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国産電動3輪バイク「AAカーゴ」をマックが本格導入 EVリア2輪だからできるメリットとは!?

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
画像出典:Webikeニュース

年内に120店舗、320台体制へ拡大

aidea(アイディア)の電動3輪バイク「AAカーゴ」がマクドナルドの宅配サービス用として採用されることになった。同社の「AAカーゴ」は今年5月より神奈川県、7月より東京都の一部店舗にて「マックデリバリーサービス」の電動3輪バイクとしてテスト導入されていたが、走行性能や安全性の検証を経て本格的に導入されることに。

まずは今年10月中に44店舗で約100台導入され、年内には約120店舗約320台へと拡大される予定だ。

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デリバリー需要の高まりに対応した「AAカーゴ」の導入は、マクドナルドとしての持続可能な社会の実現に向けた活動の一環と考えられ、環境への配慮と社会にやさしいモビリティとしての役割を担っていくということだ。

ビモータ版H2をデザインしたあの人を起用

aideaは2019年東京モーターショーで誕生した日本発の新たなモビリティブランドとして、次世代のZEV(ゼロエミッションビークル)によって、環境問題の解決や社会貢献を目指すことをミッションとしている。

その前身は1996年に創設されたイタリアのバイクメーカー「ADIVA」と聞けば納得する人も多いだろう。ワイパー付きの開閉式ルーフやリアボックス、3輪システムなど、ADIVAで実績のあるユニークなスタイルを継承していることは一目瞭然だ。

加えてaideaではフル電動化を進めるとともに日本の厳しい品質管理の基に生産されているのが特徴。

そして、プロダクトデザイナーには昨年のEICMA2019で衝撃デビューを飾った「bimota TESI H2」を手掛けたクラウディオ・ザンキーニを起用するなど、店頭とモダンが融合した本格的なイタリアンデザインが注入されていることも見逃せない。

3時間フル充電で約100km走行可能

aidea「AAカーゴ」にはα4(原付一種50ccクラス)とβ4(原付二種125ccクラス)の設定があり、今回「マックデリバリーサービス」仕様として導入されたのはα4のほう。

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安定性の高い3輪構造で全天候型の大型スクリーンとルーフ、さまざまなボックスに対応可能なフルフラットな荷台、左右独立懸架リアサスペンション、13インチ大径ホイールという独自の車体構成により、従来のビジネスバイクが持つさまざまな課題を解決するという。

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約4kWhの大容量リチウムイオンバッテリーを搭載し、一般的な200V電源から3時間でフル充電して98km(α4)/90km(β4)の走行が可能だ。

排ガスゼロでコストもガソリン車の半分以下

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EVである「AAカーゴ」の一番のメリットはCO2を排出せず環境に優しいということだろう。エンジン車のような排気ガスを出さず音も静かということで、食品を扱う企業としては最適であり、ブランドイメージの向上にも貢献するはずだ。

また、電気代やメンテ代も含めたランニングコストもガソリン車の半分以下ということで、ロングスパンでの大規模な運用を考えれば相当なコストダウン効果も期待できそうだ。

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さらに独自の機構として、駐車時や狭い路地での取り回しに便利なリバース機能を搭載。車両左右の傾きを固定する「ロールロック」と車両前後の動きを固定する「パーキングブレーキ」を装備するなど、3輪ならではのメリットを生かせる便利な仕組みを搭載している点にも注目したい。

なお、「AAカーゴ」は一般向けにも販売していて、α4が877,800円、β4が900,900円(ともに消費税込)となっている。

開発中のフロント2輪との棲み分けは?

さて、aideaのオフィシャルサイトをのぞいてみると、フロント2輪のモデルも開発中とある。実は自分も数年前にそのベースとなったADIVAのフロント2輪EVに試乗したことがあるのだが、「AAカーゴ」のようなリア2輪とでは、どう棲み分けているのか素朴な疑問が湧いてきたので聞いてみた。

開発中のAA-1/AA-2 画像出典:aidea公式サイトより
開発中のAA-1/AA-2 画像出典:aidea公式サイトより

aideaでマーケティングディレクターを務める成田氏によると、現状ではフロント2輪はレジャー用中型車、リア2輪はビジネス用小型車という棲み分けだとか。理由としては、レジャー用はフロントタイヤがグリップを失ったり段差でハンドルを取られたりして転倒することを避けることが優先であるのに対し、ビジネス用は荷台に積んだ物をできるだけ揺らさないことが優先されるとのこと。

またaideaでは動力にインホイールモーターを採用しているため、「AAカーゴ」などのリア2輪の場合、「左右の駆動輪を異なる回転数で回したり、異なる方向に回したり」もできるらしい。

「これにより何ができるようになるかは、ご想像にお任せします(笑)」との回答だったが、ということは今までの常識では考えられなかったような極小旋回や超クイックターンも可能になるのでは……。そうなれば、クリーンで静かな上に、住宅地の狭い路地などでも抜群の機動力を見せるはずだ。

いずれにしても、コミューターとしての2輪(3輪を含む)EVにも衆目を集める活躍の場が与えられたことになり、ようやく本格的な普及への兆しが見えてきたと言えるかも。まずは「AAカーゴ」ご指名で「マックデリバリーサービス」を頼んでみるとしようか。

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※原文より筆者自身が加筆修正しています。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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