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カーブで飛び出す正面衝突事故 その共通点と対策について考える

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
画像出典/Webikeニュース 写真はイメージです。

人気スポットで発生した死亡事故

絶好のツーリングシーズン、日本の北と南の景勝地でバイクによる痛ましい事故が起きてしまいました。今回は事故を検証しつつ、ライダーとしての対策を考えたいと思います。

6月6日午前、北海道・十勝の国道274号線「日勝峠」でバイクと乗用車が正面衝突する事故がありバイクの男性が死亡、乗用車の3人も負傷しました。事故があったのは午前10時頃で現場は大きな左カーブ。警察はバイクが対向車線へはみ出したとみて状況を調べています。

また、6月20日午前、大分県・九重町の県道11号線、通称「やまなみハイウェイ」で、バイクが対向車線にはみ出し自衛隊の車両と正面衝突、バイクの男性が死亡しています。警察によると事故があったのは午前9時前。現場は片側1車の緩やかな下りの左カーブで、仲間数人とツーリング中だったようです。

「左コーナー」「中高年」「スポーツバイク」は注意!

今回の事故には共通点が見い出せます。

ひとつは事故が発生した道路のシチュエーションです。十勝の「日勝峠」も阿蘇の「やまなみハイウェイ」もそれぞれ風光明媚な観光道路として知られています。私も走ったことがありますが、まさにライダーの聖地と呼べるような気持ちの良いワインディングが続いています。ただ、一方で速度も出しやすく、思った以上に勾配も急で、かつ奥まで曲がり込んでいる難しいカーブが多いのも特徴です。

事故のパターンも似ています。両方とも左カーブで曲がり切れず、対向車線へ飛び出したところへ対向車と正面衝突し、ライダーが命を落としています。ニュース映像などを確認すると、現場の状況から転倒・滑走したとみられる痕跡が長く残っていたり、バイクだけでなく対向車も大きく破損していたりと相応の速度が出ていたことがうかがえます。

そして、ライダーの年齢も61歳と58歳と近く、ともにスポーツモデルに乗っていたようです。体力や視力、反射神経の衰えも関係があるかもしれません。

まとめると、「風光明媚でスピードの出るワインディング」において「スポーツバイクに乗る中高年ライダー」が「左カーブ」で飛び出し「正面衝突」で死亡というパターンが見えてきます。数値データをとっているわけではないので断定はできませんが、定性的な意味ではたしかに似通った傾向があり、身に覚えのある方は特に注意が必要かと思われます。

「速度」「目線」「ライン取り」で安全マージンを!

日本の道路は左側通行ということもあり、左カーブのほうが得意というライダーが多いようです。視覚的にもガードレールが目前に迫って見える右カーブに対して、左カーブはアウト側に対向車線があるため一見道幅も広く見えますが、飛び出した先には対向車が来ることを常に想定しておかないと危険です。

対向車線へ飛び出すなど最悪のパターンを起こさないためには、まずカーブ手前では減速して「速度を抑える」ことはもちろんのこと、コーナーの先々の状況をいち早く知るために「目線を遠くへ」向けることが大事です。バイクの目線の配り方には独特のテクニックがありますが、簡単に言うと単に遠くを見るだけでなく、遠く(コーナーを見通せる限りの先)と近く(自分と「遠く」との中間地点あたり)を交互に見るようにするとライン修正がしやすくなるはずです。

ライン取りも大事で、自分の車線の真ん中辺りを常にキープして走るつもりでいれば、多少ラインがずれたとしてもまだ安全マージンが保てます。私は自分の車線を3等分した真ん中のゾーンからはみ出さずに走れるよう意識しています。車線の幅はだいたい3m程度なので、その真ん中の幅1mのゾーン内を走るわけです。

以上のことが確実にできなければ、それはそのライダーにとってオーバースピードということになり、危険な領域に足を踏み入れていると思っていいでしょう。

また、マスツーリングなどでは経験やスキルの異なるライダーが一緒に走りますので、けっして無理をして前のバイクに付いていこうとはせず、また、ベテランもビギナーを精神的に追い込むような走り方をしては絶対にいけません。

まもなく梅雨も明ける頃です。ぜひこの機会にもう一度、安全な走りについて考えてみていただければと思います。

※原文より筆者自身が加筆修正しています。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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