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2016年映画のトレンドワードは「2強対決」

斉藤博昭映画ジャーナリスト
2016年話題作のひとつ『X-MEN:アポカリプス』より

世界的な『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の大ヒットで幕を閉じる2015年。間もなく明ける2016年、映画のトレンドはどうなっていくのだろう。

そのキーワードを挙げるなら、2強の「対決」ということになりそうだ。

DCコミック映画の巻き返しが始まる!

まず、その2強とは、マーヴェルDC

ごぞんじのとおり、アメコミの2大ブランドだが、『アベンジャーズ』のヒットでも分かるように、ここ数年は、マーヴェルのヒーローたちが映画でクロスオーバーし、マーヴェル・シネマティック・ユニヴァースを形成してきた。2016年も『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』が公開。ベネディクト・カンバーバッチ主演の『ドクター・ストレンジ(原題)』も年末に待機する(日本は2017年公開)。『シビル・ウォー〜』にはアントマンスパイダーマン(!)も参戦し、『アベンジャーズ』に劣らぬオールスター映画になりそうだ。

このマーヴェル映画、一人勝ち状態に、2016年はDCコミックがユニヴァースを形成する「DCフィルムズ」が始動する。その先陣を切るのが『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』だ。タイトルどおり、DCブランドの両雄が真っ向勝負する本作には、ワンダーウーマン、アクアマンなど、今後、主演映画が作られる人気キャラも登場。さらにDCの悪役が総結集する『スーサイド・スクワッド』も公開。ウィル・スミスら豪華キャストによる、悪の香り濃厚な新タイプのヒーローアクションに期待が高まる。

DCフィルムズは2017年以降も作品を次々と予定しており、マーヴェル・シネマティック・ユニヴァースとの“2強の戦い”はさらに白熱しそうだが、それぞれの作品内で、バットマンとスーパーマンが戦いキャプテン・アメリカとアイアンマンが激突(『シビル・ウォー〜』)と、ヒーロー同士の2強対決が観られるのも2016年のひとつの特徴だ。

マニアックな注目ヒーローは『デッドプール』!?

マーヴェル・シネマティック・ユニヴァースに属さないマーヴェル映画も、2016年は要注目。『X-MEN』シリーズの最新作で、とりあえず大きな結末を迎える『X-MEN:アポカリプス』も公開。過去最強のミュータントが登場し、時代がさかのぼって描かれていたシリーズが、1作目の時代にリンクする。そして『X-MEN』系から登場する新たなヒーロー映画が『デッドプール(原題)』。『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』にも出ていたデッドプールが主人公なのだが、過去のヒーローのイメージを変える、過激で毒舌、自堕落な面もあるキャラが、マンネリ化しつつあるアメコミヒーロー映画をアップデートする。この『デッドプール』といい、『スーサイド・スクワッド』といい、ブラックな味が2016年のアクション映画の潮流になりそう。

2大人気シリーズが年末に激突!

こうして書くと、アメコミ映画だらけの2016年という印象だが、年末には、もうひとつの2強対決が待機している。

スター・ウォーズ』と『ハリー・ポッター』だ。2つの超人気シリーズから生まれた、もうひとつの映画(アンソロジーとか、スピンオフとか、言い方はさまざま)が公開されるのだ。

ローグ・ワン(原題)』は、『スター・ウォーズ』のエピソード3と4の間が舞台。デス・スターの設計図を盗み出すアドベンチャーを、『GODZILLA ゴジラ』のギャレス・エドワーズが監督。彼もスター・ウォーズおたくとして知られるので楽しみなうえ、マッツ・ミケルセン、ドニー・イェンなどキャストも通好みな面々が揃っている。

『ハリー・ポッター』の世界からは『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』が誕生。ハリーたちがホグワーツ魔法魔術学校で使っていた教科書「幻の動物とその生息地」。その著者を主人公に、今回はニューヨークを舞台にした魔法使いや魔法生物のスペクタクルが展開される。主演はオスカー俳優のエディ・レッドメインで、監督は『ハリー・ポッター』の後半の4作を担当したデヴィッド・イエーツなので、ファンの期待に応える作品に仕上がるのは間違いない。

このように2016年の洋画は、「マーヴェルvs DC」というアメコミ、「スター・ウォーズvs ハリポタ」という超人気シリーズの、2強対決の行方から目が離せない。

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日米の宇宙対決も楽しみに

最後にオマケの「対決」をひとつ。

マット・デイモンが火星に取り残される『オデッセイ』と、伊藤英明らが火星に向かう『テラフォーマーズ』と、偶然にも火星を舞台にした日・米の話題作が2016年に公開。リドリー・スコット、三池崇史と、それぞれ人気監督が火星をどう描くのか、「火星対決」も楽しみにしてほしい。

X-MEN:アポカリプス 2016年夏公開

(c) 2016 MARVEL & Subs. (c) 2016 Twentieth Century Fox

オデッセイ 2016年2月5日 スカラ座他全国ロードショー

(c) 2015 Twentieth Century Fox Film

映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、ヤングマガジン、クーリエ・ジャポン、スクリーン、キネマ旬報、映画秘宝、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。

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