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爆発的スタートを切った『美女と野獣』は、2017年のナンバーワンを狙えるか

斉藤博昭映画ジャーナリスト

先々週末の土日の興行収入で『名探偵コナン から紅の恋歌(ラブレター)』が12億8992万円という驚異の数字を記録。2017年の週末成績ではトップだが、続く先週末も『美女と野獣』が、土日で10億6536億円、公開の金曜日と合わせた3日間で13億7876億円という、これまた信じがたいほど高い数字を叩き出して首位デビューを果たした。

通常の成績ならトップの作品は、せいぜい5億円あたり(2017年なら『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』『SING シング』など)なので、この2作の数字はものすごい。『コナン』は2週目の先週末、7億4800万円だが、ゴールデンウィークが控えているので好調はキープされるだろう。ただ、シリーズ作品であり、固定ファンを集客することは予想の範囲内でもある。

シリーズではない、洋画の実写である『美女と野獣』が今後、ゴールデンウィークの勢いもあって、どれくらい数字を伸ばすのか。ロケットスタートしただけに、業界全体の期待がかかる。2017年、洋画のナンバーワン、いやもしかしたら邦画を含めた日本国内興収のナンバーワンを狙えるかもしれない。

ちなみに世界興収では『美女と野獣』は、すでに10億ドルを突破している。これはハリウッドでは「10億ドル映画クラブ(The Billion-Dollar Film Club)」と称され、『美女と野獣』はその29作目に名を連ねた(先週末、『ワイルド・スピードICE BREAK』が早くも30作目という連続栄誉)。同じエマ・ワトソン主演の『ハリー・ポッター』シリーズは最終作しか、このクラブに入っていない。詳しい作品はこちらを参照してください。

『美女と野獣』のオープニング成績を、最近の特大ヒット作と比較してみると……

『君の名は。』9億3000万円(週末2日) →最終興収250億円あたり(年間1位 ※現在も続映中)

『シン・ゴジラ』6億2461万円(週末2日) →最終興収82.5億円(年間3位)

『スター・ウォーズ フォースの覚醒』12億4502万円(週末2日)、16億1934万円(週末3日) →最終興収116.3億円(年間2位)

『ジュラシック・ワールド』8億4512万円(週末2日) →最終興収95.3億円(年間1位)

『アナと雪の女王』7億63382万円(週末2日)、9億8640万円(週末3日)→最終興収254.8億円(年間1位)

さらに同じようなディズニーのアニメ実写化でのヒット作と比べると……

『アリス・イン・ワンダーランド』13億1653万円(週末2日) →最終興収118億円(年間2位)

『マレフィセント』6億9167万円(週末2日)→最終興収65.4億円(年間4位)

『シンデレラ』5億5610万円(週末2日)→最終興収57.3億円(年間5位)

『美女と野獣』は、オープニングの感触としては『君の名は。』や『アリス・イン・ワンダーランド』に近いようだ。上記のヒット作の傾向をみると、オープニングの約10倍が最終興収となっている。作品の知名度、ディズニーのブランド力、そしてもちろん完成度の高さで、リピーターも期待できることから、最終的に100億円は確実になってきた。ただ「アナ雪」のような社会現象になる可能性が少ない。すでに曲も認知されているし、新しい「くいつきネタ」はないからだ。

こうなると2017年のナンバーワンも狙えるわけだが、年末に公開される『スター・ウォーズ』の新作は2018年分に入るので、夏以降のライバル作品がどれくらいのヒットになるかに係ってきそう。ライバル作品は、原作ファンの多い『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』、昨年の『君の名は。』のようなブームを狙うアニメ『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』あたりだろうか。しかし昨年の『君の名は。』や『シン・ゴジラ』も“想定外”のヒットだっただけに、今後、伏兵作品が現れる可能性も大いにある。

画像

『美女と野獣』

全国公開中

配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン

(c) 2017 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、ヤングマガジン、クーリエ・ジャポン、スクリーン、キネマ旬報、映画秘宝、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。

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