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2020年バイク業界を大胆予測!【200馬力クラブに新ニーゴー時代、身近な冒険マシンにEVも来る!】

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
写真出典:Webikeバイクニュース

明けましておめでとうございます!今年は半世紀ぶりの東京オリンピックが開催されるなど世界の注目が日本に集まる年になりそうです。海外からも多くの観光客が訪れるでしょう。我々バイク乗りとしてもスマートな立ち居振る舞いを心掛け、「オー、ニホンノライダー、チョウクールネ~!」と言われたいものですよね。さておき、本年もWebikeバイクニュースをよろしくお願いいたします。

さて、年初めのコラムでは、希望的観測も含めつつ2020年のバイク業界を大胆に予想してみたいと思います。

「日独伊」オーバー200馬力クラブの誕生

2020年は新世代スーパーバイク対決が楽しみだ。2018年にドゥカティがそれまでのLツインに見切りをつけてMotoGPテクノロジーを注入した「パニガーレV4」(最高出力214ps)を投入すると、続く2019年にはBMWが可変バルブ機構とフレックスフレームという新領域にトライした新型「S1000RR」(同207ps)をリリース。そして、2020年にはホンダが直4版のRC213Vにも例えられる「CBR1000RR-R」(同218ps)をデビューさせる。

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▲パニガーレV4

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▲S1000RR

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▲CBR1000RR-R

かつての三国同盟ではないが、RR-Rの投入によって奇しくも日・独・伊が揃い踏みでオーバー200馬力を達成。それぞれの国を代表する二輪ブランドの最強マシンによる頂上決戦が勃発することになる。そして、今後は200psという数字がこのクラスの基準になるはずだ。本当の意味でのロード・ゴーイング・レーサー(公道を走るレーシングマシン)を作れるメーカーは世界でも数えるほどしか存在せず、ときに採算を度外視して持てる技術力と人材と資金を総動員して開発される究極のマシンは、いわばメーカーの“プライド”そのものだ。そしてホンダが動けば、他の国産メーカーも追従せざるを得ない。スーパーバイク開発とは終わりなき戦いのリングでもある。だからこそライダーを魅了し続ける。その意味でも楽しみで仕方ないのだ。

単発から4発まで広がる250スポーツ

昨秋の東京モーターショー2019でも話題になった2台の250ccスポーツモデル、カワサキ「ZX-25R」とスズキ「ジクサー250」。今年の秋にも発売が予定されている「ZX-25R」はニーゴーでは30年ぶりの新型4気筒スーパースポーツで、クラス最強性能で出てくることは確実と言っていい。ちなみに、かつてのZXR250はラムエアシステムを装備し当時のメーカー自主規制上限の45psを軽々と叩き出した。それを現代の技術で作ったとしたら、どれだけ凄いものができるのか興味は尽きない。80年代後半に一世を風靡したスーパーマルチクォーターの再来に世のオジサンたちは感涙もの。となると、他メーカーも黙ってはいないはず。今後の出方が気になるところだ。

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▲ZX-25R

もう一台の「ジクサー250/ジクサーSF 250」はこれとは対照的に空冷単気筒とシンプルな構造だが、実はMotoGPマシンの技術も投入された最新のエンジンだ。スズキ伝統の油冷システムが採用され、燃焼室の周囲にオイルジャケットを設けて水冷エンジンのように効率的に冷やすなど最新テクノロジーが詰め込まれている。実際、スペック的にも現行の2気筒モデルGSX250Rをパワーで2.5ps上回る26.5psを発揮、車重も18kgも軽い156kgを実現するなど期待せずにはいられない。2020年は現在主流の2気筒スポーツモデルの枠組みを飛び越えた、新たなニーゴーワールドが広がりそうだ。

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▲ジクサー SF 250

冒険を身近にする中量級アドベンチャーの台頭

今年はミドルクラスのアドベンチャーモデルが来そうだ。その代表格が昨年の東京モーターショーで国内正式発表された「テネレ700」だ。MT-07由来のコンパクトな水冷並列2気筒エンジンを車重200kg強と軽量スリムなボディに収めたガチオフ仕様で、アドベンチャーツアラーでありながらもエンデューロマシン並みの運動性能と走破性を目指したモデル。きっと巨大アドベンチャー勢にはできない走りの地平を見せてくれるに違いない。

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▲テネレ700

さらに小排気量のKTM「390アドベンチャー」も今年の注目株。圧倒的なオフ性能でこのカテゴリーの常識を覆した790アドベンチャーよりさらに40kg近く軽い車体に、元気な走りで定評のある390デューク系の水冷単気筒エンジンの組み合わせとくれば、いやが上にも期待は高まる。

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▲390アドベンチャー

そして、昨年末にトライアンフから電撃発表された完全新設計の新型「タイガー900」シリーズも。「ラリー・プロ」仕様を設定するなど意気込みも十分だ。2019年は冒険ツーリングの夢を一般ライダーにもぐっと引き寄せたミドルクラスが飛躍する年になるだろう。

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▲タイガー900 ラリー・プロ

2020年はスポーツEV元年となるか!?

4輪に続きいよいよ2輪にも電動化の波が押し寄せてきている。昨年のEICMA2019でも大手メーカーから名もないスタートアップまでが競ってEVを発表していた。4輪ですでに実績のあるBMWが伝統の水平対向エンジンをモチーフにした「Vision DC Roadster」を展示すれば、カワサキもミッション付きの電動スポーツモデルを公開。一方、EVにおける世界最先端ブランドを目指すKYMCOはロードスタータイプの「RevoNEX」を市販予定として発表。MotoE世界選手権の独占的サプライヤーであるイタリアのENERGICAも公道モデルを公開するなど、走りを楽しむためのスポーツEVが一斉に名乗りを上げていた。

その中でも一歩リードしているのがハーレー初の電動バイクとして昨年デビューした「LiveWire」。すでにストリート用の量産市販モデルとして欧米で発売されているが、日本への導入がいつになるか注目したいところだ。

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▲LiveWire

今まで来そうでなかなか来なかったスポーツEVの世界が目前に迫っている。2020年が始まりの年になるか見守りたい!

※原文より筆者自身が加筆修正しています。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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