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2017年、最大のヒット作を狙うのは、アニメからの実写か、実写からのアニメか

斉藤博昭映画ジャーナリスト
(C) 2016 Disney. All Rights Reserved.

『君の名は。』を筆頭に予想外の大ヒット映画が生まれた2016年。では、2017年はどの作品がトップをめざすのか? その可能性の高い映画を紹介していきたい。2トップは偶然にも、アニメ→実写、その逆の実写→アニメという作品が狙っている。

まずは[洋画]から

知名度と曲のパワーで爆発的ヒット確実!?

美女と野獣』(4/21公開)

安定のディズニー作品であるうえに、タイトルの知名度も抜群。1991年のアニメーション作品の評価はいまだに高いうえに、舞台ミュージカル版として日本でも劇団四季が上演し、現在まで衰えない人気をキープしている。ここ数年、『シンデレラ』『ジャングル・ブック』などディズニー名作アニメの実写化が相次いで成功を収めているが、その極めつけになりそう。というのも、「24時間で最も再生された予告編」という記録を打ち立てたからだ。その予告編は、エマ・ワトソンの主役へのハマリ具合や、実写となった各キャラの完成度の高さを証明する仕上がり。さらに期待感は加速している。

何よりも本作は、おなじみの名曲の力があるので、『アナと雪の女王』のブームに近づく可能性も秘めている。

『美女と野獣』を超えそうなのは、先日のキャリー・フィッシャーの訃報で前作以上の話題になる『スター・ウォーズ/エピソード8』だが、こちらは年末の12/15公開なので、記録としては2018年の対象になる。

好調のディズニーからは、夏に『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』(7/1公開)が待機。ただ、ジョニー・デップの人気も以前ほどではないので、かつての「パイレーツ」ブームをどこまで復活できるかがヒットのカギになる。

待望の続編、ヒーロー映画乱立に日本ネタも…

『ブレードランナー 2049』のコンセプトアート
『ブレードランナー 2049』のコンセプトアート

映画ファンにとって注目なのは『ブレードランナー 2049』(11月公開)。あの名作の、じつに35年ぶりの続編で、ハリソン・フォードも出演。監督は信頼度満点のドゥニ・ヴィルヌーヴなので、傑作の予感が漂う。どこまで数字を伸ばせるか。前作を監督したリドリー・スコットは、自身の新作『エイリアン:コヴェナント』(9月公開)もあるので、2作の相乗効果に期待したい。

一本が特大ヒットとなるのは難しいが、ますます量産されるのが、アメコミヒーロー映画。『スパイダーマン:ホームカミング』(8/11公開)を中心に、マーベル系は『ドクター・ストレンジ』(1/27公開)、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』(5/12公開)、ウルヴァリンの新作『ローガン』(6月公開)、『ソー:ラグナロク』(11月公開)、そしてDC系は、待望のDC版「アベンジャーズ」となるヒーロー総出演の『ジャスティス・リーグ』(冬公開)が登場。『ワンダーウーマン』(8月公開)も控える。作品の数で一大ブームを形成しそうだ。

ブームといえば、日本絡みの海外作品が目立つ2017年。「攻殻機動隊」を基にして、ビートたけしらが豪華共演する『ゴースト・イン・ザ・シェル』(4/7公開)や、遠藤周作原作の『沈黙-サイレンス-』(1/21公開)、元をたどれば『七人の侍』である『マグニフィセント・セブン』(1/27公開)、日本発の戦隊ヒーローをハリウッドが映画化した『パワーレンジャー』(7/15公開)、第二次大戦の沖縄戦を舞台にした『ハクソー・リッジ』(夏公開)、日本統治下を舞台にした韓国の問題作『お嬢さん』(3月公開)などがある。このうち、『ゴースト〜』がどの程度、日本で大ヒットするかによって、今後、ハリウッドで実写化される「ポケモン」や「NARUTO」への期待値も変わってくるだろう。

続いて[邦画]

(c) 2017「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」製作委員会
(c) 2017「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」製作委員会

第2の『君の名は。』になるか?

2016年の興行を牽引した『君の名は。』。その座を受け継ぐ期待がかけられるのが、同じ東宝の『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』(8/18公開)である。川村元気プロデューサー、公開時期、繊細な映像美など、多くの要素が『君の名は。』と同じ。1993年にTVドラマとして放映された、あの岩井俊二の出世作を、アニメ界の気鋭、新房昭之(『魔法少女まどか☆マギカ』『傷物語II』)が監督、『モテキ』『バクマン。』の監督、大根仁が脚本でアニメ化。声の出演も広瀬すず、菅田将暉、宮野真守と、これはもう「オールスター」と言ってもいい布陣。『君の名は。』の公開前から制作は始まっているので、変に同作へのライバル心は意識されておらず、またもや新たな傑作が誕生する予感が! 実写からアニメという点で、『美女と野獣』とは逆パターンである。

同じアニメ作品としてポテンシャルを持つのは、『ひるね姫 〜知らないワタシの物語〜』(3/18公開)と『夜は短し歩けよ乙女』(4/7公開)。前者は女子高生と夢がキーワードになることから『君の名は。』を彷彿とさせるし(展開や世界観はかなり違います!)、後者は、いま乗りにのってる星野源が声を務めるので、作品の仕上がり次第で大化けするかもしれない。

コミック映画化は過熱状態

そして2017年は、大人気コミックの実写化が例年以上に量産されるので、この中からも特大ヒット作品が出てくるはず。とくに爆発的な話題になりそうな作品だけ並べても、以下のとおり……

3月のライオン』(2部作で3/18、4/22公開) 何かと話題作に絡む神木隆之介が主演

無限の住人』(4/29公開) 木村拓哉主演。SMAP後の仕事に

銀魂』(夏公開) 解禁された主演・小栗旬のビジュアルも上々

ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』(8/4公開) 多くのファンの期待を裏切らない出来か?

亜人』9/30公開) 劇場アニメ版3部作は公開済み

鋼の錬金術師』(12月公開)

このうち『無限の住人』と『ジョジョ〜』は両方とも監督が三池崇史というのが気になる(気がかり?)。よく考えればハリウッド作品の『ゴースト・イン・ザ・シェル』も、日本のコミックの実写化だ。

こうして挙げると邦画はアニメおよびコミック系ばかりだが、2016年の『シン・ゴジラ』のように、作品の仕上がり→口コミでの評判にも期待したい。その可能性があるのは、一組の夫婦のドラマが地球規模の衝撃的展開になる、黒沢清監督の『散歩する侵略者』(9/16公開)あたりか。大野智、岡田准一と、ともにジャニーズを主演に迎えた時代劇大作『忍びの国』(7/1公開)、『関ヶ原』(8/26公開)は堅実に稼ぎそう。

SNSでの広がりや、リピーターなどによって、大当たりの作品だけが数字を伸ばす近年の傾向があるが、本当にすばらしい作品がまんべんなくヒットして、映画界全体の底上げが実現することに期待したい。

映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、ヤングマガジン、クーリエ・ジャポン、スクリーン、キネマ旬報、映画秘宝、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。

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