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「今あったらなぁ」のバイク達(9)【ホンダ・X4】アメリカンの伝統に直4で挑んだ改革者

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
HONDA X4 画像出典:Webikeニュース

今のバイクは素晴らしいけれど、昔にも優れた楽しいバイクがいろいろあった。自分の経験も踏まえて「今あったらいいのになぁ」と思うバイクを振り返ってみたい。第9回は「ホンダ・X4」について。

免許制度が変わった90年代の申し子

レブルシリーズの世界的ヒットを背景に最近にわかに注目を集めるクルーザーセグメント。巨大Vツインに豪華装備のフルドレスを纏った伝統的な“アメリカン”(米国製クルーザーを総称した和製英語)の模倣から始まった国産クルーザーは、時代によって試行錯誤を繰り返しながらバラエティ豊かなモデルを世に送り出してきた。

それが頂点に達したのは90年代、日本のバイク業界に大きな嵐が吹き荒れた時代でもあった。まずは90年に排気量750ccリミットの国内自主規制が撤廃され、GPZ900RやV-MAXなどそれまでは逆輸入車でしか買えなかった憧れの名車が国内正規ルートで手に入るようになった。

国内仕様は価格も安い代わりに大幅にパワーダウンを余儀なくされるなど不満もくすぶったが、多くは「フルパワー化」で解決。今となってはグレーなカスタム手法ではあるが当時はそれが一般的だった。

X4
X4

そして96年、輸入車の外圧などによって大型二輪教習が解禁となり、誰もが普通に教習所で大型二輪免許を取れるようになると、これを契機に爆発的に大型二輪ユーザーが増え始め、長らく低迷していた二輪市場も賑わいを取り戻していく。そんな時流の真っ只中に登場したのが「ホンダ・X4」だった。

CB1300SF譲りの極太な乗り味

Xとは未知数、4とは4気筒エンジンを意味する。そのネーミングに託された狙いどおり、革新的なチャレンジャーとして97年春にX4は登場した。「パワードカスタム」をキーワードに新開発されたカスタムスポーツと定義され、ロー&ロングな大柄な車体とドラッグマシンを思わせる迫力あるフォルムが与えられた。

X4
X4

ホンダにおけるカスタムとは、いわゆる“アメリカンタイプのクルーザー”を意味するもので、今流に言えばX4はパフォーマンスクルーザーに分類されるはずだ。と、ここまではよくある話だろう。驚くべきは、そのパワーソースに直4エンジンを持ってきたことだろう。

エンジンは新開発の水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ排気量1284ccでホンダ史上最大となる直4エンジンを搭載。スペックに詳しい人ならピンとくると思うがCB1300SFと共通のユニットで、CBデビューの2年前にX4に先行して搭載されたものだ。

自分も真っ先に試乗したが、存在感を主張する剥き出しの巨大な直4ユニットに圧倒され、迫力満点の2本出しアップメガホンが発する荒ぶる重低音の咆哮に酔いしれた記憶がある。

2速発進も余裕でこなす異様とも言える超極太の低速トルク(現行CB1300SFを上回る!)と、回転上昇とともにレーシングサウンドにも似た高周波音が突き抜ける快感は直4ならでは。最高出力100psは当時の馬力自主規制に乗っ取ったもので、その余力は推して知るべし。

過酷なチューニングにもよく耐えて国内外のドラッグレースでも活躍した。ホンダのお家芸である直4ユニットの素性の良さは、デビューから20年以上を経過した現行CB1300SFにいまだに引き継がれていることがそれを証明している。

ホンダらしいスポーティな走りも楽しめる

足まわりも前後トリプルディスクブレーキ(しかも前後とも対向ピストンの4P/2P)に大径φ43mm正立フォークとSHOWA製サブタンク付きツインショックに高剛性アルミスイングアームを奢り、当時としては極太サイズの190ワイドのリヤタイヤを標準装備するなどオーバークオリティとも言える充実ぶりだった。

X4
X4

走りもそれに見合った剛性感たっぷりのハンドリングで、箱根のワインディングでも極太タイヤがゴロっと転がる重厚感を味わいつつも、CB1300SFにも通じるホンダらしいスポーティで安定したコーナリングが楽しめた。

また、直4の低重心と湧き出る極低速トルク、730mmの低いシートが奏功してか270kg(実はCB1300SFと同等レベル)の堂々たる車格でも取り回しやすく、街乗りもそつなくこなせた印象が残る。排ガス規制に対応した後期型の「X4 Type LD」ではさらにシート高が720mmに下がり、ライポジも快適化されて乗りやすくなっている。

X4 Type LD
X4 Type LD

「直4クルーザー」は日本のアイデンティティ

X4は大型初心者にも扱いやすく「気は優しいが力持ち」的キャラが広く支持されて多くのユーザーを獲得。一時は街中どこを見てもX4だらけだった時期もあるが、新免許制度によって生まれた新たなユーザー層は飽きるのも早かった(かも)。

翌年98年に満を持して登場した兄弟車のCB1300SFはおりからのネイキッドブームの勢いを受け、同年のオーバー750ccクラストップとなる累計登録台数を記録するなど大ヒット。その陰で兄貴分のX4はCBに道を譲るかたちで2003年をもって生産終了に。

X4 Type LD
X4 Type LD

初代CB750FOUR以来、ホンダを筆頭とする国産メーカーは直4エンジンで大きく育ち、その後の世界を制覇してきた。その意味でも大排気量直4エンジンを搭載し、エキサイティングな走りの魅力を備えたパフォーマンスクルーザーを日本のアイデンティティとして今後も作り続けてほしい。また現代版のX4を見てみたいと思うのだ。

※原文より筆者自身が加筆修正しています。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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