受けることだろう。

7本脚の神々しい姿に衝撃

これがヘプタポッドが示す「模様」のひとつ
これがヘプタポッドが示す「模様」のひとつ

テッド・チャンの原作「あなたの人生の物語」にも描写されているこの地球外生命体は、7本脚という意味の「ヘプタポッド」と呼ばれる。宇宙船内で白い霧の中からゆっくりと現れる彼らは、不気味ながら神々しくもあり、われわれ観客も主人公たちと同じ目線で、恐怖と畏怖の念を同時に味わうことになる(予告編で、その一部があらわになっている)。出演したジェレミー・レナーに聞いたところ、現場では彼らの頭上でプロの人形遣いが大きな模型を操り、その後、CGで映像化されたそう。このヘプタポッド、コミュニケーションの道具は言語ではなく、「模様」である。墨絵の円のような模様を吐き出し、そこに意味が込められている。「円」というのも物語で重要な意味をもっていたりして、外見だけでなく、彼らの行動、そして地球に来た目的まで、何から何まで過去の映画のエイリアンの常識を超えて、観客を圧倒し、楽しませてくれるのだ。

このヘプタポッドに代表されるように、2017年は、映画に次々と未体験レベルのエイリアンが登場する。

『メッセージ』に先立って、5/12に公開される『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』は、マーヴェル作品なので奇抜なエイリアンが次々と出てくるのは想定内。それでも全身、金色という軍団や、昆虫のような触覚をもった、キモかわいいキャラ(ちょっとビュークに似てる)など、第1作にはいなかったエイリアンキャラの活躍&暴れっぷりが痛快だ。

巨大化し、人間たちも餌食に……

そして「斬新」という点でヘプタポッドに劣らない個性のエイリアンが登場するのが、7/8公開の『ライフ』。火星で採取した生命体が、宇宙ステーションの6人のクルーたちに襲いかかる物語。クルーの一人を真田広之が演じているのも話題だ。この生命体、最初は人間の指くらいの大きさ。半透明で、クリオネのような形態なのは、こちらの予告編でも明らか。人間の指に絡んできたりして、妙に愛くるしい。

『ライフ』で、宇宙ステーションで襲われる面々
『ライフ』で、宇宙ステーションで襲われる面々

しかし外部の物体を飲み込んだりして、どんどん大きくなっていく。シリコンかゴムみたいな質感で、張り付いた相手から絶対に離れない。ダーウィンの進化論を一気に再現するかのように、単体でここまで外見を変えるエイリアンは過去の映画にもあったが、クルーたちに容赦なく襲いかかり、ここまで狡猾で知的なエイリアンは珍しい。この展開で思い出してしまうのが、リドリー・スコット監督の『エイリアン』だろう。

さらに満を持して「真打ち」が!

その『エイリアン』の新たな一作で、リドリー・スコットがメガホンをとる『エイリアン:コヴェナント』も、エイリアン映画の決定版として2017年に公開される(日本は9月)。物語の時系列としては『プロメテウス』から『エイリアン』の間で、『エイリアン』に登場した、ゼノモーフ(H・R・ギーガーがデザインした、後頭部が後ろに長い有名なエイリアンキャラ)へと進化するネオモーフが大暴れする。未知の惑星、そして宇宙船コヴェナント号内での特大パニックに、衰え知らずのリドリーの演出が冴えわたるのは、予告編からも伝わってくる。『メッセージ』も『ライフ』もエイリアンはCGだが、『エイリアン:コヴェナント』では実物のモデルも多用されており、オリジナル版の魅力だったアナログ的恐怖も再現されそう。筆者は昨年、シドニーの撮影現場を訪れたが、ネオモーフが人間の背中を突き破って外に出てくるモデルなども作られており、その生々しさに驚愕した。

エイリアンが登場する大作は、ほぼ毎年のように作られているが、2017年公開作におけるエイリアンたちの個性はかなり際立っている。映画ファン、SFファンはどれを観ても満足できるのではないか。

画像

『エイリアン:コヴェナント』

(c) 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved

9月ロードショー 配給:20世紀フォックス映画

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』

5月12日(金)ロードショー 配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン

『メッセージ』

5月19日(金)ロードショー 配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

『ライフ』

7月8日(土)ロードショー 配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、ヤングマガジン、クーリエ・ジャポン、スクリーン、キネマ旬報、映画秘宝、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。

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